第43話

43


 大型弩砲(バリスタ)の貫徹力かんてつりょくは凄まじいが、小回りがかないのと、連射に向かないのが難点であった。


 さらに、反乱軍にはそれほど、征矢そやに余裕もない。


おそれながら、ブライアン軍曹!敵の最前線の部隊が500ヤード(約450メートル)まで猛進し、接近しております!!」


 一人の伝令が大広間に雪崩なだれ込んで来た。


(・・・社会から沈淪ちんりんしたマンソンも一己いっこの武人として忠烈ちゅうれつに果てようとしてるのか・・・!?)


「よし!!、撃ち方止うちかたやめ!!マンソンには不帰ふききゃくになってもらおう!!」


「ついに・・・!!」


 ブライアンは、威厳を込めて、こう下命した。


「・・・そうだ、ついにグレコ大佐の出陣だ!!、もう魔薬はまれている!!(赤銅しゃくどう魔獣まじゅう)の参戦だ!!!大手門を開け!!弩隊クロス・ボウたい応射おうしゃせよ!!」


「グルウウウウウウ・・・・・・オオオオオオオオオ!!!!!!」


 総身そうしんをドットの紋様もんようが、十数個浮かび上がり、周りの反乱軍の兵士の背丈より、頭、三っつ程抜けて、高い長身を揺らしながら、グレコは意気軒昂いきけんこうとした雄叫おたけびを、上げた!!


 小脇には先程、ブライアンから贈られた丸太が抱えられていた。


 反乱軍の武力の巨擘きょはく(中心人物)は、悠然と歩を進め、睚眥(がいさい)のうらみをも、忘れぬ狂疾きょうしつのように公国正規軍に向けているようであった・・・いな、公国政府かも知れない。


 その背後には、反乱軍の将兵がありのようにすだき、隊伍を組んでいる。


 数は一個分隊約五十といったところだ。


 極端な寡兵かへいだが、贅沢は言ってられない、高潮たかしおのように押し寄せてくる、マンソン隊の防波堤、いや、それをも凌駕する海嘯かいしょうのような、邀撃ようげき(迎撃)を希求ききゅうされる・・・だが、無論、グレコには常態じょうたいの戦場である。


 廻りは闘死とうししていく将卒ばかりでも、天資の体躯たいく忍辱にんにく袈裟けさの精神力で最前線で、生き残ってきた、記憶は幾何いくばくかは、残置ざんちされているのかも知れなかった。


 幽暗ゆうあんとした大地とは対蹠的たいせきてきに、天空には稲光が奔放不羈ほんぽうふきに駆け巡り、雨水は絨毯爆撃じゅうたんばくげきのように、監獄周辺をくじっていた。


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