第2話 JOBチェンジと露呈する間違い
JOB:見習い錬金師を上位のJOBに変えるために受付に向かう。
ギルドの生産施設から出ると、人の影は疎らながらそれなりの人数が居た。いつもは朝方か暗くなってから受付がある所に来ていたので、人がいる時間に来るというのはここに到着した最初の頃以来だ。まあ、それもUWWO内で2週間も経っていないのだけど。
「すみません」
人影がある中で偶然人のいない受付があったので、その受付に声を掛ける。この時間帯はぎりぎり受付が2か所開いている時間なので、他の利用者が居ても直ぐに声を掛けることが出来た。
「ご用件は何でしょうか?」
「JOBの熟練度が最大になったので、上位のJOBにしたい……のですが」
「ああ、なるほど。では、ギルドカードの提示をお願いします」
「? あぁ、はい」
一瞬何で? と思ったけど、ギルドカードにはJOBだけじゃなくて熟練度の方も記載されているからそれを見るのだと気付いた。まあ、依頼とかを受けてギルドカードを定期的に更新しないと、JOBの熟練度とかは最新の情報にならないけどね。
受付の人はギルドカードを受け取っていつもの機械にカードを通す。そしてそれを取り出した後、ギルドカードを確認して頷いた。
「うん。問題ありませんね。しっかり熟練度が最大値になっています。おめでとうございます。これで別のJOBに転職が可能になりました。それでは選択可能なJOBの中から転職したいJOBを選択してください」
「はい」
受付の人が選んでと言った瞬間にいくつものJOBが乗っているウィンドウが出現した。これは最初にJOBを選択した際に出て来たやつと同じ物のようだ。
とりあえず何にするかは元々決まっているから、それは置いておいて新しく出て来たJOBを確認する。
新しく出ていて知らないJOBは、見習い縄師くらいかな。これ何の補正が掛かるかわからないけど、罠とか捕獲関係の補正が掛かるのかな? まあ、これにする訳は無いので上位のJOB欄に目を向ける。
とは言ったものの、あるのは3つだけ。最初の時にも出ていたJOB:ニートと転職予定の錬金師、後は……え? 調合……師? って、何でスキルも上位になっていないのに出ているの?
何でこのJOBが出ているのだろう。バグ? いや、でも私よりも先に見習いが取れた錬金師は居たはず。なのに出て来るってことはバグではないのかもしれない。
「あの、これJOBがどうして出ているのかわかりますか?」
わからない時は知っていそうな人に聞くのが早い。いくら考えたところで答えを知らない以上、わかる訳がない。当たり前だけど。
「どれでしょうか……って、ああ。これはおそらくスキルを所持した上で条件を満たしたからだと思います。特に錬金師と調合師の条件は一緒ですからね」
「え、じゃあスキルの方の熟練度は……」
「上位のスキルになっている必要は無いですね。条件には含まれませんので」
「そうですか」
そう言うことか。確かにポーションの納品依頼はどちらのJOBでも受けることが出来たし、出来る範囲も割と被っているから条件が近いのか。
「まあ、スキルの熟練度が低いまま上位のJOBに転職するのはお勧めしませんね。JOBの熟練度の溜まり方がかなり変わるので」
ああ、確かにありそうだ。スキルがJOBのランクに見合っていないと得られる熟練度が少なくなるとかそんな感じかな。
「なるほど。じゃあ、JOB:錬金師に転職で」
「わかりました。っとその前にこのJOBは現在のJOBよりも上位の物なので、転職するにはもう1つ条件があるんです」
「え?」
えぇ……? ここに来て止めるとか。出来れば先に言って欲しかったのだけど。
「ああ、別に厳しい条件ではありませんよ。単に今まで作った物の中からRa:C且つQu:C以上の物を見せてもらえれば条件は達成になります」
なるほど。ちゃんと出来るようになっているかどうかの確認か。これぐらいならポーションの納品依頼をしていれば出来るようになる程度の課題かな。
「今ここでも大丈夫ですか?」
「うーん。本来なら各JOBの担当が見ることになっているのですが、この時間にはもういませんし」
チュートリアルの時みたいにまた半日足止めかぁ。と言うか、ギルド職員が帰るの早くない? 今、そろそろ夜の7時になるくらい……いや、この時間なら別に早くないか。ギルドってある意味、役所に近い役割らしいから変でもないかもしれない。
「まあ、他に並んでいる方も居ませんし、私が見てもいいでしょう。一応私もその辺りの業務は出来ますからね」
「え? あ…じゃあ、おねが……って、もしかして納品扱いですか?」
おお、意外と受付の人は優秀なのかもしれない。あ、むしろ優秀じゃないと務まらないのかもしれない? いろいろ出来ないといけないはずだから、やっている内に万能になるのかもしれないけど。
「いえ、確認した後はちゃんと返却しますよ」
「そうですか。なら、お願いします」
そうして私は依頼で納品予定だったRa:C Qu:Cの初級ポーションをカウンターの上に出した。
「確認しますね。……うん。条件は問題なくクリアしていますね。これで転職するための条件は全て満たしました。転職の手続きをしますね。もう一度ギルドカードの提示をお願いします」
「はい」
もう一度ギルドカードを渡すと、先ほどとは違う場所にカードを入れ、何やら操作している。たぶん今弄っているのがJOB関係の手続きをするための機械なのだろう。
「終わりました。これでアユさんは今から錬金師です」
「ありがとうございます」
ギルドカードを受け取って確認する。JOBの欄にはしっかり錬金師と記載されていた。
「これで2次JOB……」
「え?」
「ん?」
私がボソッと呟いたことが聞こえていたのか、それとも別の何かが気になったのか、受付の人が驚いたような声を上げた。
「なにか?」
「今、2次JOBって言いましたか?」
「えっと、はい」
え? 錬金師って2次JOBなはずだよね? 掲示板とかWikiにもそう書かれていたし。
「アユさん、錬金師は1次JOBですよ」
「え? じゃあ見習いは?」
えええ? じゃあ、今出回っている情報は間違っていると言う事? でも見習いJOBがあるから2次じゃないの?
「見習いJOBは正確に言えば、正式なJOBではないのです。言うなれば0次JOBでしょうか」
え、あぁ、確かに見習いは職業とは言えないかも。現実でも見習いって付くと給料が下がったりするし、アルバイトとかフリーターみたいな扱いなのかもしれない。熟練度も上がりやすかったし。
「なる……ほど、理解しました」
「まあ、誰でも認識違いは起こり得る物ですからね」
「そうですね」
まさか、見習いが正式なJOB扱いではないのに驚いたけど、私はちゃんと錬金師にJOBチェンジすることが出来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます