第23話 鉱山に登る

 

 木々の間を抜け、開けた場所に出れば予想通り山道の入り口があった。


 森の中の道がほとんど獣道状態だったからどこかで間違えているかも、なんて途中不安に思ったけど間違っていなくてよかった。さすがに森の中で迷ったら面倒なことになるところだ。まあ、最悪死に戻りすればイスタットの噴水広場には戻れるのだけど、それはそれでまたここまで来るのが面倒だから嫌なのだよね。


 坑道の入り口とは異なり、特に誰が見張っているでもない山道の入り口を通り抜ける。一応先に続いている山道は見える限り荒れている様子はなさそうなので、少ないながらもここへ訪れている住民はいるのだろう。


 しかし、山道の入り口の状態の割に、私が通ってきた森の中の道はほとんど人が通っている形跡がなかった。おそらくここへ来るための道は他にも存在していそうだ。というかそちらが本来ここへ来るための道で、私が通ってきた道は近道とかそんな感じの物なのかもしれない。


 うーん。ファンタジーの世界観にある抜け道なり近道って、大半は荒れた道だったりするよね。移動時間を短縮できるから整備されていてもおかしくないと思うのだけど、リアルとは違って危険が多いから安全なルートを使う人が多いってことなのかな。

 まあ、同じ道を使う人が少ないのは私的には有り難いのだけどね。



 さて今回の採掘にあたり、ちょっとした装備品を作って来たのだ。本音を言えばもっと前から作るなり買うなりして装備していた方が良かったのかもしれないけど、残念ながらレシピはなかったし委託にも流れていなかったので、この前レシピを手に入れてようやく手に入れることが出来たのだ。

 それがこれ。



[(防具)初級採掘師のツナギ Ra:C Qu:B Du:100/100 SAS:5250]

 採掘師のために作られた服。戦闘用ではないが、採掘中に飛び交う礫から体を守るために通常の服に使う皮よりも硬めの皮を使用し作られている。また採掘時に負担なく体を動かせるようなデザインになっている。

 装備部位:胴・腰

 追加能力:STR+5・AGI+20

 装備効果:採掘量増加(小) VIT+15 AGI-10



 他のゲームでも良くある採取系装備。これ以外にも採取系スキル【採取】【伐採】【釣り】【栽培】に合わせた専用の防具が存在している。

 どれも【裁縫】の基本レシピに載っている物なので割と低い熟練度でも最低限作ることが出来る物だ。十全に作ろうとすれば熟練度は50%以上必要だけど、それだってそこまで高いハードルでもない。

 当然1次スキルで作れる物だから性能が低い。そのため私が製作した物は簡易エンチャントで少し性能を上げている。


 意外と需要がありそうな物だけど委託に流れていなかった理由はSASと素材にある。

 採掘師のツナギの場合、最低でも必要な素材はベアの毛皮。この素材、初期にはあまり手に入る事が無かったため、委託に流れるほどの数が作られなかった。それにこれらはツナギや上下1組であるために素材を多く使うのだが、その割にSASが低い。要するに作ってもあまりASが稼げない。そんな物を嬉々として作るプレイヤーは限られるだろう。精々自分の物と知り合いが欲していればその分を作るだけで、それ以上は作らない。その結果委託に殆ど流れて来ることはなかった。


 ただ、私の場合は自力で素材は集められるし、Quを上げたり簡易エンチャントを使ったりすればさらにSASは上がるのだ。それと製作した時に得られる熟練度が高そうなのでどうしようか迷っている。


 まあ、その辺は追々決めるとして、さっそく装備を変更して鉱山の山道を登っていくことにしよう。



 

 装備を変更してから緩いわけではないがキツイわけでもない山道を登っていく。

 いや、山道は上り始めてから10分もしない内に無くなった、というよりも見えなくなったので今は山を登っているというのが正しい……のかな?


 住民があまり来ないというのもあって元々あった山道は上るにつれて雨風に晒されたからなのかほぼ確認できなくなっていた。辛うじてそれらしき形跡は見られるものの、それも途切れ途切れだ。そのため下手に動き回ると足場の悪い場所を踏みかねず、走って登るようなことは出来ない。現状、周囲を確認しながらやや早足で進むのが限界だ。


 ただ足場が悪い反面、周囲を確認しながら移動していたため、いくつか採掘ポイントや採取出来る植物を見つけることが出来た。

 もし山道があってそれに沿って上っていたら見つからなかったと思う所も見つけることが出来たので、ちょっと得した気分だ。当然、山道の入り口からそれほど距離が離れていないから、獲得できるアイテムは微妙なものが多いけどね。


 採掘だとよくて鉄鉱石、大半が銅鉱石で残りは普通の石ころだ。他に採取できるのは小薬草や小魔力草。草原に比べて小薬草よりも小魔力草が多い傾向。

 草はどちらも取れる量は少ないけれどね。あくまでも取れる比率が違うだけ。


 それとこの鉱山、標高がそれほど高くないところでもあまり植物が無い。ちょくちょく採取出来ている2種類以外はあまり見かけず、他の植物が生えていたとしても【鑑定】で見た限りなんの効果もない雑草(正確に言えばミリ草やカラ草など、ちゃんとアイテム名はある)があるだけで、樹木などは一切生えていない。

 山肌がほぼそのまま見えているから、採取できる場所が見つけ易くて悪くはないのだけど、何か理由があるのかちょっと気になるね。



―――――

イスタットの鉱山は休火山 今後噴火することはない


※いろいろな意見をありがとうございます。とりあえず今後は休火山と記載します。今後使うかどうかはわからないけど。


土壌の栄養素が偏っている上に多くの金属が含まれているためあまり植物が生えない、という設定。これについて今後掘り下げる予定はないです

鉱山特有の植物はあるもののもっと標高が高い位置に生えるためまだアユは見つけていないし、別に重要な物でもない。※観賞用植物

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