第3話 素材と武器を合成してみる

 

 さて、JOBも錬金師になったから、またJOBの熟練度を上げていこう。


 うーん、どうしようか。合成で素材のQuを上げるのでも良いのだけど、別のこともやりたいんだよね。それに今は素材のQuを上げて良い物を作るよりも、数を熟して熟練度を上げる方が良いだろうし。


 ポーションの依頼の方は終わっているし、あ、そうだ。前に水筒作った時みたいに総合委託取引の方に参考になりそうな物が在るかもしれない。


 総合委託のボードを開いて色々調べていく。ああ、こっちにもイベントで手に入れた素材が流れてきているみたいだ。これだと直ぐに面白そうな物を見つけるのは難しいかもしれない。


 そう思って私は、検索欄に適当な言葉を入れて検索してみる。何の言葉を入れようかな。あ、そう言えば、まだ真面な武器を作ったことが無いからそれにしようか。錬金系で武器が作れるかどうかはわからないけど、それは調べればわかることだよね。


 む、武器だけだと幅が広すぎるな。出てきた件数が1000を超えている。じゃあ、武器じゃなくてナイフにしてみる。


 むむ、これだとヒットする範囲が少なすぎるのか。ナイフって人気ないのかなぁ。検索して出て来たのが10種類も無いのだけど、……いや、むしろ狙い目なのかも? ただ、さすがに参考にするには数が少ないな。とりあえず短剣も追加して検索してみると、ヒット数が50を超えた。やっぱりナイフは人気が無いみたい。


 まあいい。とりあえず出て来た中から作れそうなやつを探そう。


 うーん。属性付の短剣か。これは…ああ、鍛冶で作る際に属性がある素材を使ったのね。こっちは宝石を後付けすることで属性を追加すると。それでこれは属性無しの重量増加か。


 錬金系で作れそうなのがないなぁ。ぬ? これは、火属性のナイフだ。しかも説明文を読む限り後付けで且つ錬金っぽい。


 これなら作れるかなぁ? でも、錬金系で火属性を追加するような素材はまだ見たことが無いんだよね。一応宝石のガーネットを使えば付けられるけど、錬金系だと使えない。正確に言えば、付けられるけど極端に耐久値が落ちてしまう。やっぱり宝石は細工系のスキルで扱う物だと思う。


 でも、これなら他の属性持ちの素材を使えば出来そうな気がする。毒属性とか付けられたらいいかもしれないな。まだインベントリに毒キノコが残っているし、それを使うのもありかもしれない。まあ、別の素材を使って先に練習はするけどね。さすがにあのキノコを使って失敗はしたくない。


 と言うことで何個かナイフを買って、実験してみよう。第1エリアで取れる毒キノコはイベント中に拾ったし、無くなったら委託で買えるはずだ。


 そうして私は総合委託取引でナイフをとりあえず5本購入して、さっそくとギルドの生産施設に向かった。


 水筒を作った時みたいに注意されたくはないので、今回は先に施設の受付の人に思い切り光るかもしれないと伝えてある。


 さて、とりあえず先に持っている素材のQuを上げて、【上級錬金】の熟練度を10%以上にしよう。JOBチェンジ前の上がり方からして、それほど時間は掛からないはず。【錬金】と【上級錬金】の上がり方の差がわからないから絶対じゃないけど。


 イベント中に大量に確保したグラスゴートの皮を合成していく。他の素材にくらべて使い道が少なそう、と言うか使う当てが思い浮かばないからいっその事、何処までQuが上がるかの実験をしてみるのもいいかもしれない。


 とりあえず1回目の合成でQuをCに上げる。そして同じQuの物を複数用意して、Qu:Cの草山羊の皮を合成する。今度はQuがBになった。ふむ、これは何でも繰り返せばQuをSにするのも不可能ではないかも。まあ、どこかしらで躓くと思うけど。


 何度か合成を繰り返していき、草山羊の皮が元の数の1割ほどになったところで合成を一旦止める。

 結果は、Qu:Aまでは上げることが出来たけど、Sにはならなかった。もしかしたら何か条件があるのか、もしくは単純にスキルの熟練度が足りていないのかもしれない。


【上級錬金】の熟練度は6%まで上がった。JOBの熟練度は2%なのでもうスキルとJOBの熟練度はイコールではないようだ。


 熟練度がまだ10%に届いていないので、次はベアの皮を合成していこう。



 ベアの皮も草山羊の皮と同じように1割ほどになったところで合成をやめる。この段階で熟練度は11%になったので、これからナイフに属性を付ける実験をしていこう。


 まずは、ナイフとポイズンマッシュを錬金板に載せる。そして合成。毒属性のナイフ、毒属性のナイフ・・・


 イメージしながら魔力を流し込んでいると錬金板が光り出した。水筒を作った時ほどではないから、たぶん適正の範囲内なのだと思う。そして、光が収まると錬金板の上には最初と変わらないナイフが1本だけ載っていた。ポイズンマッシュが無くなっているから合成自体は成功しているはず。


 私は錬金板の上にあるナイフを手に取って【鑑定】を使う。


[(武器)微毒のナイフ Ra:C Qu:E Du:100/100 SAS:2500]

 毒属性が付いた鉄製のナイフ。元は鉄のみで作られた普通のナイフだったが、錬金で合成された際に毒性を含む素材が使用されたため毒属性が追加された合成ナイフ。このナイフによる攻撃が相手の体に直接当たった場合、毒属性の元となった素材と同じ効果を発揮する。

 追加効果:攻撃が相手の体に直接当たった場合、20%の確率で微毒(1)の状態異常を与える。STR+4

 作製者:秘匿


 一応狙った効果は追加されているけど効果が微妙。無いよりはましだけど誤差の範囲かな。追加効果の強さはもしかしてQuで良くなるかもしれない。今度は持っているポイズンマッシュの中で一番Quの高いQu:Bのやつでやってみよう。



 5本買ったナイフは全て合成してみた。ポイズンマッシュに関してはQuだけじゃなくて、複数同時に合成してみたりもした。

 結果は、Quが追加効果の発動確率に関係していて、個数は効果が発動した際の毒のスタックに関係しているようだ。


 作った中で一番効果が高いのは、発動確率60%のスタック3、STR+5だ。これでも【毒魔術】を使えるプレイヤーにとってはゴミとしか言えないのだけど、待っていない物理型のプレイヤーからしたらそれなりの効果かもしれない。あくまでも現状だと、だけどね。


 と言うか、この武器に属性を合成するのは意外と熟練度が上がるみたいだ。5つしか合成していないのに熟練度が上がったから、確実に素材のQu上げの合成よりも獲得熟練度が高いはず。


 これなら沢山作れば一気に熟練度が上がると思ったけど、そもそも需要があるかどうかがわからない。熟練度が上がったけど、作ったやつが全然売れないなんて状況にはなりたくないし、必要以上にASを消費したくない。


 とりあえず様子見で今作ったナイフと、これから作るやつは委託の方に流してみよう。直ぐに売れれば需要があるし、売れないなら需要は無いと考えていいと思う。もしかしたら他の人が既に同じような物を作っているかもしれないけど。


 今作ったやつは先に委託に流して、本番用のナイフと短剣を買って来よう。なるべく元となるやつは良い方が良いよね。今作ったナイフだとSTRが低すぎて低LVのプレイヤー以外使わなさそうだし。


 微毒のナイフは専用委託に標準価格で流しておいた。どうなるのか見ていたいけど、何時売れるかわからないから止めておこう。


 本番用の短剣とナイフを買ったので施設の方に戻る。さて、次に使うのはデストリマッシュだ。ポイズンマッシュを使った時は微毒だったのだから、おそらくこれだと毒が付くはず。ただ、数は無いからスタックの方は少ないだろうな。


 最初はナイフの方を合成していく。今回使うナイフはさっきのとは違い少しだけ良いやつだ。現状でもSTRは+10だし、さっきのやつより倍以上の数値だ。


 錬金板にナイフとデストリマッシュを載せる。そして先ほどと同じように魔力を通しイメージを浮かべる。


 合成する際に出る光が収まり錬金板の上には先ほどと同様にナイフが載っていた。結果は予想通り、毒属性が追加されていた。

 毒確率50%のスタック(2)と、同じQuでもポイズンマッシュよりも1個当たりの追加効果が強い。いや、強いじゃなくてポイズンマッシュが弱いだけかも?


 ナイフは成功したので、次に短剣の方も同じように進めて行く。ただ、今回はナイフよりも大きい短剣だから同じように行くかはわからないから、より慎重に進めて行く。


 短剣とデストリマッシュを錬金板に載せ、合成を始める。次第に錬金板から発する光が強くなり、徐々に私のHPを削り出した。これは水筒を作った時と同じく、私の適正範囲よりも難しい物を作っている時に出る物だから、より集中して合成を進める。


 さらに光が強くなり、私の視界は真っ白に染まる。そして合成が終わりに近づくと一気に光が強くなり、瞬間的に信じられない程の光に包まれた。


「ぎゃぁああ!? 目がぁー! 目がぁー!!」


 合成が終わったようで徐々に光が収まっていく。そして光が完全に収まると錬金板の上には買った時と同じ見た目の短剣が載っていた。


 これは成功しているのかな? と思うと同時に先ほど後ろから聞こえてきた悲鳴が聞き覚えのあるような声だったのが非常に気になった。

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