第8話 経験値、何処に行ったの?
BOSSエリアの近くまで来ると、再戦しますか? のウィンドウが出てきたので迷うことなくYESを選択した。そして、それと同時に周囲の風景が変わって行く。
「え? ちょっ!?」
「シャドウダイブ」
真っ先に私の方目掛けて影が迫って来ていたので直ぐに【影魔術】を使って回避する。まあ、元から分かっていたので焦ることなく回避できたのだけど、どうも兄の動きが悪い。
元からオルグリッチに挑むって話していたのだけど、何で……って。あ、そういえばBOSSエリア入る時になんの確認も取らなかったね。そうなると、兄からしたらいきなりエリアが変わって戦闘に入った感じか。だから驚いて動きが悪くなったと。これは、ちょっと悪いことしたかも。
オルグリッチが私に攻撃を当てることなく通過していったので、直ぐに影の中から出る。
「出来ればエリア入る前に一言欲しかったでーす」
「ごめん」
兄に謝りつつ、【血魔法】で武器を作る。そして私目掛けて走り込んで来るオルグリッチを躱し、再度私の方に向かって来る前に首を斬りつける。するとオルグリッチは前と同じように体勢を崩した。
「うわっ。ダメージエフェクトの量えぐっ。これダメージどれくらいだ?」
オルグリッチの首から溢れるエフェクトを見て驚きながらも、兄は適当な場所に移動しオルグリッチに向けて攻撃態勢を取った。それを見て私もダークランスを放つ。
「っと、フィストショット!」
殴るように突き出した兄の拳から同じような形で半透明な魔法がオルグリッチに向かって放たれ、それはオルグリッチの体に当りはじけ飛んだ。
ダメージ量的には私が放ったダークランスの3分の1くらい? ダメージ的にはしょぼいけど、近接職が放った魔法だと考えればそんなに悪くは無いのかもしれない。
そして、オルグリッチは立ち上がると先ほどと同じように私に向かって来る。それをまた躱して攻げ……。
「はっ!」
「ぎょぐっ!?」
兄が私に気を取られているオルグリッチに横から攻撃を加えたようだ。オルグリッチは多少よろけはしたものの速度を落とすことなく走り向けていく。
そう言えば、連携の話もしていなかったなぁ。別に攻撃する必要は無かったのだけど、いやでも無いよりはマシかな?
とりあえずもう一度オルグリッチの首目掛けて攻撃をする。
「スラッシュ」
「ギョベェッ!?」
オルグリッチが悲鳴を上げて地面に倒れる。スラッシュを使った影響でダメージエフェクト量がすごいことになっているけれど、まだオルグリッチは倒せていないようだ。
「いや、ダメージ量おかしいだろこれ?」
「ダークランス。攻撃して」
「あ、わりぃ」
ダメージエフェクトの量が多いことに驚いて呆けている兄に攻撃するように指示を出す。
そして、地面に倒れているオルグリッチに2人で攻撃を加え、その結果、HPが全損したオルグリッチはもう起き上がることなくポリゴンになっていった。
『アナウンス
ウエストリア―第2エリア間のエリアBOSS【蹴撃のオルグリッチ】の討伐に成功しました。討伐時間00:01:54。
これにより討伐特典としてSTP3・SKP2、オルグリッチの軸痕皮を獲得しました』
ああ、そういえばSTPとかも2回目までは貰えるんだった。忘れていたから、ちょっと得した気分になるね。
「いやいや、討伐時間短すぎない? そもそも、俺……要らなくね?」
兄がそう呟く中、オルグリッチが完全に消えたタイミングで私たちは通常エリアに戻された。
通常エリアに戻ったところで特典以外のドロップを確認する。ドロップは前と同じ感じだね。オルグリッチの皮と羽、あと肉。特典報酬の軸痕皮は無いから、おそらくこれはレアドロップだと思う。
それで、ギルドカードの方のポイントは……加算されていないな。これってもしかしてギルドでカードを更新しないとどれくらい貰っているのかがわからないやつ?
「あ、LV上がった。っと? おお!」
何やら兄のLVが上がったらしいけど、驚いているのは何だろう。
「何かあった?」
「ああ、LV20になったらインベントリの枠が増えた」
「え? 増え? 何枠」
インベントリの枠が……増えた? LV20で増えたと言うことは、今後も20毎に増えていくのだろうか? いや待って、その前に兄にLV抜かれている。別に嫌とかではないのだけど、何時の間に抜かれたのだろうか。確かイベント前はLV16とか言っていた気がするのだけど。
「10枠分だな」
「そう。それと、何時の間にLV上がったの?」
「ん? 今の、って訳じゃなさそうだからその前の事か? それならイベント中に上がったんだけど」
「え?」
待って。私は1も上がっていないのだけど。なぜにWhy?
もしかして、倒し方の所為? 前にも弱点攻撃で倒した場合、前にも減っているのだろうな、とは考えたことがある。でも、あれだけ倒してLVが上がらないのはおかしい気もする。ワイバーンだって倒しているのだけど。
それにしてもあれだけ倒してLV上がらなかったから、イベント中は経験値取得できないと思っていたのだけど、どれだけ経験値は減っていたのだろうか。
「驚くような事か? アユだってあれだけ倒していたらLVも結構上がっているんだろう? あれ、でもインベントリの話が出てこなかったからまだLV20には行っていないのか?」
「上がってない。まだ17」
「いやいや嘘だろ? ……え、マジなの?」
私の表情から嘘ではないと言うことを読み取った兄が、驚きから困惑の表情を浮かべた。
私の経験値、何処に行ったの?
確かに効率が良い倒し方だし、素材も手に入るからイベント中は殆どあの倒し方だったのだけど、本当にどれだけ経験値が減ったのだろう。ただでさえレアRACEでLVが他に比べて上がり辛いのに。
「まあ、過ぎたことだ。気にしても仕方がないし、次に行く……いや、その前にそれがバグかどうかの問い合わせはしておいた方が良いな。もしかしたらバグかもしれないし」
「確かに」
弱点攻撃で倒せば経験値が減る。それはわかっているのだけど、あれだけ倒してLVが上がっていないことを考えると、バグの可能性も否定できないよね。
とりあえず、ステータスウィンドウを開いて問い合わせを選択して、バグかどうかの質問を送っておく。
さて、それじゃあ、もう一度オルグリッチに挑もう。
―――――
経験値については『運営裏話・3』か『第2章27話 アプデと経験値』で触れます
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます