第4章 古塁の死戦(こるいのしせん)

第42話

42  

 

 軍鼓ぐんこがけたたましく、鳴り響き、戦旗がなわ(蛇)ように、棚引たなびく。


 まさに狂瀾怒濤きょうらんどとうの戦場であった。


 情け容赦なく、矢弾やだまう。さらに、風雨は強まり、真夜中に船の舳先へさきに裸で直立している様な、絶望的な感覚にマンソンはとらわれた。


 ある一定の距離から、大型弩砲(バリスタ)の斉射が、反乱軍から行われ、次々と配下の将卒しょうそつたおれていった。


(やはり、どんどん戦死していく・・・!!あの豎子じゅし(子供)を売り払った金で、娼妓しょうぎでも買おうかと思ったが、そんな暇も無いかも知れんし、最悪な戦場だ・・・。)


 と、最低な事を破落戸将軍ごろつきしょうぐんは、勘考していた。


 ただ、今は突貫攻撃を仕掛け続けねばならない。しなければ、結局、公国陸軍の命令違反という事で、エリオスに鞠問きくもんされ、馘首かくしゅされるだけだろう。


(まさに、クソみたいな状況だ・・・!!)


 が、当然、最終的にはやるしかない!


「下がるな、兎に角、前進あるのみだ!!!もう少し、戦線を前方に押し上げれば、弩隊いしゆみたいの援護射撃が来る!!とにかく、全身全霊で突撃するのだ!!!」


 雨音にさえぎられながら、マンソンはれ声で怒鳴り散らした!!!


 錐行すいこうじんで、監獄の大手門側からの一本道を、正面突破しようとしているのだ、最前線はバタバタと斃死へいししていく。

 

 (まだか・・!弩隊は…まだなのか!?)


 当初は1マイル(約1・6キロ)の距離を半分くらいまで、死戦しせんしながら詰めた、戦死、戦傷者含めて、戦力外になった将兵はもはや、50名以上だろう。


 しかし、前進して血路けつろを開く以外にない!!!


「・・・何たるざまか!!公国陸軍の誇りに掛けて、死に物狂いで前進せよ!!」


 自らも鼓舞しながら,人でなしの将帥しょうすいは、れ鐘の様に大音声で叫んだ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る