第24話土の竜の寝床
ーーーー次の日…
食べきれず、燻した肉を食べて出発する二人
アニト「じゃあ街を探して帰ろうか」
タマ「当初の目的忘れてないか?」
アニト「そもそも僕は
あの竜を倒すつもりなんてないよ」
タマ「チキンヤローがあの竜を倒せば
相当いいスキルが買えるだろ、
それで経験値稼ぐんだよ、
働け一生家に帰れないぞ」
アニト「そもそも僕は
家を出るつもりなんてなかったよ」
タマ「何!ここまで来て俺を切るのか!」
アニト「そういう訳じゃないけど…」
タマ「俺がここまで頑張って手伝って来たというのに……俺は裏切られたのか…そうかそうか…じゃあ身投げでも…」
アニト「わかったわかった!手伝うよ!」
タマ「けっ!
さいっしょっからそう言えばいいんだよ!
無駄な手間取らせやがって!」
アニト「ポンポン変わるんだから怖いよ…」
タマ「歩くより俺が探してきた方が早いな」
アニト「そりゃそうだよ」
タマ「お前は歩いてこの辺りを探せ
俺は上から探す」
アニト「えー!タマだけでいいでしょ!」
タマ「上からだと足跡やら見えないだろ
サボらず探せよ」
そう言い、タマが上空へパタパタ飛んでいく
アニト「えー…ホントに探すの…」
アニト(でもこのままじゃ
多分帰してくれないもんなー…
しょうがない探そ…)
タマ「おいー!ヌードヌードル!」急いで戻ってくる
アニト「?」
タマ「おい居たぞ!向こうだ!こい!」
アニト「明日が良かった…」
アニト(早すぎでしょ、心の準備出来てないのに…てかヌードヌードルって何…)
ーーー
タマに誘導され走って行くと、巨大な砂岩の殻で覆われた竜が、幅の広い峡谷の谷底を揺らし悠然と歩いている
アニト(大きすぎるでしょ…よくあれで歩けるよ…)
タマ「とりあえずアイツが
住処に帰るまで後を尾けるぞ」
アニト「結構大変…」
ーー一2時間経過…
タマ「岩を食うのか…」
アニト「バリバリ食べるね、気絶してる時に食べられなくて良かったよ」
ーーー暗くなってくる
タマ「アイツ全然寝る様子ないな…」
アニト「そうだね、巣みたいなのも近くに無いしね」
ーーー深夜
タマ「アイツいつ寝るんだ…!」
アニト「僕らの寝てる場所からかなり離れたよ…」
ーーーそこからしばらく…
アニト「さっきから全然動かないけど…」
タマ「死んだか?」
アニト「それはないでしょ」
二人が動かない土の竜を訝しげに観察する
タマ「…アイツ寝てるんじゃないか?!」
ふと思い声を上げる
アニト「え?立ったままだよ?」
そんな訳ないだろうと言った様な顔をする
タマ「立ったまま寝る奴は割と珍しくない」
アニト「へぇ〜そうなんだね」
タマ「クソ…!」
タマ「ぬぅーー…」悪態ついて頭を悩ませる
タマ(住処で寝ないならどうするか…)
アニト「今寝てるなら今攻撃すれば?」
タマ「一、二発当てたところで
起きた後にこっちがやられるしなー…」
タマ「ぬぅーー…」
タマ「そうか!確かに今攻撃すればいいな!」
アニト「今?」
タマ「そうと決まればアイツが動くまで
仮眠しておけ!俺が見張っておく」
アニト「え?今じゃないの?」
タマ「明日やるぞ寝ておけ」
アニト(やだなー…)
火も焚かずに暗い中、アニトが明日にストレスを感じつつも、一日歩幅のデカい竜を追いかけ回していた為、すぐに寝息をたてる
ーーーー翌朝…
土の竜「オォ…」
朝日が峡谷の割れ目から差し込み、土の竜が微かに動き、ビキビキと音がする
タマ「おい起きろ動くぞ」
アニト「…んえ?」状況が飲み込めないまま起き上がる
土の竜が歩き出し、その様子を見たアニトがようやく昨日の一日の事を思い出す
ーーーその日も一日、
土の竜を追いかけ回し後を尾ける
次第に辺りが暗くなり、辺りが見えなくなる
アニト「イテ…!」岩に頭をぶつける
アニト「この竜より、
普通の倒してた方が良くない?」
タマ「コイツの生態を知りコイツを安定して狩れる様になれば、毎日一千万入る、こっちの方がいいだろ」
アニト「そんなもんかなー」
ーーー
夜の帳が日の光を遮断し、辺りが月明かりで辛うじて見える程度の夜になってしばらくすると、土の竜の動きが止まる
タマ「よぉし!来たぞ!」
アニト「寝たの…?」わかりにくい寝方に心配になる
タマ「じゃあアイツの足元やら周囲に、
これでもか!ってくらいの菌をばら撒いてやれ」
アニト「いやそんな事したら起きちゃうでしょ…!」
タマ「心配するな、
寝てる間に石をぶつけてみたが無反応だった」
アニト「僕が寝てる間になんて事するの!
襲われたらどうすんの!」
タマ「ま、という事だ問題ない行ってこい」
アニト「菌が呼吸で入ればバレちゃうんじゃ?」
タマ「心配するな、頭が高い位置にある
そう簡単に吸うか」
タマ(多分な)
アニト「じゃ、じゃあ…行ってくるよ…?」
タマ「おう行ってこい」
タマ(いつ起きてもいい様に逃げる準備しておくか)
ーーー土の竜が寝てる間、時間いっぱい菌をばら撒く
菌のスキルと瞬間的なスキルで爆発的に増殖させ、菌に水をかけながら、そこら中に菌をばら撒き、付着させる、暗くて見えないが生物がおおよそ棲める場所ではないだろう菌の密集地帯が完成し、水を蒸発させ湿度を上げると、菌がその場から更に増殖する
タマ「ウグッ…!ゲホッ…ゲホ!」
タマ(ダメだ…!退散だ!)
離れてアニトを見ていたタマが、
急いで飛んで上空へ逃げる
タマ「環境にもよるが時間をかければ、強力なスキルだ」感心した様に言う
タマ「爆破に菌…
アイツは、もはやテロリストだな…」
アニト(ふぅ…こんなもんじゃないかな…?)
暗くて見えないが霧の様に霧散し、
濃度の濃い菌の密集地帯で額の汗を拭う
タマ「いいぞー…!」声を殺して合図する
アニト「全然良くないよ…」
アニト「ウジウジ言ったってしょうがない…!
よしやろう!」
腹を括るアニト
アニト「いくよー!」
土の竜の頭目掛けてフルパワーで爆破石を投げつける
爆破の煙が頭を包み、土の竜が目を覚ます
2個目からは足元に三、四つと投げていく、爆風で犇めき合う夥しい数の菌が舞い上がる
土の竜「オォォ…」爆破は直撃するが大きなダメージにならない、土の竜が口を開けてアニトを狙う
アニト「き!きた!」
急いで走り出すとアニトがいた場所に巨大な土塊の弾が着弾する、防御Lv9のスキルを持ってしても防げないであろう衝撃が、地面を抉り粉砕する
アニト「ヒィ〜!あんなのダメでしょ!」
タマ「デカさに見合う力だ」
土の竜「オォォ!」
構え、また土塊を吐き出し壁やら地面を砕く
アニト「この!」
頭に爆破を見事に命中させる
土の竜が爆音と衝撃にフラつくが、すぐに上体を戻し構えて土塊を吐き出す
アニト(予備動作が大きい分、避けやすい…!)
土の竜「オォ…!」地面を擦る様に、尻尾を薙ぐ
アニト「そんなのアリー?!」
近場の岩を踏み台に上空へ跳び上がる
土の竜「オッ!」
空中へ踊り出たアニトへ向かって
土塊を全力で吐き出す
アニト「…アッ!」土塊に空中で押し飛ばされ、壁と土塊の間で挟まれ、衝撃をモロに受ける
アニト「…ガハッ…!」
壁に叩きつけられたアニトが地面に崩れ落ち、動かない
アニト(なんて…パワー…!腕と脚が…!)
土の竜「オッ!」
もう一発アニトへ向かって土塊を放つ
アニト「…ぅぐぁっ…!」
土塊に吹き飛ばされ、地面を転がる
土の竜「…」アニトを踏み潰そうと歩いて近づく
アニト「…体が…」
堂々と歩いて近づく土の竜から離れようと、立ち上がろうとするが、体がプルプル震えるだけで動かない
土の竜「…ッ!…カッ…!」
突如、体が強張り動かなくなってくる土の竜
タマ「ギャッ!ギャッ!ギャッ!
きたぜ!きたぜ!効いてきたかー!」
土の竜「…!」
倒れまいと踏ん張るが次第に、菌の海に沈んでいく、沈んでいくと共に、菌の泥沼にハマり余計に動けなくなる
タマ「終わりだな」
アニト「…勝った…?」
タマ「そいつの頭に
ドサッと菌をお見舞いしてやれー!」
アニト「自分勝手で申し訳ないね…」
両手で溢れて零れる程の大量の菌を生成し、動けない土の竜の頭にドサッと乗せると、盛大に咳き込み苦しみ、力なく動かなくなった後にスーッと消えていき80cm程の巨大な魔石を転がす
タマ「ギャッホー!一千万だぜー!やりー!」
アニト「あー…疲れたー
もうダメ動けないや…寝よ…」
その場で横たわり眠ってしまうアニト
自分だけが平気な菌の海の底でゆっくり寝る
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