第45話

 相変わらず霹靂へきれき縦横じゅうおうに走り、雷神と風神が乱闘をしているような空であった。


 尉尉うつうつとした草叢くさむらき分け、二人はようやく、鎮圧軍の中堅の野営地までたどり着いた。


 蟻聚ぎしゅうしてる幕舎は間違いなく、鳳凰ほうおうかたどった意匠いしょうの紋章が、縫い込まれているので、公国陸軍のものとアイバァは、断言した。こういう時彼女は、当意即妙とういそくみょう開物成務かいぶつせいむぶりを発揮するようだ。脳の推察の惹起じゃっきの反射が非常に素晴らしく感じられる。伊達や酔狂で若くして大陸を放浪してはいないらしいと、フェーデは素直に感心する。


「・・・ようやく追いついたわね。しかし、どうやって、エピを見つけるか・・・!」


「俺たちも見つかっったら。捕縛ほばくされるよなあ!?」


「そうね。間違いなくそうなるわね・・・。」


 来てみては良いもののどうしたものか・・・。二人は灌木かんぼく樹叢じゅそううつぶせ、左見右見とみこうみし、今後を思案していた。辺りの水溜まりは,とろくま池塘ちとうの様に参差しんしに立体的で、嵐気らんきかぐわしかった。しかし、軍隊の駐屯地である。邏卒らそつ犇々ひしひしと緊張感をもって、巡回している。


 まるで牛頭馬頭ごずめずの様な猛悪もうあくさで一分の隙も甘さも無いように思える。


 完璧に屯蹇ちゅんけん(行き詰って)してしまった。


 その時、フェーデの肚裡とり猜疑心さいぎしんが生まれた。

 

 彼の眼底に飛泉ひせんのように吸収された光が、流眄りゅうべん(流し目)で、ある不可解な事象じしょう捕捉ほそくした。


 左手奥の天幕が何やら騒がしい。


「・・・あそこのテント、なんか様子が変じゃない・・・!?」

 

 彼の眉目は罅裂かれつし、荒鷲あらわしの様にり上がっていた。


「・・・あれ?そうね・・・!なんか、ありそうね・・・!ちょっと付近まで、物見ものみをしに行ってみる?」


「そうしてみよう。なにか、突破口が開けるかも・・・!」


 二人は、番兵たちに見つからないように、物静かに立ち上がり,くだんの幕舎に遠巻とおまきに、接近していった。幸い、靴音は激しい雨音によって消音されている。


 機銃掃射きじゅうそうしゃのような雨粒が、二人を頭上から踏みにじってるのは、慢性的でかなり体温も剥離はくりされてきているが、そんなことをつぶやいたところで、弱音や甘えにしかならない。


(なんとしてもエピを奪還せねば!!)


 二人の若者は協心戮力きょうしんりくりょくしなければならなった。

  

 不惜身命ふしゃくしんみょう不撓不屈ふとうふくつの心意気で立ち向かうしかない・・!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る