第12話 幕間

暗闇の中で目を覚ます。


「目覚めたか。」


聞き覚えの無い声が聞こえる。

反射的に声を上げそうになったが、目の前にいる声の主がそれを制する。


「無理に声を出す必要は無い。意識してくれればこちらで読み取るのは容易なことだ。」


お前は誰だ。半信半疑だったが言われた通り言葉を意識してみる。


「吾輩の名はストラス。現世に遣わされた悪魔であり、人間の願いを叶えるもの。」


悪魔なら知っている。

これ以上取引できるものは無いから帰ってくれ。


「果たしてそうだろうか。」


なんだと。何が言いたい?


「たしかに取引は経験済のようだが、貴様の心からの願いは叶ってないだろう。」


心からの願い?

そんなこと急に言われても困る。


「なに、それほど難しいことを言っているんじゃない。自分では気づいていないようだから教えてやる。貴様の願いは『力』だ。それも『人を超えた力』が欲しいんだろう。」


ちから。

その言葉を聞いたとき、心臓がドクンと脈を打った。

すっかり冷めきったと思っていた身体に熱がうまれる。

人を超えた力。それが本当に手に入るのなら、何を引き換えにしても欲しい。


「クククッ。取引成立だな。貴様はたった今この瞬間から、人じゃない。」


身体中に力が漲るのが分かる。

突然世界が明るくなり、先ほどから会話をしていた声の主を見つける。

悪魔ストラスは、口が裂けるのではというくらい顔全体に笑みを浮かべ、ささやきかける。


「魔王になるのだ」

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