第27話 森を抜けると草原が広がっていた
森から出ると、正面には草原が広がっていた。
目の前に伸びているおそらく道だったと思われる場所はそんなに背の高い草は生えていないけど、それ以外の場所は背丈80センチを超えるような植物が生い茂っている。
今はゲーム内だと深夜0時を過ぎたくらいの時間だから日は出ていないけど、月明りで十分周りは見渡せる。あ、いや、夜目があるからそう感じるだけかもしれない。
とりあえず周りを見渡してみるけど、見る限り草原が広がっているようだ。結構先に別の森のようなものが見えるけど果たしてどのくらい離れているのだろうか。できれば少しでも高い場所があればもっと周りを確認できるんだけど。
このまま立っていても仕方がないので道の跡に沿って進んで行く。【感知】を使って周囲に敵が居ないかを確認すると端の方に小さな赤い点が数個あるくらいで警戒しなければならないほどではなかった。
さらに草原を進んで行く。森を出て30分くらい走ったところでまだ遠くではあるけど分かれ道らしきものが見えてきた。
そして数分走ったところでその場所に辿り着いた。
どうやら私が来た道は本来の道筋からわきに逸れた細めの道だったらしい。まあ、余程のことがない限り森の中に道を作るなんてするわけないので納得できるけど、本筋の道がかなり太いことが気になる。
どちらにせよどちらの道にも草が生えているので人が使わなくなって相当な時間がたっているのはわかる。
しかし、この世界の文明がどのくらいかはわからないけど、少なくともリアルの大型トラックが余裕ですれ違えるくらいの道幅があることから、この道はかなりの交通量があったという事になる。
と言うことはだ、この道は大体南北に伸びているようだから、どちらに行ってもこのまま進めば何らかの場所に辿り着くことは想像に難しくない。と言うかそうであってほしい。
どうであれ進まないとたどり着けないのだから、道を南に進んで行く。それにしても、そろそろログアウトしたいのだけどどこかできるような場所はないかな。ここまで太い道だと、どこかしらに休憩できるようなところがあってもおかしくないんだけど。
走りながら周囲を見渡す。時々、何かが崩れたような跡があったりするけど、休めそうな物は今のところ見つかっていない。
さらにしばらく進んだところでようやく小さな建物らしきものが視界に入ってきた。少し走るペースを上げて、そこに向かっていく。
近づいていくとその建物は割と小さいものだった。何の目的で作られたものなのかは見ただけではわからないけど、時々見かけた崩れていた建物に比べて結構頑丈に作られている印象を受ける。
とりあえず【感知】で中の安全性を確認してから中に入ってみる。
『アナウンス
簡易セーフティーエリアを初めて発見しました。この場所はリスポーン地点として設定することはできません。
ヘルプが更新されました 』
簡易セーフティーエリア?というのは聞き覚えがないけど、ヘルプが更新されたみたいだからそれでわかるはず。ログアウトは出来るみたいだし一旦ログアウトしよう。
昼食込みの1時間ほど現実で休憩した後、またログインした。ログインした場所があの建物じゃないのは何だか新鮮な感じだ。
セーフティーエリアについてのヘルプを確認する。どうやらセーフティーエリアは3つ種類があるようで、簡易と臨時、それと普通のやつらしい。
臨時は少し特殊で基本的に初期地点がランダムのRACEを選択したプレイヤーのための一時的な物で、そこが初期地点だったプレイヤーが他のリスポーン地点を設定すると消滅してしまうらしい。
それにその臨時セーフティーエリアは、そこが初期地点だったプレイヤーにしか使えないようだ。簡易はアナウンスがあったようにリスポーン登録が出来なくて、場合によっては破壊されて使えなくなったりするらしい。
私の初期地点はどっちなのだろうか。ヘルプを読む限り臨時っぽいけど、あそこの状況を見る限り簡易の方が近い気はする。まあ今気にしても仕方ないことだけど、無くなったら無くなったでちょっと悲しいからなぁ。
建物から出てその上に登っていく。簡単に登れるほどの高さではないのだけど、周りに崩れた瓦礫がたくさん落ちているからそれを使って上ることはできる。
屋根の上に登って崩れなさそうなところに立って周囲を見渡す。
見るからに草原と森しか見えないけど、目的の方向の南の方をじっと見つめていると、うっすらと何かがあるのが見えた。
地図を見る限りうっすら見えている物は東西に長く伸びているようだ。端の方は見えていないけど、途切れているという感じで見えないのではなく遠すぎて何かに隠れてしまったとかそんな感じだと思う。
やっぱり南に行かないとダメみたいだ。他の方向には森くらいしか見えないし、道も他に続いている感じではなさそう。とりあえず来た道を南に進もう。
道を進んで行く。本当に何もない道だ。
いや、おそらく住民が使っていたころには何かしらの物があったんだろうけど、長年人の手が入らなくて崩れてなくなったとかそんな感じかな。直線の道だから走る分には楽だけど何もないのは飽きるなぁ。
前もこんなこと考えて森の中歩いていたらあの犬に殺されたけど、今のとこ【感知】でも殆ど周りにいないんだよね。そういう設定とかなのか時間帯なのか他に理由があるのかはわからないけど、これはこれでつまらないと思うのと同時に何も出て来て欲しくないと思うのは自分勝手な思考だけど。
空が白んできた。そろそろ日が昇る時間だ。でも走る先には草原が広がっているだけで建物どころか、影が出来そうなものも見えない。
このままだとどこかに着く前にHP無くなるかも。ポーション作りながら行けば多少は進めるだろうけど、後のことを考えるとあんまりよくないよね。…ポーション使わないで行けるところまで行ってみよう。何かしら見えてくるかもしれないし…いや待てよ、もしかしてリスポーンしたらあの犬復活したりするの?
門番的な物だったから復活はしないと思うけど、絶対ではないし。……まあいいか。同じように倒せばいいんだし、むしろ倒し方がわかっていればその分早く倒せるから問題はないはずだ。
出来るだけペースを上げて走る。さっきの簡易セーフティーエリアから出て2時間半くらい走りっぱなしだけどまだ先に…あ、何か見えてきた。見えてはいるけどだいぶ先っぽいかな。全然見えている物が大きくなっていかないし。
それと日差しダメージが入ってきた。このままいくと着く前にダメージで確実に死ぬ。ポーションとか考えたけど現段階でポーションによる延命は90秒くらいだから焼け石に水状態だと思う。しかも使ったらその分を作らないといけないから実際に走っていけるのは60秒あるかないかってところ。全部使っても30分間走れる距離で辿り着けるってのは不可能だから、やっぱりポーションはもったいないから使わない。
結局、HPが減り始めてからは全力で走ったのに、目に見えている物に近づいたと思うこともなく私のHPは全損して初期地点の建物でリスポーンした。
『HPが全損したため、当アバターは死亡しました。周囲に蘇生が可能なプレイヤーがいないため、蘇生待機時間を短縮します。最も新しいリスポーン地点に転送します』
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