第41話 防具を依頼する
「おう、また来たのか。ってあれかさすがに防具買う感じだよな? 昨日はコート作っただけだし、ASも足りないみたいな感じだったから言わなかったが」
「まあ、そうです」
店の中を見渡す。今買いたいのは胴と腰、そして脚用の装備だ。特に脚用の装備は先に買っておきたい。スキルとJOBの補正で全体的にステータスは上がっているけど、どうしてもAGIが他より伸びが少ない。LUKはこの際置いておく。VITはコートで大分上がったからいいけどその分AGIの低さが際立っている。
「ここに出てるのは売り物の一部だけだ。欲しい部位があれば言ってくれ。どんなのがいいとか予算も言ってくれた方が的を絞りやすいんだが」
「胴と腰、後脚の装備。軽くて動きやすそうなやつ。予算はまあ今の手持ちが3500AS」
「いや、今言った全部位で3500は少な過ぎるだろ。それだと今付けてる装備より多少良くなる程度にしかならんぞ?」
やっぱり。わかってはいたけど少ないよね。別に少し良くなるぐらいでもいいんだけど、何度も買いに来るのは面倒だし明日ギルドからASを引き出して来てから買った方がいいか。
「じゃあ、脚だけ…でいい。後はまた明日買いに来る」
「そうか? と言うかAS足りるのか?」
「ギルドに預けてあるから持っていないだけ」
「それならいいが…あぁ、ゴフテスの報酬があったから持ってんのか。そういやだったな」
「…そう」
「じゃあ、大丈夫だな。って言うか、だったら一式買っても足りるんじゃないか? 別に装備したくないとかそう言うのじゃないんだろ?」
確かにゴフテスの報酬を使えば一式は揃えられそうだ。でも正直どんな物が良いかよくわからないのであんまり気分が乗らないんだよね。
「買う…のはいいけど、よくわからないから」
「わからん? あぁいやそうか。そもそも装備を買うこと自体初めてだと。確かにそれだと、どんなの買っていいかの判断は出来ねぇよな。つっても、俺がアドバイスできるようなもんじゃねぇんだよな。防具とか道具ってのは使っている内にどういうのがいいとかわかって来るもんだし」
店員は提案したはいい物の私の言葉を聞いてどうしたらいいかと悩み始めてしまった。私としては、今はとりあえず脚装備だけ買えればそれでいいんだけど。
「いっそ、そのコートと揃えて作るか? 素材はまだ余ってんだよな?」
「なくはない…けど、数はそんなに」
「とりあえず使って良いやつだけ出してくれれば、どれだけ作れるかは判断できるが。どうする? 作るか? いやなら別に脚装備だけでも見繕うが」
コートと揃えてってことは隠蔽系の装備と言うことだろうか? そもそもあの犬の毛皮はあと1つしか持っていないから完全に揃えで作れないと思うけど、揃えってことはデザインとかも同じ感じになると考えればそこまで悪くはないかも?
「揃えて作ってくれるなら、でも足りないと思う」
インベントリから森影狼の毛皮とゴフテスの毛皮を出す。
「まぁ、確かに足りねぇが。足りない分はうちにある似たような素材を使えばいい。そういや嬢ちゃんはJOBが錬金だし魔術系か?」
「そう…だけど?」
「そうか、なら一式は作らねぇ方が良いか。魔術系なら腕装備は単純に防具じゃなくて補助系の装備の方が良いだろ。そうなると細工系の仕事になるからうちじゃあ作れないがな」
「補助系の装備?」
「言葉通り、攻撃を補助する装備品だな。普通の防具は基本STRやVITが上がるが、補助系はINTやDEXとかが上がる。防御面を強化するには向いてねぇが、距離取って攻撃する奴には向いてるって感じだ」
なるほどそういう装備もあるのか。確かに私は距離を取って戦う方が多いし、こっちの方が良いかもしれない。
「まあ、補助系の装備は腕と頭装備しかねぇから、どのみち他の装備はここで作ることになると思うが。胴と腰、脚装備だけならここに出ている材料だけでも足りることは足りるが、まあ、それだとかなり物理よりになっちまう。そのコートの性能に合わせるならやっぱりうちにある素材を使うことになるがな」
「どれくらいAS掛かる?」
「……ここの素材だけで作れば3つで10000ASだな。うちの素材使ったら13000ASってとこだが」
うーん、まあ一応許容範囲内か。これなら適当に買って揃えるより作ってもらった方が損はないかなぁ。後は頭と腕の装備だけど。
「あ、じゃあ…13000の方でお願い…します」
「おう。了解。3つじゃ直ぐに出来ねぇし、また明日この時間に来い。それまでには出来てっから。それとASは出来てからだな」
「あの、細工系…の装備ってどこで買える…ますか?」
「あ? 細工系だと近所にあるキリアのとこで買えるが、あそこ昼しか開いてねぇんだよ。行くなら昼に行かねぇとな。行くなら場所教えるが?」
昼かぁ。フード付きのコート作ったけどさすがに1時間外にいるのは難しい。フードを被れば被らないより5分の1くらいにダメージは減るけど、それでも1時間は無理。
「昼は無理。RACE的に」
「RACE的にって、そう言や嬢ちゃんの名前とか一切聞いてねぇな」
今更ではあるけど、自己紹介はしていないし私もこの店員の名前とかは知らない。売り買いするだけなら知る必要はないから気にしていなかった。
「今後、まあ、ここに居るうちは整備とかするかもしれんからなぁ。名乗っといた方が良いか。俺はガルスだ。こんななりだがRACEはドワーフな」
え? 背がそれなりにあるからヒューマンだと思っていたんだけど、ドワーフなの? UWWOだとドワーフって良くある背が低くて髭って感じの見た目なんだけど? こういう事もあると言うことなの?
「え? あ、えっと。アユ…です。RACEはヴァンパイア」
「まぁ、これでドワーフとは思わないよな。って言うかヴァンパイアってまだ生きてたのか? レッサーの方は稀に見かけるが、それ以外は100年前のスタンピードで全滅したって聞いたことがあるが」
「その辺…は知らない。異邦人だから」
「え? 嬢ちゃん異邦人なのか? いや、そこじゃねぇな。ヴァンパイアじゃあ日中はキツイか。だからこの時間に来てるんだろうしな。だとするとどうするか。委託の方で買えなくはないが」
あ、そういえば委託取引でも買えるんだっけ。専用委託の方にはあまり良いのなかったから忘れていたけど、総合委託の方は確認していなかったな。後で確認してみよう。
「委託取引の方を確認するから」
「そうか? 森影狼の毛皮があるなら牙もあるだろう。それを使えばイヤリングくらいなら作れると思うぞ。なんなら俺からキリアの方に頼んでおくが」
「出来る…の?」
「たまにあるからな。特にキリアは会えない場合が多いから、俺から話を持っていくことが多いな」
「出来るならそれで、でも値段は?」
「イヤリングなら材料持ち込みなら高くても2000ASってところだろうな」
「そう、なら…お願いします」
私は防具屋の店員のガルスに森影狼の牙を2個渡した。
「確かに受け取った。出来るのはさっき言ったように明日の午後以降になるからその後に来い。まあ、来るのはこの時間になると思うがな」
そうして私は昨日と同じように街の外に出て、依頼のモンスターを討伐した後は時間の許す限りモンスターを倒したりアイテムを拾ったり、スキルの熟練度を上げてからログアウトした。
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