第29話 突然のエリアBOSS
サービス開始7日目。遅めの朝ご飯を食べてゆっくり休憩してからログインした。
ログインするとそこは見慣れ…ていない廃屋の中だった。時間的にまだ日差しがあるので廃屋の中で時間を潰す。もう少しゆっくりしてからログインすべきだった…いや、【血魔術】の熟練度上げておこう。
外が完全に暗くなった。これで外に出てもダメージを受けないから周辺の確認をしよう。
廃屋から外に出て周辺を見て回る。
【鑑定】の熟練度を上げたいので【鑑定】を使いつつ少しずつ確認を進める。使えそうな道具とかは落ちていなさそうだ。その代わり薬草とかの草系のアイテムは結構な数が生えている。来るまでに使った薬草分はすでに集まった。
やっぱりここは宿場町だったのか大きな建物の跡が結構残っていて、中には鍛冶場の跡もあった。
入念にそこを確認していると、何と鉄塊が見つかった。何年も雨曝しの状態だったから表面はかなり錆び付いているけど、【鑑定】ではしっかり鉄塊(錆)と表示されているから間違いない。これは大きな収穫だ。今のところ使うことはできないけど、いつか使えるようになりたいところ。
大体、町の中を見回った。ただ規模的に町だったけど3分の1くらいは畑だったみたいで草が生い茂っている場所が結構あった。もしかしたら馬用の場所だったかもしれないけど、それでも全部がそういう訳でもないはずだ。それを考えると規模は大きいけど村なのかなぁ。そもそもセーフティーエリアの名前に村って入っているからそうなんだけど。
アイテムもたくさん手に入れたし、【鑑定】もたくさん使って熟練度が10%になった。ステータスもほんの少し上がったし、SKPも1獲得した。これでSKPは21になったけどMPの方はもう取得しても良いかなぁ。取得してもSKP11残るし問題はないはず。それに今更だけどパッシブ系のスキルは早めに取得した方がいいし。
【MP自動回復量増加(微)】を取得しよう。これでSKPが11まで減ってしまったけど、とりあえず説明を見てみよう。
【MP自動回復量増加(微)】
MPの自動回復する際の量を増加させるスキル。増加量はスキルの熟練度に応じて変動する。
効果:MP自動回復量を0.1%増加させる。
うん…まあ、想定通りのものだね。【HP自動回復(微)】に比べれば量は倍だし、まったく意味はないこともない…はすだ。
ここを出て南に行こう。一個前の簡易セーフティーエリアの屋根の上から見えた長い建物はここから多少見えるし、そこに向かえばいいはずだ。
村を出て、道を南に向かう。
『アナウンス
エリアBOSSの戦闘フィールドに入りました。これからエリアBOSS:【岩腕のゴフテス】との戦闘が始まります』
え? エリアBOSS? いきなり!?
村を出て、さあ走ろうと思ったところでいきなりのアナウンス。しかもエリアBOSSとか意味が分からない。BOSSってもっとわかりやすい感じで居るものじゃないの?
困惑している間に何故か場所が変わり、腕に岩をくっ付けたデカいゴリラのようなモンスターが現れた。森にいた熊でも大きいと思ったのに、これは3メートル? いやもっとある?
想定していない事態に頭がうまく回っていない。そんなことは知らないとばかりにゴリラは私の方に向き、腕を振り上げた。
「ゴォアアアァアアッ!!」
ゴリラは戦闘開始とばかりに叫ぶと腕を振り下ろして地面を思いっきり揺らした。
その衝撃で惚けていた意識が戻り、咄嗟に顔を守る。ゴリラが降り下ろした腕は当然周りにあった物を弾き飛ばし、私の方にも石や土が多く飛んできている。それが体に当たってダメージを受けた。
とにかく正面にいると攻撃が来そうだから常にゴリラの側面に来るように移動し続ける。その間に使えるスキルのチャージをしていき、チャージ完了と同時に魔術系のスキルを放っていく。
ゴリラはゴツイ見た目通り動きはそこまで速くない様なので攻撃は順当に当たっていく。
ダメージの方は今のところはわからない。まだ数発しか攻撃入れてないからHPバーがほぼ減っていない。そもそもこのゴリラHPどれだけあるかがわからない。
隙を見て【鑑定】をしてみる。熟練度が上がったから見え……た。けど、これは無理だ。
[(モンスター・BOSS)岩腕のゴフテス LV:28 Att:土]
HP:4713/4800
MP:290/290
状態:
スキル:■
LV高すぎ、HP高すぎ、これは勝てないでしょ。ダークランスとダークボール当てて2%もダメージ与えられてないし、むしろ【鑑定】しないで戦った方がよかったかもしれない。わからなかった方が絶対戦いやすかった。
仕方ない、出来るところまでやってみるかぁ。諦めて直ぐリスポーンよりも次に繋ぐべきだし。
ポイズンミストでゴリラを微毒状態にする。スタックは6。特に耐性があるとかではなさそう。次はパラライズミストで微麻痺を溜めていく。こっちのスタックは7。まあ普通だけどこれだと長期戦では使えないので微麻痺は諦める。
CTが解けたらすぐにまたポイズンミストをゴリラに接触させて微毒を蓄積させていく。この分だとすぐにMPがなくなりそうなので【闇魔術】で使うスキルをダークボール1つに絞る。
3分くらい戦ってようやくHPが10%削れた。こっちの被弾はゴリラの攻撃でたまにたまに飛んでくる石に当たってダメージを受けるくらいで、大きなダメージはない。
ダークボールと微毒で少しずつダメージを稼ぎそろそろ20%削ったくらいになった。このゴリラ攻撃が単調で割と遠距離なら戦いやすい。接近して攻撃しようとすると攻撃が当たりそうになるし、そもそも体に岩っぽいのがくっ付いているからダメージ与えられるかがわからない。見た目的には刃物は完全にダメそうだけど、1回は試してみないと断定はできない。
MPがそこそこ溜まってきたのでダークランスでの攻撃を解禁する。やっぱりダークランスはダメージ効率が1番いい気がする。ただ頻繁に使うとまたMPが減りすぎるので控えめに使う。現在のゴリラはこんな感じ。
[(モンスター・BOSS)岩腕のゴフテス LV:28 Att:土]
HP:3659/4800
MP:290/290
状態:微毒(12)
スキル:■
地道に削ってようやく1000以上のダメージを与えたところだ。LVが上がったから熊の時より時間当たりのダメージは多いけど、果たしてこのまま削れ切れるのか。不安だ、絶対何かあるでしょこれ。
さらにダメージを与えていく。もうすぐ戦い始めて10分と言ったところ。このゴリラの特殊行動はどんなものだろう。ゴリラだからドラミングとか? 他に思いつかないけど2つ名の岩腕って言うのも特殊行動で何かあるのかな。
そろそろ30%か…ん? なんか動きと待って…えっ、ちょっと待ってこのタイミングで特殊行動!?
ゴリラの動きが止まり何かしらのため動作を始めた。私は急いでダークボールとダークランスを放ち、次にダークショットのチャージを始める。攻撃が当たったのに動作が中断されない。ダメージが少ないのか止められない物なのか判断できないけど、チャージが終わったダークショットを直ぐに放ちそれはゴリラに当たった。
ゴリラが大きく息を吸い込み始めた。溜め行動中はダメージが通りやすいのか、今まで以上にゴリラのHPが減った。それでも溜め行動は中断されないので、この行動はほぼキャンセルできないと言うことだろう。攻撃に備えて正面に居ないように走ってゴリラの背面に移動する。
溜め行動が終わったのかゴリラは口を閉じて私の方に向き直すように動いた。私がゴリラの正面に来ないよう移動しようとした瞬間、ゴリラは腕を振り上げそれを地面に叩きつけた。地面が揺れる。そしてそれと同時に私は身動きが取れなくなった。
おそらくあの攻撃にはノックバックの効果が付いていたようで、こうして私の行動を阻害して無理やり攻撃を当てようとしているのだと思う。ぶっちゃけ最悪である。
そして私が動けなくなったところでもう1回ゴリラは腕を地面に叩きつける。さらに相手を動けなくさせる念の入れようだ。最悪をはるかに超えた行いである。ふざけんなゴリラ。
「ゴガアアアッアアアァッ!!!」
「へ?」
全力で殴りに来るとか物理的な攻撃だと思ったら、まさかの咆哮。いや、むしろほぼブレスなのでは?
動けなくなっていたために身構えることも出来ず、あり得ないほどの衝撃を受けて私は立っていた位置から思い切り吹き飛ばされた。
『HPが全損したため、当アバターは死亡しました。周囲に蘇生が可能なプレイヤーがいないため、蘇生待機時間を短縮します。最も新しいリスポーン地点に転送します』
は? え、うそでしょ。まだHP80%くらい残ってたんだけど? ほんとに?
想定外すぎる結末に困惑しながら私はポリゴンになって、初期地点に飛ばされていった。
初期地点の棺桶の中に居る。
ゴリラまさかのHP残り70%で特殊行動。想定外すぎてテンパり過ぎた。あの時、息を吸っていたんだからミスト系のスキル使っていれば行動キャンセル出来たかもしれない。それに毒液玉も同じように使えたかも。犬の口に直接入れた時はスタック一気に溜まったし、苦しそうな感じになっていたからキャンセルできた可能性はかなり高い。なぜあの時これを思いつかなかったのか。
もともと勝てるとも思ってなかったからアイテムとか使うの控えていたってこともあるけど、もっと他にやれることがあった気もする。あの咆哮も近くに居たら躱せたかもしれない。その代わり殴られていたかもしれないけど、たぶん咆哮を直接食らうよりはダメージは少ないはず。あ、いやシャドウダイブ使えば確実に回避できたな。なぜこれをあの時思いつかなかったのか。熊の時は出来たのになぜ……
とりあえずデスペナなくなるまで一旦ログアウトしておこう。アイテム拾ったけどほとんど薬草だから作れるアイテムほとんどないし、他にやれることもない。
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