第22話 坑道がだめなら鉱山で採掘すればいいじゃない

 

 ホーンラビットを倒した後ギルドに着くと、受付の人にホーンラビットの角の納品依頼があることを聞かされた。それを手に入れたことは口に出していなかったのにいきなりその依頼を出されて驚いたけれど、それは条件を満たすと出される依頼なのだろう。さすがに常に監視されている訳はないだろうから、そうに違いない。というかそうであって欲しい。


 依頼についてはホーンラビットの角を1本納品するというもの。それさえ持っていれば簡単に依頼が完了できる物にも拘わらず、依頼のRankがDと今まで見たことがある中で最高Rankの依頼だ。まあ依頼のRankについては、2陣プレイヤーが参入して来たと同時に同じRankの依頼もちらほら出てきているから、Rank:Dの依頼がこれしかないという訳ではないけど。


 ただ、この依頼の達成報酬がASのみでそれも100000AS~とQuによって変動するものだった。納品するホーンラビットの角はQu:F~なのでこのQuの物を納品すれば100000ASの報酬となるのだろう。ホーンラビットの角のSASからすれば、はっきり言って微妙な金額だ。

 まあ、多少高いASだったとしても納品するつもりはないのだけどね。さすがに蘇生薬の材料、しかも1つしか持っていないたぶん貴重な物を納品するのは生産者としてあり得ないと思うし。


 で、その後生産施設に行くと偶然レミレンが居たので蘇生薬について聞いてみた。残念ながら私が持っているレシピの中には蘇生薬のその字もないし、何処でそのレシピが手に入るかわからなかったのでちょうど良かった。


 結論だけ言えば、今の私には蘇生薬を作ることは出来ない。

 何故かというと単純にスキルの熟練度、というか3次スキルの【錬金術】か【調薬】まで行かないと駄目らしい。


 変に製作難度が低いゲームもあるけど、人一人復活させる薬なのだから難しいのは理解できる。

 ただ、気になるのが金額。ホーンラビットの角1つで100000AS以上かかるという事は、他の素材も使うだろうし少なく見積もっても蘇生薬1つで120000AS位になりそうだ。さすがに高すぎるから何かあるだろうけど。これ1つで複数個出来るとかそんな感じのやつ。

 それに、レミレンが説明してくれた時にホーンラビットの角は蘇生薬の素材の代用品と言っていたから、本来よりも高くつく代用素材という事なのかもしれない。

 まあ、現状レシピもないしスキルも足りていないので作ることは出来ないから当分は放置かな。


 それで色々あってから現在、私はまたイスタットの鉱山へと向かっている。


 鉱山へ向かっている理由なのだけど、街に戻った後、コットンラットとの戦いで減った装備の耐久値を回復させるためかつ、その際に必要な素材をケチ節約するために、ガルスのお店で装備を修復してもらった時に聞いた話による。


 修理を依頼する際に手持ちの鉱石が少ないから自力で修復するのが難しいと言ったところ、現在プレイヤーたちが鉱山に入れなくなっていることをガルスも知っていたようで、鉱山であれば坑道以外でもある程度、鉱石を取れるという話をしてくれた。

 たしかに坑道へ入る事は禁止されているけど、鉱山そのものへ行く事は禁止されていない。鉱山で坑道以外から鉱石が取れるという話は聞いたことが無かったのと、坑道で十分な鉱石が採掘出来ていたので、完全にそのことについて失念していた。


 ガルス曰く、坑道に比べてエネミーが多く出て危険なうえ、採掘できる鉱石の量もそれほど多くないからNPC住民が採掘に行くことはほぼ無いらしいけど、死んでもデスペナルティを受けるだけの異邦人プレイヤーなら問題ないだろうとのこと。


 たしかにそうだけど、ガルスがプレイヤーは死んでも復活するって知識を持っていたことにちょっと驚いた。装備の変更の事もよく知らなかったというのに他のプレイヤーが多く来たことでそういった知識を得たという事なのかな。

 それに最初に会った時はもうちょっと死なない様に準備しておけ、とかそんな感じの対応だったのになんか若干雑な対応になっているような。


 もしかしたら、態度の悪いプレイヤーでも来たのかもしれない。未だに住民の事をNPCって言ったり見下したりしているプレイヤーもそれなりに居るから、そういった人たちがこの店に来て嫌な思いでもしたのかもしれない。


 まあ、ガルスのとこはさておき、要はフィールド上に点々と存在している小さな採掘スポットを回って鉱石を手に入れるなら、鉱山を登って採掘した方が良いと聞いたから今鉱山へ向かっているわけだ。


 ガルスの店からイスタットへ移動する前、軽くWikiに鉱山について調べてみたのだけど、鉱山についての情報は坑道についてしかなかった。多くのプレイヤーが居るのだから情報が無くても誰かしら登ってそうだから、誰も知らないというのはさすがにおかしいので、知っているプレイヤーが秘匿しているのか、もしくは最近サイレント実装されたのだろう。



 未だにプレイヤーが入れない様に見張りの兵士がいる坑道の入り口の前を通り過ぎる。ガルスが教えてくれた鉱山の山道の入り口は坑道の入り口から北へ1キロ以上離れた場所だ。


 坑道の入り口から離れるにつれ建物が減っていく。坑道の入り口には住民やプレイヤーの鉱夫向けの宿屋や料理屋があるけれど、さすがに100メートルも離れればそのようなものは無くなる。それから数少ない住宅も見えなくなると森が見えて来た。


 森と坑道のために切り開いた土地の境界線には柵が設けられているが、魔物除けというよりは獣避けなのかそれほど強度がありそうなものではない。まあ、プレイヤーが殴っても簡単に壊れるような感じではないから、魔物がほとんど居ないこの辺りならこれで十分なのかもしれない。


 その柵には見える範囲で一箇所だけ人が通り抜けられるようになのかギリギリ通れる程度の間が空いている場所があった。その向こうには辛うじて道だとわかる程度の跡があった。たぶんこの先へ進めば鉱山の山道入口に着くのだろう。


 ガルスから森の前に柵があるとは聞いていないけど、最後に行ったのは大分昔と言っていたから何かがあって柵が設けられたのかな? さすがに説明された通りに来ているから場所違いではないと思うけど、この先に進んでも大丈夫なのだろうか。


 少々話と違う所に不安に思いながらも柵の向こう側へ出て、それから獣道のような道を進んで行く。途中、道の跡が無くなって迷いかけながらも、森の中の道を走って進むこと15分。ようやく目の前に開けた場所が見えて来た。


 おそらくあそこが山道の入り口なのだろう。





―――――

装備の修復には基本的にその装備を作った際の素材が必要になる。アユも小物は自力で修復していた。その内、素材が無くても修復が出来るようになるスキルを覚えられる。※生産系3次スキルにて

修復のスキル名は[リペア] 生産系スキルで最初から覚えている。耐久値の回復率は熟練度に依る。


ガルスの態度はアユの予想通り、態度の悪いプレイヤーにあったための変化。

ただ、アユに対する評価や友好度が変化した訳ではなく、ちょっとフランク?になっただけ。それと友好度の低いプレイヤーには鉱山の情報を教えることはないです


鉱山の山道について知っているプレイヤーは少ないですが居ます。住民から聞いて知ったプレイヤーも居れば自力で辿り着いたプレイヤーも居ます。

ただ、狩場としては強いエネミーが出るものの数が少ないためレベリングには向かず、採掘場所としてもガルスの説明通り、坑道よりも鉱石が取れない上、採掘中エネミーに襲われる可能性があるため殆ど生産メインや採取メインのプレイヤーは来ません。(※坑道に入れなくなってからはちらほらプレイヤーが来るようになった)

ついでに山道の一番上には……

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