第19話 採取…採取…犬!

 

 スキルの方が弄り終わったので素材の採取を始めよう。


 最初は森の中には入らないで周囲の草原を見て回って目ぼしい物がないかを探す。

 今まで、と言うか前にこの場所に来た時は先に進むのを優先していたので、草原については殆ど探索していない。

 それにイベント中の採取をしている時に小薬草が森の中よりも草原の方でよく採取出来たので、薬草もおそらく森の中よりも草原の方が集めやすいはず。


 敵が近づいて来ても分かるように定期的に感知を使って警戒しつつ、周囲の草をかき分けながら採取可能なアイテムを探す。


 それっぽいのは無いなぁ。あ、あった、薬草発見…んん!? 薬草の近くに採取可能のアイコンがあったから鑑定で確認してみたら小麦だったのだけど?


 小麦って採取可能アイテムの中にあったかな。総合委託で見たことがあるから買えるのは知っていたのだけど、フィールド上でも取れたのか。まあ、小麦については後で確認するとして、とりあえず採取しておこう。


 ああ、採取が出来ない草の所為で見つけづらいけど結構採取できるアイテムがあるね。中にはスパイス系っぽいのも見える。

 選別は後にして、採取可能のアイテムは片っ端から取っていこう。

 UWWOではプレイヤーがフィールド上のアイテムを採取しても他のプレイヤーに影響がない様なシステムになっているから、その辺りを気にしないで良いので安心して採取できる。


 そして日が昇り始めるまで草原で採取を続けた。途中で【採取】の熟練度が100%になったので2次スキルである【採集】に派生させた。それと同時に【採掘】【伐採】【栽培】【釣り】の採取系スキルが取得できるようになった。ただ、これは【短剣術】とは異なり派生先としては出てこなかったので、条件を満たすと取得スキルに出て来るタイプのスキルのようだ。


【採掘】【伐採】の2つは既に取得済み。必要SKPが3だったのもあるけれど、武器系スキルとは違って採取系のスキルは限られた場所でしか熟練度を上げられないので、先に取得した方が良いと思ったので取得したのだ。もしかしたら、枝とか石ころとかを拾うだけで熟練度が上がるかもしれない、という期待も込めてはいるのだけど、どうだろうか。


 さて、日も上がって来てダメージを受け始めているので森の中に入るか。たぶん、その内あの犬が出て来るだろうけど今回は返り討ちにしたいところだ。難しい気もするけど。


 森の中を採取しながら進む。森に入る時にあの門番犬的なやつが出て来ると思ったのだけど出てこなかった。もしかしたら、あの犬が出て来るのは最初だけなのかもしれない。


 採取をしている時も当然、感知はしている。今のところ敵がいるような反応はないけど、あの犬たちはシャドウダイブを使って接近してきていたから近くに来ている可能性はある。感知だと魔法と言うか魔力自体はわからないから魔法系のスキルを使って来られると、対応が遅れがちになるのだよね。【上級感知】でもその辺りは変わらないみたいだから別のスキルがあるのかな? それとも熟練度不足?


 茸発見。…マッヒカン茸か。そう言えばこのキノコは使ったことが無かったな。レア度的にデストリマッシュと同じだから、もしかしてこれで与えられる状態異常、微麻痺ではなく麻痺なのでは? 忘れていなかったら今度使ってみよう。


 前よりも結構な数のアイテムが拾えている。スキルの熟練度が上がったからなのか、それとも森の奥より外側の方が拾いやすい? 単にあの犬が出て来ていないからの可能性も…いや、採取している時間はそんなに変わらないから、スキルの熟練度が上がって採取できるアイテムに気付きやすくなっているのだろう。


 採取、採取。ん? 今一瞬だけど感知に反応があった? 感知の反応に意識を向けると確かに敵性反応の点が出たり消えたりしていた。


 奴らめ、また不意打ちを狙っているな。まあ、狩りをするなら不意打ちをした方が狩りの成功率は上がるし、そもそも私の戦い方も不意打ちが主だから否定はしない。されるのは嫌だけど。


 採取を止めて警戒を強め、背後からの攻撃を防ぐために近くの樹に背中を向ける。こうするのは行動範囲を狭めるから本当は良くないのだけど、ただでさえ多対一なので相手が迫って来る範囲を制限する方が大事だと判断してのことだ。


 感知の範囲に複数の反応が見える。数は多分5かな。もしかしたら6かもしれないけど、少なくとも感知で把握できているのは5匹。前から3、後ろから2といったところか。


 今一番近くに来ているのは正面。次に後ろから来ている2匹だ。おそらく正面の犬が囮と言うか陽動役として最初に出て来て、後ろから来ているのが不意打ち担当かな。残りの2匹は不意打ちが失敗した時の補助役か、更なる不意打ち役?


 とりあえず最初に攻撃するのは正面から来ているやつだ。そいつには牽制の意味も込めてダークランス辺りを放つとして、背後から迫ってきているやつ用にブラッドウェポンの準備をしておく。


 正面あたりから足音が聞こえて来た。明らかに態と音を立てている感じなのでやっぱり正面から来ているやつは陽動役のようだ。


「グルル」


 正面からあの犬が現れた。それを見て直ぐにダークランスを放つ。そしてブラッドウェポンを短剣をイメージして発動する。細剣で出すことも考えたのだけど、まだ使い慣れていないので今回は今までと同じ短剣として使う。


 正面から来た犬は飛び跳ねてダークランスを躱した。それと同時に後ろから迫って来ていた犬が左右から私に向かって迫ってくる。左右からの同時攻撃ではあるけれど、さすがに同じタイミングで飛び掛かって来る訳ではないようなので、1匹目の攻撃はしゃがんで回避する。そして2匹目は私の動きに合わせて攻撃してきているのでそれを躱しつつ、ブラッドウェポンで攻撃する。


「ギャガッ!?」


 攻撃を受けた犬は想定外のダメージ量だったのか、上手く受け身を取ることも出来ずに地面に転がった。

 一応弱点判定は出ているようだけどサイズの所為か、一撃で倒せなかったけどそれでも直ぐに行動できなくさせる程度のダメージは与えられているようだ。


 おっと、正面の犬が攻撃姿勢に入っている。危ないな。まだ出て来ていない2匹はそんなに動いてはいないようだけど、若干回り込んできているかな。


 近くの樹を使って犬の攻撃を避ける。攻撃を受けた犬が立ち上がって来ているのが見えたので、追撃する。さすがに3匹から攻撃をされたら躱し続けることは出来ないし、攻撃するのも難しくなるので早く倒れて欲しいところだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る