第47話 反省と修復

 

 リスポーンしたことで事前に設定していたイスタットの噴水広場に転移した。


 最初に攻撃した以外殆ど何もできなかった。それに最初の特殊行動も確認出来なかったのは痛手だ。毎回、最初の攻略の時は少しでも次の攻略の足しに出来るようにしていたのに、今回はそれもない。


 情報が殆ど得られなかったから、次の攻略も初見と同じような感じで戦わなければならないのは面倒だ。

 あのゴーレムと戦ってわかったことと言えば、BOSS名とLV、魔法がおそらく効きやすいこと。それと最初の攻撃の後、すぐに攻撃に移らずに私が動き出してから攻撃に移っていたことくらい。


 私が攻撃してすぐに行動に移さなかったことから、あのゴーレムはもしかしたらヘイトだけで攻撃対象を選んでいないのかもしれない。そして私が動き始めてから一気に攻撃に移ったのは、音や地面から伝わる振動によって攻撃対象を補足している可能性が高い。

 となれば、最初から魔術系スキルを無詠唱で放って一気にHPを削るのが効果的……いや、そう簡単にいかないか。むしろそんな方法であっさり勝てるはずがない。絶対に何かあるはず。

 途中で攻撃対象を選ぶ方法が変わるとか、耐性が上がって魔法がほとんど効かなくなる、みたいな感じになる気がする。


 あとシャドウダイブ中に強制的に外に出されたのは初めてだったから対処が遅れた。いや、あの状況で対処できる訳でもないのだけどね。入った影がなくなったら強制的に外に排出されるのは知っていたけど、まさか地面を攻撃することで一瞬とはいえ影を無くしてくるとは思っていなかった。


 ん? あれ? という事は、ゴフテスのブレス擬きとかワイバーンのブレスって地面を抉っていたから、シャドウダイブによる緊急回避は出来ないのでは? ワイバーンのブレスは球体状の物だから強制排除だけだろうけど、ゴフテスのブレス擬きは数秒かけて放出される攻撃だったから、多少ダメージを減らせるだろうけど完全に回避できない?


 今後、あのゴーレムと同じようにして来るエネミーが居るかもしれないから、緊急時の回避行動がシャドウダイブ頼りにならないように気を付けないといけないな。


 うーん、再戦はどうしようかな。あのゴーレムに勝てたとしてあの先に出るエネミーに勝てるかどうかもわからない。ゴフテスとあの犬のLV差からして、あのゴーレムのLVが40だったのだから先にいるだろうエネミーのLVは最低30以上だと思う。そうだとすれば、無理やりゴーレムに勝ったとしてもまともに進めない気がする。


 あと何回か戦ってみるのはありかもしれないけど、無理にあのゴーレムを倒して先に進むよりも第3エリアの開拓と攻略を進めたり、私のLVやスキルの熟練度を上げたりするのを先にした方が良いだろうね。前のアプデから一切LV上がっていないし。


 まあ、あのゴーレムについて考えるのはこれまでにして、とりあえずは先に取って来た鉱石を加工していこう。


 と言っても、【鍛冶】スキルの熟練度を上げないと金鉱石を上手く精製出来ないようなので、先に熟練度が低くても精製できる銅鉱石や鉄鉱石を先に精製して熟練度を上げて行かないといけないのだけどね。


 さて、さっそくイスタットのギルドに移動して鉱石の精製と【鍛冶】スキルの熟練度を上げていこう。




 ログアウト時間まであと少しということろで、採掘で手に入れた手持ちの銅鉱石と鉄鉱石がようやく尽きた。


 鉱石3個で金属塊が1つ出来るので持っていた鉱石の3分の1が金属塊の数になる。さらにここからインゴットに加工するとこも出来るのだけど、インゴットにするには金属塊が5つ必要みたいなので、インゴットまで加工するとなると最終的に持っていた鉱石の15分の1にまで数は減る。


 とりあえず金属塊のまま使う予定は無いので、銅と鉄に関しては全てインゴットに加工する。

 金や銀は鉱石の数が少ないので鉱石から金属塊の状態に精製して、そのまま保管するつもりだ。まあ、インゴットにするほど数が無いから加工出来ないというのが本当のところなのだけどね。


 ただ、銅鉱石と鉄鉱石を精製している時に思い出したのだけど、ガルスは金鉱石が2つあれば指輪の修復に使えると言っていた。

 でも、鉱石2個だと金属塊に出来ないような気がするし、その話を聞いた時に私が【鍛冶】スキルを持っていないことを知っているはずなので、もしかしたら指輪の修復に関しては金鉱石と銀鉱石を精製する必要は無いのでは?


 うーん。とりあえずこれまでに精製した銅と鉄をインゴットに加工してから錬金で試してみよう。


 一旦ログアウトを挟んでから作業を再開し、銅と鉄をインゴットに加工していく。

 鉱石を精製するよりもインゴットに加工する方が少しだけ簡単だった。まあ、溶かしてインゴット用の型に流し込むだけだから、鉱石を精製するよりも簡単なのは当然だろうけど。


 2時間ほどかけて銅と鉄をすべてインゴットに加工し終えた。

 【鍛冶】スキルの熟練度はこれで28%。鉱石の中でも低ランクの銅と鉄を加工しただけなのでこれでも上がっている方だと思いたい。これ以上【鍛冶】熟練度を上げるには武器なり防具なりを作る必要があり、それには時間が掛かりそうなのでここで銅と鉄の加工は止めて、指輪の修復が出来るかを確認しよう。


 ギルドの生産施設にある鍛冶場から出る。

 生産施設の机が置いてある場所で作業を使用と思っていたのだけど、生産しているプレイヤーがそこそこ居たので生産設備の部屋を借り、部屋の中にある錬金台を使うことにした。

 そしてルビーとサファイアの指輪(劣)を装備から外して錬金台の上に置き、それから金鉱石を2つ、銀鉱石を1つ載せる。

 修復に必要な材料はこれだけのはずなので、このまま修復を進めて行く。


 指輪を修復する事を意識しながら錬金台を発動させる。

 錬金台が発動したことで徐々に錬金台に掛かれている魔法陣が光り出したが、数秒もしない内にその光は弱くなり完全に消えてしまった。


 ちょっと光ったのでもしかしたら成功しているかもと指輪を確認してみたものの、指輪の名称に付いている(劣)の部分が取れていなかった。Duの方も一切回復していなかったので失敗という事だろう。鉱石の方も確認したけれど特に変化はなかった。


 やっぱり【鍛冶】スキルの熟練度を上げて金属塊の状態にする必要がある……って、あれ?


 そう言えば、前に鞄を拡張しようと失敗した時、錬金板は一切光らなかった。あの後に何度かレミレンから聞いた話の中で、錬金板や錬金台に載せている材料が足りなかったり使用できないアイテムが載っていたりする時、錬金板や錬金台にいくら魔力を注いでも一切光らないし発動しないと説明してもらった記憶がある。


 それを考えると、今回はすぐに消えたとはいえ錬金台の魔法陣が光った、要するに発動したのだから、成功する余地はあるということなのだろうか。


 となると、何が駄目だったのかを知らないといけないのだけど……ぬぅ。

 うーむ。指輪の修復には金と銀が必要だから金鉱石と銀鉱石を使った訳だけど、実際に必要なのは鉱石内にある金と銀。

 ということは、鉱石を使うというよりも鉱石に含まれている金と銀を使うようにイメージすればいい? ああ、抽出とかそんな感じでやればいけるかも。


 仮定ではあるもののそう結論付けて、もう一度錬金台を発動させる。

 今度は鉱石の中の金と銀を使って指輪を修復することを明確に意識していく。すると錬金台から溢れ出る光が強くなり、さっきとは異なる状況になった。


 これが正解だとわかったことで私は指輪の修復を進めて行く。徐々にというよりも一気に光が強くなり、錬金台に触れている手にジリジリと痛みが表れる。

 最近はこれに近い状態になっても碌にダメージを受けなくなっていたので、慢心というか気にしなくなっていたのだけど、ここまで明確にダメージを受けているという感覚は久しぶりかもしれない。


 まあ、反動で受けるダメージは気にしたところで減ることは無いので、雑念が入らないように無視するのだけど。


 そうして30秒ほど時間が過ぎたところで錬金台の光が徐々に弱まっていく。

 そして、完全に錬金台が光らなくなるとそこには見た目からして綺麗になった指輪と、何も変わってなさそうな鉱石が錬金台の上に載っていた。

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