第20話 リザルト?

 

 うーん。まだ倒せていない。たぶんあと一発でも入れれば倒せる感じかな。あ、残りの2匹が動き始めた。拙い。このままだと5対1になる。さすがにそうなったら対処できないのだけど。


 直ぐに攻撃をしてくる感じではないので、さっさとダメージを受けている犬を倒そう。ただ、他の2匹の攻撃が絶え間なく、とは言わないけど結構回避に専念しないといけないくらいには攻撃してきているから、攻撃するタイミングが少ないな。


 ああ、もうこれあれだ。一々弱点狙わないで適当に攻撃した方が良いやつ。少なくともダメージは稼げるし、やらないよりはマシ。


 そう判断して適当にブラッドウェポンを振るう。常に倒れている犬を視界に入れることは出来ないけれど、何処に居るかくらいは把握できるように他の犬の攻撃を躱しながら、それを目掛けて攻撃を繰り出す。


 多分当たっている? 直接持っていないからだと思うけど、ブラッドウェポンって攻撃が当たっていてもそれは私にはわからないのだよね。だから毎回ダメージエフェクトが出ているかどうかで判断していたのだけど、今はその確認も難しい。


「グゥォ…」


 あ! よし倒せたみたいだ。とりあえず一旦ブラッドウェポンを水筒に戻す。スキル発動中はMPが自然回復しないから大分MPが減っている。1、2回分はMPを自然回復させたいところだけど、そんな余裕はなさそう。


 サブ武器として装備している宵闇の短剣を出す。少しでもダメージを稼ぐように犬たちの攻撃を躱しながら少しずつ攻撃を加えていく。



 宵闇の短剣に持ち替えてから、数分くらい2匹相手に立ちまわっていると、感知に映っている赤い点から、他の2匹が見える範囲のところまで近づいて来ていることに気付いた。これは…また私の背後に回ろうとしている?


 ああ、これ駄目かも。いや、せめて後1匹は倒さないと。と言うか、どれくらいダメージを与えているかわからないから一回【鑑定】しておいた方が良いかも。


[(モンスター)フォレストシャドウウルフ LV:23 Att:影]

 HP:1472/2400

 MP:217/420

 スキル:■


 あれ? 結構ダメージ入ってる? そんなに攻撃を当てた訳でもないのにここまでダメージが入っているってことは、もしかしてこの犬VIT低め? 


 いや、単に宵闇の短剣の攻撃力が高いからかも? 委託に流れている短剣と比べれば高い方だし。そう言えば、ブラッドウェポンの攻撃力ってスキルの熟練度に依存だから、正確な攻撃力はわからないし。ブラッドウェポン、もしかして攻撃力低めだった? 


 まあ、確かに元々液体のブラッドウェポンの攻撃力が高い訳ないか。それにブラッドウェポンの利点って、あくまで手に持つ必要が無いところだから攻撃力が低くても十分使い勝手はいいのだよね。その反面、発動中は常にMPを消費するからずっとは使っていられないけど。


 とりあえず、これだけダメージが入っているならまだ勝ち目はあるはず。たぶん、同じくらい攻撃を当てているもう1匹の方も与えたダメージ量はそう変わらないだろうから、どうにかして1匹倒せればどうにかなるかもしれない。


 それに宵闇の短剣を使っている間にMPも最大まで回復した。これなら十分にブラッドウェポンを使えるし、多少無理をしてでも1匹倒そう。


 宵闇の短剣を構えたまま、ブラッドウェポンを発動させる。【短剣術】を2次スキルに派生させる時も【双剣術】は嫌いだから取得しないと言ったけど、その理由は双剣みたいな片手に一つずつ武器を持って戦うタイプの武器が私は不得意だからなのだ。


 いや、正確には使えることは使える。ただ、常に意識して戦わないといけないから必要以上に疲れるし、乱戦などの状況が常に変わり続けるような戦いだと利き腕である右側の武器しか使えなくなる。そうなったら大剣とかの両手武器を使った方が楽だしダメージも稼げる。


 ただ、今の状況なら宵闇の短剣はすれ違いざまのカウンターだけを意識して、ブラッドウェポンは攻撃後の追撃として使えばそこまで疲れないし、ダメージも片方だけ使うより稼げるはず。


 カウンター戦法も2匹相手だとその内破綻しかねない。だからさっさと1匹倒して残った1匹を相手にしつつ、後からやって来る2匹を迎え撃つ感じにしたい。


 そう考えている間に飛び掛かって攻撃して来た犬を躱しつつ宵闇の短剣で攻撃をする。そしてその犬がこちらに向き直るよりも早くブラッドウェポンで追撃する。さすがにこれだけで倒せるほどHPは減っていないので、まだ数回はこれを繰り返さないと駄目、っと。もう1匹の方が攻撃してきたのでそれを躱す。


 タイミング的にカウンターは出来なかったけど、ブラッドウェポンでの追撃を加える。

 そうしてそれを何度か繰り返すうちにようやくもう1匹倒すことが出来た。しかし、それと同時に残りの2匹が戦いに加わってきた。


 私が躱せないようにほぼ同時に飛び掛かって来たので、このまま回避するのは無理だと判断してシャドウダイブを使用して回避。続いてシャドウエスケープを使い、元の位置から10メートル程離れた犬たちが直ぐに攻撃できない位置まで移動する。


 影の中から出て、体勢を整える。そして私が影から出てきたことに気付いた犬たちがこちらに迫って来る。

 一番ダメージを受けている犬は当然一番遠い位置に居るのだけど、ブラッドウェポンの攻撃範囲内なので普通に攻撃する。そしてその一撃を持って、その犬はポリゴンになって消えて行った。


 良し。これで残りは2体…ん? 視界の端に通知マークが点滅している? ああ、LVアップ通知か。LVが上がったことは嬉しいけど、今はそれを確認している余裕はない。


 周りにある樹を使い攻撃を躱し、宵闇の短剣でのカウンターはせずブラッドウェポンで弱点である首を攻撃する。


 首を攻撃された犬は最初の1匹目と同じように怯み、地面に倒れ込んだ。

 この反応って最初は弱点に攻撃されたからの怯みだと思っていたけど、もしかしたら弱点とは関係なく大ダメージを受けた際の怯みなのかもしれない。グネズミーの時も弱点に攻撃しなくても怯んでいたし、HP総量に対しての一定量のダメージを与えることで怯みが発生、かな。


 そもそも弱点に攻撃しない限り怯まないというのは変だし、もし弱点に攻撃しないと怯まないだったら、プレイヤーの全員が弱点攻撃主体の戦い方になりかねないよね。

 でもこんな感じで転ぶ程の怯みとなるとやっぱり弱点攻撃しないと無理かもしれないけど。


 地面に倒れている犬に対して首への追撃。攻撃された犬が悲鳴を上げているけど、これでもまだHPは残っているようだ。

 もう1匹の犬が攻撃してきているので樹を使って回避しつつ距離を取る。


 この分だとたぶん勝てそう。他の犬が乱入してこなければ問題なくいける…かな?


 倒れている1匹をもう1匹の攻撃を回避しながら倒す。さっきの2匹に比べて格段に倒し易いのは、もう他に隠れている犬が少なくとも感知の範囲内に居ないため、その分、この2匹に意識を向けても問題ないからだ。


 残りは1匹。これなら問題なく倒せる。

 この犬は確かに属性持ちだけど、魔術を放ってくる訳でもないし攻撃は物理攻撃のみだ。前はAGIが低かった所為で完全に躱すことが出来なかったけど、それも今では十分に回避することが出来る。


 そして、躱して攻撃して、回避して攻撃してを繰り返すことでようやく最後の犬を倒し、フォレストシャドウウルフの群れを全滅させることが出来た。

 確認したところ、戦っていた時間がそれほど長くなかった。ステータスウィンドウに表示されている時間を見る限り10分も戦っていなかったようだ。


 最後の1匹と戦っている途中から宵闇の短剣は使っていない。それにブラッドウェポンも【細剣術】の熟練度を上げるために短剣から細剣であるレイピアに替えていた。

 まあ、レイピアと言っても鍔と言うかガードの部分は省いて再現しているから細い棒みたいな感じだけど。


 やっぱりと言うか、当たり前だけど短剣よりもレイピアの方がダメージ量は少ないように感じた。スキルの熟練度は変わらないはずだから、武器種のダメージ倍率が違うという事なのだと思う。


 まあ、その辺りはたぶん攻略WIKIあたりに乗っているはずだから追々調べればいい。とりあえず地面に落ちているドロップアイテムを拾わないと。


 ドロップしているアイテムは…前に手に入れたのとほぼ同じか。

 前に倒したのは1匹だけなのだけど、サイズなのか元からそういう物なのか1匹当たりのドロップアイテムの数が多い。ドロップ数は全部で28個だから、1匹当たり5~6はドロップしている感じだ。その中で見たことが無いのは爪と尻尾の2種類。尻尾が1個で爪が6個と数が少なく、他は毛皮が10個と牙11個。


 悪くない成果だ。特に毛皮が多いのは嬉しい…のだけど、尻尾は何に使うのだろうか? アクセサリー系に使うのかなぁ? 他のゲームだけど、尻尾素材のアクセサリーで腰に付けて疑似尻尾的な装備があったけど、そんな感じ?


 うーむ、アクセサリーかぁ。【裁縫】は取得したけど【細工】も取得しようか迷うね。でも生産スキルはたくさん取得すると器用貧乏化が進むからなぁ。どれか1つか2つに絞った方が良いのだろうけど。

 これは採取が終わってから考えればいいか。キノコの採取を再開しよっう!?


 ドロップアイテムも拾い終わり、採取を再開しようと歩き始めようとしたところで背後から衝撃を受けて私の体は前に投げ出された。


 あれ、これ何か身に覚えがある気がするのだけど?

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