第21話頭目ザイム

一行は岩の壁がある場所で夜営する


アニト「イテテ…」

ミーテア「助かったわ…」

アニトの怪我に回復スキルを

          行使しながら礼を言う


アニト「いやそんな大した事してないよ」


オットー「間違いなく今回の殊勲賞だろう」


サイロス「お前のスキル凄いな!」

サラ「レッドウルフどんどん居なくなったね」


タマ「町じゃ馬鹿スキルと呼ばれていたぞ」


アニト「なんでわざわざ言うの!」


キロ「馬鹿スキル…」


ピアド「助かったよ」


アニト「でも次来たらどうしよう…」


バッジ「お前…

     手であんな攻撃防ぐとか、

            色々ヤバいな」


アニト「前は剣持ってたんだけど

            折れちゃって…」


ジャック「新しい剣はいらないのか?」


アニト「買おうとすると

         タマに怒られるんだ…」


タマ「いらんいらん」


サイロス「ペットに虐げられてるとか…」


アニト「ホントだよ、

       次あの人来たらどうしよ…」


オットー「そうだな…

       問題は頭目のザイムだな」


タマ(確かにあのガッハッハの男は

    鬱陶しいな…スキルを買うか…?)


ランジャ「クソ…俺のせいだ…」


バッジ「しょ、しょうがねぇって、

      あんな連中が居るなんて

         分かんなかったんだしよ」


ランジャ「…」


セイナス「ピアドに猶予を与えていれば

    あれだけの人数だ

     何かしらの痕跡を拾えていた

      可能性は高い」


バッジ「なんだよセイナス!」


ランジャ「その通りだ…

     囚人連中が出てきた時も

     まともに対処出来なかったしな…

     オットーさんが居なけりゃ

     終わりだったかもしれない…」


オットー「…明日期待しているぞ、指揮官殿」


ランジャ「俺は指揮官を下りる…

       オットーさん     

         やっちゃくれないか?」


セイナス「たかだか一回失敗したくらいで

     逃げるのか?情け無い」


ランジャ「…」


オットー「一緒に組んでる時は

      もうちょっと骨のある奴だと

       思ってたんだがな」


ピアド「とんだ腰抜けだな」


ランジャ「くっ…」


タマ「能無し根性無しか、ゴミだな」


ランジャ「お前に言われんのが

     一番腹立つんだよ!

     お前が一番なんもしてないだろ!」


タマ「この投石男にレッドウルフの場所を

   知らせたのは誰だと思ってる?

  そのおかげで助かったんじゃないのか?」


ランジャ「あいつのおかげだろ!」

            アニトを指差す


タマ「こいつが

    ここまで戦える様になったのは

             俺のおかげだ」


キロ「…え?そうなの?」

アニト「う、うん…」

ランジャ「ぐっ…」


タマ「その点、お前は挟まれた時…

  は、挟まれた!……と言いオロオロしてた

   だけで何もしてなかったな」


アニト「そ、そんな事ないよ!」


セイナス「あるな」


ランジャ「テメェら…!」


タマ「お前は!能無し根性無しの!

         赤色粗大生ゴミだ!」


ジャック「どんなあだ名だよ…」


ランジャ「鳥のくせに…!」


オットー「あの鳥の言う通りだな…

   ランジャお前は!赤色粗大生ゴミだ!」


ランジャ「オ、オットーさんまで!」


オットー「今のところは…だがな

      いい様に言われたまま

       引き下がるのか?」


ランジャ「チッ…ムカつくな!

  やってやるよ!見てろよクソ鳥!」


タマ「フッ…」鼻で笑うタマ


ランジャ「何が可笑しんだよ」


タマ「は、挟まれた!」

    下手くそなマネをして小馬鹿にする


ランジャ「あぁーー!ムカつく!

          あいつ斬ってやる!」

バッジ「やめとけ!

     鳥相手に何ムキんなってんだよ!」


アニト「もぉ〜ダメだよタマ」


ーーーー次の日…


この日の作戦を決める


ランジャ「俺は昨日今日で

      指揮を取れるほど優秀じゃねえ」


タマ「イチイチ言わなくても知ってるな」

セイナス「周知の事実だ」


ランジャ「…」苛つくが我慢する


ランジャ「各々必要な時間や物資を教えてくれ

   それと戦闘での指揮はオットーさんに

  任せるよ、俺は形だけの指揮官で

 ぶった斬ってる方が性に合ってるわ」


オットー「心得た」


ランジャ「作戦を立てるのは

         セイナスに任せる」


セイナス「…まあいいだろう、

      どっちにしてもあの頭目ザイムが

             障害になるな」


ランジャ「そうだな…

     ピアドは戦った感じどうだった?」


ピアド「速さもそうだけど、

      先読みされてる様な

           違和感があったな」


ランジャ「あいつに人数割くと

           厳しいしなー…」


オットー「そうだな…人員が割れるとな…」 


タマ「心配するな、こいつがやる」


アニト「え?!いや無理だよ!」


タマ「あのガッハッハを練習台に

       実践してみたい事がある」


アニト「やってない事をあの人でやるの?!

          無謀なじゃない?!」


セイナス「そうかなら任せよう」

オットー「頼りなるな」

ランジャ「死ぬなよ」

ピアド「骨は拾ってやる」

キロ「頑張ってね!」


アニト「いやいやいや!」


タマ「という事で来い」


アニト「えー!

      そんなちょっと待ってー!」


ーーーアニトとタマが皆から離れる


アニト「どうすの!無理でしょ!

      あの人、速いから石投げても

          避けられるよ?!」


タマ「だろうな」


アニト「だろうなって!」


タマ「今から言うスキルを取れ

      どんな物か使ってみた上で

             来るまで練習だ」


アニト「なんのスキル?」


タマ「菌を生成するスキルが有ると

     言ってただろ、アレを金で買え」


アニト「そんなんじゃなくて、

         風を操るとかの方が…」


タマ「先を読むタイプのスキル保持者だ

    避けられるな却下だ、

     アイツに殺されたいならいいぞ」


アニト「菌を生成するなんて…

      なんか微妙だけど大丈夫…?」


タマ「スキルの詳細は分からないが

             大丈夫だろ」


アニト「じゃあ信じるよ」


アニト(あ、レベルと俊足のスキルレベル上がってる)

 

アニト Lv58

スキル:麺を一日一本飛ばす 筋力強化Lv5、防御Lv9 俊足Lv3、比較的早く水を水蒸気に変える、スキルを瞬間的なものに圧縮し強化するLv5、爆破Lv4、スキル経験値を貯めてスキルLvを上げるスキル、菌を生成するLv1、スキル購入

経験値106833/109158

残りSP7


アニト「取ったよ」




タマ「どんな感じだ?!」


アニト「うーん…菌を生成して、

     何かに付着させて増やす

      増えた菌は胞子を飛ばす…」


タマ「その菌や胞子に毒性は無いか!」


アニト「弱い毒がある様な無いような…」


タマ「……」


アニト「だ、大丈夫なんだよね…?」


タマ「……」


アニト「どうせウッソー!とか言うんでしょ」


タマ「……」


アニト「…え?ホントなの?」


タマ「とりあえず使ってみるぞー!」


アニト「え?!ウソ!ちょっと!」


タマ「とりあえず、その辺に適当に菌をくっつけてみろ」


アニト「そうだね、じゃあこの辺りに…」


手を地面に付けて、足元に菌の塊を生成すると

 直径10cmの白いカビ菌の塊の様なものが付着する


タマ「……終わりなのか?」


アニト「そうだね…これが増殖するみたいだけど」

 

タマ「増えてはいるな…」

  顔を近づけてジーッと見るタマ


タマ「ゴハッ!ゴホゴホッ!」


アニト「だ、大丈夫?」


タマ「なるほど、胞子を飛ばしているのか

    これだけ至近距離で咳き込む程度か…」


タマ(菌としては強力な気もするが戦闘となると

       微妙だな…どうするか…)


ーーー


ピアド「あんた達!囚人が来たよ!」

離れてスキルを確かめていた二人をピアドが呼びにくる


タマ「来たか!」


アニト「えっ!もう来たの!」


タマ「もう少し試したかったが

         しょうがない!」


タマ「いいか!ガッハッハが来たら

    これから言うことをやれ!」


アニト「え?うんわかった!」



ーーー二人が皆とところへ戻る



囚人がレッドウルフと共に攻めてくる


ランジャ「昨日はしてやられたけど

         今日はやってやるぞー!」


ランジャが先頭を切り、冒険者と囚人レッドウルフがぶつかる


タマ「まばらにバラけて爆破を警戒しているな」


アニト「そうだね、小まめに移動してるみたい」


タマ「いた!あいつだ!誘導するぞ!」

囚人集団の奥に頭目を見つけるタマ


タマ「戦闘から離れて横から犬に石を投げまくれ!」


アニト「うんわかった!」


皆が戦闘している場から離れて側面から

 レッドウルフに向かって爆破石を投げる


頭目「出たか…昨日のケリがついてないからなぁ」


手下「お頭レッドウルフが減らされてる様です」


頭目「ガッハッハ!いいな!俺がアイツを潰す!

          お前が指揮を取れ!」


手下「へい」


頭目ザイムがアニトへ向かって走る


タマ「おい来た!誘導するぞ!こっちだ!」


アニト「う、うん!」


頭目「どこへ行く!」アニト達との差をどんどん詰める


ーーー


周りが大きな岩で囲まれ、少し窪んだ地形の林に誘導する


頭目「こんなところまで逃げてくるとはな

      こんなとこじゃ助けは来ないぞ?」


アニト「た、助けはいらないよ!」

 戸惑いながら石を投げる


頭目「おっと!」

 爆破石を投石する事を知っていた

  頭目が事前に避ける


アニト「はぁ!」

 頭目と自分の間に石を投げ爆破させる


頭目「足止めかぁ!」


相手から見えていない間に圧縮するスキルで

 生成した菌を一気に増殖させ茂みの影に付着させる


アニト「来た!」

 爆煙を大回りしてきた頭目が間を詰める


頭目「この距離なら使えないなぁ!」

 アニトを斬りつける


アニト「あぐっ!」腕で斬撃を耐える


アニト「この!」水袋を投げる


頭目「今度は水の爆弾かぁ!」

 爆発する前に距離をとって避ける


アニト「…!」

また頭目との間に石を投げ爆発させ

 見えていない間に別の場所に

  大量に増殖させた菌を付着させる


頭目「何のつもりだぁ!」


アニト(距離を取って…!)

 アニトが走り移動し、木の陰でしゃがみ

 増殖させた菌を仕掛ける


頭目「ガッハッハ!逃がさんぞぉ!」


ーーー


頭目に斬られては逃げ

 爆破で足止めと視界を遮っては

  スキル効果を圧縮スキルで菌を増殖させ

   茂みや木の影に仕掛ける


ーーー


アニト「はぁ…はぁ…」

 疲労し息が切れる


頭目「もらったぁー!」

 動きの鈍ったアニトを斬りつける


アニト「ぐあぁ!」

 右肩を斬られて腕が上がらない


頭目「何度も何度も逃げやがって…

           ゼェ…ゼェ…」


頭目「こんなに本気で追いかけるのは

    …ハァ…ハァ…ゲホッ」


頭目が息を整えようと何度も深呼吸するが

      息切れが一向に治らない


頭目「ゲホゲホ…ウェゲホッ」

  辛くなり膝をつく


アニト「やっと…」

    傷を押さえ呟くアニト


頭目(なんだ…?)


タマ「ギャッ!ギャッ!ギャッ!

    吸いすぎたみたいだな!」

 タマが飛んできて頭目の姿を笑う


頭目「毒か…!ゴホゴホッ!」


タマ「正確には菌だな!

  もうこの辺りはそこら中ばら撒いた菌で

   蔓延してんるんだよ!」


タマ「お前が先読みできるのは見える未来だけだろー!」




頭目(やたらめったら爆弾を投げていたのは

    菌を飛ばすためか…!クソしてやられた!)


頭目「ゲホゲホッ!ガハッ!」

 咳き込みすぎて呼吸が難しく

  喋る事すらままならず地面に手をつく


アニト「都に引き渡して、罪を償ってもらうよ」

 菌が蔓延した中でも平然を動けるアニト


頭目(こんなやられ方で…!)


頭目「グッ…ゲホッ…グゾォ…!」

   頭目ザイムが倒れて気絶する


ピアド「おい!大丈夫か!」

 二人を探しに走ってくるピアド


アニト「あ!この辺り菌が飛んでるから危ないよ…!」


ピアド「菌?!…通りで鼻にくる匂いがするわけだ…!」


ピアド「よくやったな、ザイムなんて相当な手柄だぞ!

         拘束して離れよう!


ーーーピアドがザイムを抱えて離れる


皆の場所へ戻ると囚人が捕縛され

 治療や応急処置に専念していた


ランジャ「やったのか!」

オットー「ザイムを!」


ピアドに抱えられたザイムを見て

         皆が歓声をあげる


ピアド「大したもんだよ!」

セイナス「まさかだな」


アニト「いやぁ〜偶然ですよ」

           照れるアニト


キロ「先ほど文書が届いて

   ギルドの護送部隊がもうすぐ到着するそうですよ」


オットー「そうか!ではそれまでゆっくり

         休ませてもらうとするか」


ランジャ「来るまで酒で祝杯だぁー!」

 いつの間に用意していたのか

      荷物から酒を取り出す


セイナス「まだ依頼の途中だ、飲むわけないだろ」


ピアド「いい酒だ!」


バッジ「依頼の後の酒はウメー!」


キロ「まだ依頼中ですよ…」


セイナス「…」酒を飲む者を軽蔑した様な目で見る


サイロス「あれが熟練冒険者か!」目を輝かせるサイロス

ミーテア「ああいう所は真似しなくてもいいでしょ…」

サラ「酔っ払ってたらおいて帰られそう」

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