第51話

51


 荒れ狂っている天候と同じように大手門側は、地獄の戦場であった。


 軍楽隊の叩く、戦鼓せんこが更に激しくなっているようマンソンは感じた。


 投石機による攻撃が命中してから、敵の射兵が撃って来る、征矢の数も減りグレコ隊も潰乱かいらん状態であり、まだ隊伍を組み終えられていない。泥水であふれている、ほりに跳ね橋や城壁の破片や瓦礫がれきと一緒に落下した、兵士達を救助しようとしても、鎮圧軍が容赦ようしゃなく征矢をい射かけてくる。


 ろくで無しの将軍はこれを好機とみて、全隊に

 

「・・・今がチャンスぞ!!敵の最前線は混乱状態だ!!一気に攻めのぼるのだ!!!」

 

 先程の誰何すいかと違い、反乱軍が腰砕けになっている状態では、ならず者の兵卒へいそつどもは、進軍していった。


 マンソン自身も決死の覚悟で前進する。愛馬の死骸を捨てく決意をした。


 友軍からの弩隊いしゆみたいからの応射だけでなく、後詰めの前衛から、騎兵が長弓でヒット・アンド・アウェイだが、援護射撃してくれはじめたのも大きかった。


 投石機も連射は出来無いが、初弾命中からすでに数回、監獄に着弾し、頑強な城壁もところどころ、崩れ始めている。


「おおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーー!!」


 吶喊とっかんで最前線を死ぬ気で押し上げる。


んで揉んで揉み上げろ!!あと、50ヤード(約46メートル程)だ!!」


 と、虎皮の襤褸ぼろ外套がいとうを揺らし、蕃刀ばんとうを監獄の大手門に向け、右目に侵入した雨粒を涙とともに、流している、マンソンの横を一陣の飄風ひょうふうが切り裂いた。


 その正体は物凄い勢いで駆ける、2頭立ての駿馬しゅんめに引かれた2乗の戦車(戦闘用の馬車)と一騎の騎兵であった。


 前方の部下の将卒共も一気に追い越していく,一団で何者であろうか?


 マンソンは呆気あっけに取られて、しばし、その連中を注視してしまっていた。


(戦車の本領は広大無辺こうだいむへん野戦やせんの筈なのに、なぜ攻城戦に?)


 彼の理解の外を戦車は大手門に向かって、突撃していった。

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