第42話 圧縮袋

 

 9日目の午後。お昼を食べてからログインした。UWWO内はまだ夜なのでもう一度街の外に行ってモンスターを倒して、アイテムを拾ってこよう。




 アイテム集めを日が昇る前に切り上げてギルドに戻る。色々とやりたいことはあるけれど、まずは防具屋のガルスに教えてもらった補助系の装備を探してみようと思う。


 ええと、補助系の腕装備はああ、これだ。殆ど手袋か指輪しかないっぽい。腕輪が何個かあったけど、腕の装備って両腕の2つでセットになっているのしか売ってない。アクセサリーだけどもう幸運の腕輪を装備しているから着けるのは無理そう。手袋は好みのデザインが無いから無視して、残るは指輪か。


 もともと総合委託取引は素材の販売が主なのか、あまり凄い出来の装備って感じの物は置いていないようだ。まあ、そう言うのが在っても買えないだろうからいいけど、買うならあんまり目立つようなものは避けてシンプルな物にしよう。


 うーん、水属性強化(微)、光属性追加(微)、闇属性耐性(微)……。あんまりこれだって言うのがないなぁ。……おっ? MP制御能力増加(微)とMP制御補整(微)……か。悪くはない……かなぁ。値段は1200AS、まあこれでいいよね。ずっと使うって訳じゃないし、しばらく使う分には問題ないはずだ。


 総合委託取引から、[(防具)制御の指輪 Ra:C Qu:D Du:100/100 BAS:1200]を購入した。そして直ぐにそれを装備する。

 ついでに何か面白い物はないかを確認していくと、気になるアイテムがあった。


[(アイテム)3倍圧縮袋 Ra:Uc Qu:D Du:100/100 BAS:6000]

 見た目は普通の袋。しかしこの袋は本来の容量よりも3倍の物を入れることが出来る。ただし、中に入れられるアイテムは1種のみ。錬金で作成した際に重力石を混ぜ込むことで最大まで物を入れても重さが感じることはない特殊な袋になった。

 作成者:アフィアラ・ミルフォス


 これで水筒とかないかな。魔造血液とか入れる入れ物が欲しいんだけど、出来れば腰とかに装備できるようなのがいいな。いちいちインベントリから出すのは面倒だし、戦っている最中では難しいんだよね。


 見た感じ無いなぁ。あればよかったんだけど、便利そうだから売れてしまったのかもしれない。

 いや、でも【錬金】で作ったって説明にあるからもしかしたら出来るかも? 重力石ってのはわからないけど、容量3倍なら水筒3つ錬金でくっ付けたらなりそうだし。

 ん? 容量3倍だと重さも3倍になる? ああ! だから重力石使っているのか。


 1回やってみようかな。水筒とかの値段しだいだけど、…水筒は1個500ASか。安くはないけど、重力石は……1800AS!? え、高い。いや、何か特別っぽい石だからそれなりにするだろうなぁ、とは思っていたけど高いよ。せめて1000ASくらいにして欲しい。あ、いや待って。専用委託取引の方が安いかもしれない。


 専用委託の方を確認したけど、むしろ2800ASと高かった。水筒の方は420ASと安かったのでそっちで3本買った。重力石は総合の方で買うことにしよう。【錬金】は失敗しても材料無くならないし、ダメだったら取っておけばいいはずだ。絶対無くならない訳じゃないらしいけど、それも滅多にないらしいからね。無くならないよね! そう思っておこう。




 ギルドの作業場に移動して作業を始める。いつも通り薬草も珪砂も購入済みだ。先にこっちをやって少しでも熟練度を上げてから水筒の方をやった方がいいはずだ。


 初級ポーションは直ぐに作り終わった。そろそろ別の物を作らないと熟練度が上がらなくなってきている。ただ、【調合】と違って【錬金】の方は熟練度が上がってもレシピを覚えないみたいだから、その内どこかで探してこないといけないと思う。


 次は水筒の方を作っていく。錬金板に水筒3本と重力石を置いていく。……なんか不安になる光景だ。これでいいのか? 何か別のやつも足した方が良いのだろうか。そう言えばこれ出来たとして、中に入れた物は劣化するような? 薬草とか入れて防腐剤的な効果とか得られたりしないかな。……とりあえず名前的に効果ありそうな浄薬草を1つ追加で入れよう。


 浄薬草を追加で錬金板の窪みに入れる。そして、魔力を流していく。【錬金】は想像力で作れる物の良し悪しが決まってくる感じなのでしっかり容量3倍で保存力がある水筒を想像しながら魔力を流していく。しばらく魔力を流していると錬金板が強く光り出した。


 手がピリピリして来た。ポーションを作る時はこんなことが起きたことは無いので【錬金】の熟練度不足だったかもしれない。しかし、まだ結果が出ていない以上まだ魔力は流し続ける。容量3倍で保存力がある水筒……、容量3倍で保存力がある水筒……、が出来る。


 さらに光が強くなってきた。それに伴いさっきよりも強く手がひりつく。そういえば痛覚0%にしているのに何でひりつくのだろう? いや、今は無視。容量3倍で保存力のある水筒が出来る。


 錬金板がさらに強く光って視界が白く染まる。これは明らかに熟練度不足だ。どう考えても今作れる物じゃなかったな。


 そう考えていると光が収まって錬金板の真ん中の窪みに水筒が1本置かれていた。…これは成功したと言うことなのかな? それとも1本に纏まっただけで元と変わらないとかだったりして。

 恐る恐る出来た水筒を鑑定する。


[(アイテム)2.8倍圧縮水筒 Ra:Uc Qu:E Du:90/90 SAS:5900]

 見た目は普通の水筒。しかし、本来の容量よりも2.8倍の量を入れることが出来る。錬金で作られた際に重力石と浄薬草を追加で加えたことで、重量は殆ど感じられず劣化も大幅に遅らせることが出来る特殊な水筒となった。

 作成者:アユ(秘匿)


 求めていた物と何か少し劣るけど、とりあえず目的の物が出来たから良しとしよう。まあ、容量とか耐久が少し低いのは途中で違うことを考えたからか、単に熟練度が足りなかったからかはわからないけどそう言うことだと思う。


「大丈夫ですか? 何やら凄く光っていましたけど」


 さすがにあれだけ強く光っていれば誰かしら確認しに来るよね。何もなかったとしてもギルド関係の施設である以上、安全は考慮しないといけない訳だし。


「あ、大丈夫です」

「そうですか? 凄くダメージ受けているみたいですけど」

「え?」


 そう言われてステータスを確認する。するとHPが減っていて、100近いダメージを受けていた。

 さっきの手がピリピリしていたのってダメージを受けていたってことなの? MPも半分以上無くなっているし、これは大分無理をしたってことなんだろうか?


「あ、大丈夫。問題ないです」

「それならいいですが。できれば次からは、あのようなことが起こるとわかっている時はなるべく報告してから作業を行ってくださいね」

「はい……」


 何の報告もなく、いきなり凄く光らせたら注意はされるよね。ただ今のに関しては、こうなるって知らなかったんだから事前に報告は出来ないよね。仕方ないよね。まあ、今後似たようなことがあれば報告すればいいんだよね。


 とりあえず出来た水筒を装備してみる。……いや、どこに装備すればいいんだろう。【血魔術】用の血液を入れるから武器の位置に入れたいけど、装備できないっぽい。魔造血液入れた状態なら出来るかな。…あ、出来た。なるほど武器として使える状態じゃないと装備出来ないのか。初心者のナイフをサブ武器に移動させてから、水筒をメイン武器の位置に装備する。


 あれ、武器の所に装備すると名前が魔造血液に変わった? どういうことだろう。もしかして水筒が剣の鞘みたいな扱いになったってことかも? まあ、どうであろうと装備できるならいいか。

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