第15話 短剣の販売と相談
セントリウスの街に着き少し経過したところで視界の端にフレチャの着信があることに気付いた。
サウリスタで連絡を入れているので、おそらく兄だろうと着信メッセージを開くと、案の定兄からの物だった。
ファルキン:高い! けど性能良いな
ファルキン:ちょう性能良くて欲しいところだけど俺は使わないやつ…なにこのもやもや
ファルキン:他の奴らに聞いてみる
ファルキン:ぎーんが欲しいって言っているけど買うのそっちでも大丈夫?
ああ、やっぱり兄は買わないか。でも、欲しい人は居るのか。まあ値段はともかく、性能を見れば普段短剣を使っているプレイヤーは買いたいと思うか。
あの人たちなら問題ないかな。ただ、UWWOでのぎーんさんの印象がいまいち薄い。前に会ったのは覚えているけど、アバターの容姿が思い出せない。たしか前のゲームでジュラルミーんの父親で父さんたちと同世代だとは聞いたことがあるけど、それ以上は知らない。
うん? あれ、これは印象とは違うな。
……まあ、その辺はいいか。
ファルキン:うーん反応が無い。作業中か?
ファルキン:反応できるようになったら連絡ヨロ。しばらくは待機してるから
ア ユ:居る。あと売るのは問題ない
ファルキン:キェェェェェアァァァァァシャベッタァァァァァァ!!!
ア ユ:は?
ファルキン:あ、ごめんなさい。黙ります。じゃなかった、あの短剣は売ってくれるってことで問題ないのか?
ア ユ:うん
ファルキン:よかった。じゃあ今からトレード申請するから確認してくれ
『フレンド:ファルキンからトレード申請が届いています。トレード内容:120000AS』
……120000AS? その兄から提示されたASを見て私は首を傾げる。
ア ユ:AS多いけど?
ファルキン:基本ASよりも少し多めに出すってぎーんが。それに委託に流す時は最大ASで流しているんだろ?
ア ユ:そうだけど
たしかに委託に流した奴はすべて最大ASで流している。でも売れなかったら徐々に安くしていく予定だったし、今までもそうやって来た。
ただ、これは基本価格で譲るつもりだった。だからなのか、予定を狂わされたというか、想定とは違う結果になったことに少しもやっとする。
ファルキン:ぎーんがそうしたいって言っているんだから別に問題ないでしょ。むしろ最高額に出来ないのが申し訳ないって言っているくらいだから受け入れてくれるとありがたい
ア ユ:……わかった
まあ、ASは多いに越したことはないし、相手が納得しているならいいか。あまり直接取引で基本価格以上のやり取りはしたくないけど。
そう思いながら、トレードアイテムに[(武器)毒の短剣+ Ra:C Qu:C Du:105/105 SAS:106700]を選択する。
『トレードアイテムが選択されました。トレードを開始しますがよろしいですか?』
そうアナウンスが出たのでYESを押してトレードを完了させた。
ファルキン:うむ。ちゃんと届いた。今近くに居るからすぐぎーんに渡しておくな
ア ユ:よろしく。あ、お買い上げありがとうございます、って言っておいて
ファルキン:了解
よし、これで終わりかな。
もう[真祖覚醒]の効果も切れているし、ちょっとだるい感じに影響出ているからさっさとギルド行こう。
ファルキン:渡してきた。売ってくれてありがとうだって
ア ユ:そう
ギルドに向けて歩き出したところで兄からフレチャが届き私はそう返す。そしてこれからギルドに向かうからフレチャを切ろうとしたところでまた兄からフレチャが届いた。
ファルキン:あの
ア ユ:なに
ファルキン:私の物も作って頂きたいなぁと
ア ユ:……で?
ファルキン:で!?
移動しながら一々フレチャの返事をするのが面倒で短く返し過ぎた。さすがに『で?』だけでは伝わらないよね。
ファルキン:ダメってことですか!?
ア ユ:短く返し過ぎた。今移動中だからちょっと待って
ファルキン:あ、はい
相手が兄なので多少待たせても問題は無いと思うけれど、近くにパーティーメンバーが居るようなのでなるべく待たせない様に足早にギルドへ向かう。
ア ユ:移動終わった。それでナイフを作ればいいの?
ファルキン:YES! 出来たら出良いんだがお願いしてもいいか? 前に売ってもらった奴だとさすがに攻撃力が…
ア ユ:まあ、いいけど。さっきの短剣と同じ感じ? それとも少し安い方が良い?
ファルキン:同じ感じで、出来る限り強い奴が望ましい
ア ユ:短剣と同じく割に合わないASになると思うけど
ファルキン:構わない。出来る限り最大額で買うから
ア ユ:そういうのはいらない
ファルキン:(´・ω・) えぇ……
ア ユ:どうなるかわからないけど、追加能力はどうするの?
ファルキン:今トレードした短剣と同じがいいかなぁ
ア ユ:了解
同じとなればオルグリッチの鉤爪を使えばいいかな。あーでも、別のやつでも試してみたい。いっそワイバーンの素材でも使ってみるのもありかもしれない。ワイバーンの素材ちょこちょこ委託に流れて来るようになったし、元から持っている数もそこそこあるし数はどうにかなると思う。その分AS上がりそうだけどいくらでも良いらしいし。……果たして兄が買える額になるだろうか?
ファルキン:あと、図々しいけど他の武器カテゴリとかは……
ア ユ:ちょっと難しい。基本的に委託に流れている武器を強化しているだけだから。それに短剣とナイフ以外はそんなに流れていないし、あってもQuがいまいちのやつが多い
ファルキン:あぁ【鍛冶】の熟練度上げで作ったやつが委託に流れているのか。他のだと素材が多く必要だったりするからあまり流れないと
ア ユ:たぶんそう
単に需要の関係でQuの高い物は委託に流れてもすぐに売れている可能性もあるけど。
あと長剣も鉄クラスまでなら私でも何とか作ることは出来る。当然熟練度が低いからQuはDが限界だ。鉄の長剣のQu:Dなんてトップ層のプレイヤーからすればゴミみたいな物でしかない。他の武器についても対応する生産スキルの熟練度が低いから同じように駄目。
それからいくつか武器製作について話し合った。
途中、今使っている武器を一時的にトレードしてエンチャントしてもらうのはどうか、と提案されたけど、失敗した場合どうなるのかまだわかっていないので却下した。さすがに他プレイヤーの武器は預かれないし、責任も持てない。
そういう訳で結局、兄以外の武器を作る話は無しになった。
ファルキン:あとこれも出来たらでいいんだけど、定期的に料理とかポーションを直接売ってもらう事って出来るか? 第3エリアの村の復興を早めに終わらせたいから、なるべくセントリウスまで戻る回数を減らしたいんだよ
熟練度の足しにはなるから問題はないけど、復興を進める理由はあのフィールドBOSSかな。掲示板情報だけど結構死に戻りしたらしいし、攻略目的のプレイヤーから急かされているのかもしれない。
急かすくらいなら自分たちも手伝えばいいと思うけど、攻略勢が生産系のスキルを持っていることは少ないし、居たら居たでかえって邪魔になりそうな気がする。
ア ユ:バフなし料理なら出来るけど、下級ポーションになると素材が少ないからそんなに売れない
ファルキン:料理は満腹度用だから問題ない。むしろバフ付きはASが跳ね上がるからちょっと困る。ポーションの素材はこっちで用意するから、それを使って生産してもらえれば。差額分のASは払うし、どう?
ア ユ:計算するのが面倒そうだから素材は買取りで。でも、それでもそんなに数は出来ないと思うし、Quも安定しないと思う
ファルキン:確かにASの計算面倒だな。数は別に問題ない。多いに越したことはないけど、沢山必要って訳でもないから
あれ? そう言えば兄って【調合】スキル持っていなかったっけ? それを使えば下級ポーションくらい作れると思うのだけど。……時短目的?
ア ユ:下級ポーションってそっちで作れないの?
ファルキン:まあ、作れるけど熟練度が低いからQuがねぇ。下手すると失敗するし
ア ユ:なるほど
まあ、兄は戦闘メインだから仕方ないのかな? 最初の頃、委託に初級ポーションが殆ど流れていなかったから仕方なく取得したとか言っていたし、そんな頻繁に作っている感じでもない以上、戦闘メインのプレイヤーは兄と似たような感じなのかもしれない。
ア ユ:なら問題ない
ファルキン:ありがとうございます!
そうしてこの後、どのような形でやり取りをするかを話し合い、フレチャを終了させた。
―――――
フレンドチャット内でのトレードはフレンドになってからUWWO内で5日経過する必要があります。
またASのみのトレードは不可。ただし素材を押し付ける行為は可能(過去にアユがやっている)
エンチャントが失敗した場合、素材は無くなることはない。しかし、エンチャントしようとした対象は若干劣化する(しない場合もある)。劣化度合いは失敗の程度による。大体は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます