第35話

35


 もう土砂降どしゃぶりと言って良い。


「ちょっと、ちょっと待ってくれよ!アイバァ!」


「何やってるのよ!!アンタそれでも運送屋なの?もっと足腰強あしこしつよいかと思ってたわ!それに、エピの里親さとおやにも顔向け出来ないでしょう!!頑張りなさい!!」


(そりゃ、アンタの所為せいだろ)と腹の中で反論したが、水掛みずかけ論になるだけで、面倒くさいので、その言葉を気道の中に逆流させた。


 しかし、この女剣士は精強せいきょう大腿四頭筋だいたいしとうきんを持っているようだ、下半身の筋肉を稼働かどうさせ、ドンドン前進していく。よく言うと前向きというか、悪く言うと、何も考えてないというか・・・。


「・・・かく、あのマンソンとその部下の魔の手から、エピを救出しないと!」


(本来なら、勝手に行ってくれ・・・と言いたいところだが、秘密警察と用心棒の件も有るしなあ・・、そうも言ってられないんだよな・・・。)苦々にがにがしい表情を浮かべながら、能動的のうどうてきに歩を進めるしかない。


 フェーデは自分の無力さをのろった。


 だが、今はこの大柄な女用心棒の後を懸命けんめいに追うしかない。


 これから、自分の過去が意想外いそうがいに判明するとは、誰も予期できなかった。


「ちょっと、早くしないと、置いてっちゃうわよ!!」


 金切かなきこえも、雨音に隠されつつあり、胴間声どうまごえに聞こえてくる。


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