第26話 復讐は果たされた
しばらくすると犬は何か粘着トラップに引っかかった鼠のような感じになっていた。
さすがにくっつけすぎたかもしれない。運営とか開発もこんな同時に使うことは想定していないんじゃないかなぁ。
そういえば粘着玉って時間制限とかどうなっているんだろう。ずっと残るってのも変だし、もしかしてあの犬早めに倒さないと粘着玉消える?
粘着玉の拘束が解けたら困るのでポイズンミストとパラライズミストを発生させて微毒と微麻痺の状態異常をつけていく。そこから【闇魔術】のスキルを使って攻撃して同時にナイフで攻撃してとダメージを与えていく。
ダメージを与える速度はあまり早くはないけど着実に犬のHPを削っていく。ついでに拘束が解けないように定期的に粘着玉を使っていく。
犬のHPが50%を切った。特殊行動をすることも、まして動くこともなく犬はサンドバックと化して私の攻撃を受け続けていた。時折情けない声で鳴いていて、さすがにかわいそうに思えて来るけれど、奴は私を何度か殺しているのだからお互いさまと思って攻撃を続ける。
ナイフにスラッシュを乗せて犬の首目掛けて突き刺す。やっぱりお腹に攻撃するよりもダメージが入っている。弱点は弱点でも致命的な弱点とかそんな感じなのだろうか。おそらく私も首とかに攻撃が入ったら一撃で殺されると思うし、リアルを追求するならむしろ首を切られたら即死くらいあってもおかしくはないか。
そもそも私が使っているのが初心者のナイフだから即死しないだけかもしれないし。と言うかこの犬VITが高いのかナイフで切りつけてもあんまり切れてない感じなんだよね。毛皮の向こう側に届いてないっていうかそんな感じで、全力で突き刺さないとダメージもほとんどないし。
それとパラライズミストがあんまり効いていない。スタック10を超えても麻痺して動けなくなっているって感じがしない。もっとスタック貯めないといけないとなるとかなり厳しいんだけど。1回で溜められる限界がスタック8みたいだから、これで20以上じゃないと効果なしだと無理な気がする。MPの消費が大きいからそんなに使いたくはないけど、もしもの時のためにも溜めておかないといけない気がするし。
最初に出した粘着玉が気付いた時にはいつの間にかに消えていた。やっぱり時間制限があったのか。最初に使いすぎたせいで在庫も少なくなっているし早く倒したいところだ。
むぅ、ダメージが少ない。【闇魔術】のダメージが半減までは行ってないようだけど結構与えるダメージが少なくなっていて思うように行っていない。これは間に合わないかなぁ、消えたタイミング的に5分くらいが粘着玉の寿命みたいだし。
他に手はないか…粘着液とかで鼻と口塞いで窒息とか? 他に思いつかないしやってみよう。
まず、犬の顔目掛けて粘着液玉を投げる。む、上にズレた。
「ギャオッ!?」
一応鼻を狙って投げた粘着液玉は犬の目に入って視界を奪っていた。失敗失敗ワンモア。
「フゴアッ!?」
今度はちゃんと鼻に当たった。犬は少し苦しそうな声を出したがすでに口で呼吸していたのか、あまり苦しそうではないっぽい。さっきと反応が変わってないから多分呼吸できてない感じではないな。
じゃあ、次は口に粘着液玉を入れ……、どうやって入れよう。口開きっぱなしだから投げ入れれば入る? 粘着液玉は数作ってないからそんなに失敗できないんだけど。いやむしろ普通の粘着玉でいいのでは?
と言うことで粘着玉を犬の口目掛けて思いっきり投げる。
「ガフッ!?」
突然口の中に物が入って来て驚いたのか犬が声を上げる。ん? これただ食べられただけじゃ? 何か詰まったとかそんな感じじゃないな、普通に呼吸しているし。もっと大きくないとダメか。
ん? いや、今の様子からして毒液玉も飲み込んだりするかも?
毒液玉を犬の口の中に投げ込んでみる。さっき投げた時と同じように犬の口の中に毒液玉は吸い込まれるように消えていった。
「ガッ! グゴォアッ!?」
ちゃんと状態異常:毒になった。え、毒(20)とか表示されているんだけど!?
毒だと1スタックで25ダメージだから全部で500ダメージか。ただ200秒掛かると考えると粘着玉が持たないだろうから微妙なところだし、それで倒せるかも微妙。
やっぱり窒息させてみる方がいいかな。粘着玉(中)を取り出して犬の口に放り込む。おお、今度はちゃんと口と言うか喉を塞げたようだ。あ、やば。拘束していた粘着玉消えた。
息が出来なくて暴れ始めた犬から距離を取って様子を見る。必死に口の中にへばり付く粘着玉を取ろうとしている犬だがうまくいっていないようだ。動きが鈍ってきたのでもしも粘着玉が取れた時用に攻撃を入れていく。毒の影響で割とHPが減っていくけど、このままのペースだとまだまだ時間が掛かりそう。
犬が動かなくなってきた。うーむ、このシーン犬好きが見たらどう思うんだろうか。いや絶対批判的なこと言われるだろうけど、実際この犬と対峙したらそんなこと言えなくなると思う。体高1メートルを軽く超えるガタイのいい犬に襲われたら普通どうすることもできないし。
あ、HPバーが急に減っていった。窒息で死ぬとこんな感じでダメージ受けるのか。
そんなことを思っている内に犬はポリゴンになって消えていった。
ああ、ようやくだ。やっと森から出られる。
『アナウンス
戦闘時のアバターLVよりLVが倍以上の敵を単独で倒しました。それにより条件を満たしたため、称号(タイトル):【ジャイアントキリング】を獲得しました。
【ジャイアントキリング】
単独で自身のLVよりLVが倍以上の敵を倒した者に贈られる称号(タイトル)
貴方は単独で本来ならば勝てない敵に挑み、そして勝利を勝ち取った。戦いの内容は気にしなくていい。弱者が強者に勝つためには真っ当な戦い方だけではどうすることもできないのだから。
獲得方法:アバターがLV10以上で戦闘開始時のLVより倍以上のLVの敵を単独討伐する
効果:LVが上の敵に対して与ダメージが10%増加し、LVが下の敵に対して与ダメージが20%減少する 』
また称号か。今のところは使える感じだけど今後はどうなるんだろう。とりあえず、犬からドロップしたアイテム拾って森を出よう。他の犬が来ないとは言えないし。
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