第28話
28
陸軍参謀本部の一階のトイレでビル・ローレンスは小用を足していた。すべての伝令を終え、
そこに、若い二人組の軍人が進入してきた。
「おう、ビル!戻ってきてたのか!」ジェームスが声をかける。
ビルが首だけこちら側向ける、反射的に
「ああ、やっと終わったよ。」
「お疲れ!しばらく見ねえ間に一段と男前になったな!」トムが
「いい加減な事ばっか言ってんじゃねーよ。」
言葉は荒いが、感情は柔く対応し
「そっちはどうだった?」
「ビル・ローレンス
いつもの
「なんじゃあ、そりゃあ?」ビルが呆れる。
ジェームスが「まあ、いろいろあったことは確かな事だ」
と助け船を出す。
トムが急に真顔になって、「そっちの状況はどうだった?」
「ああ、まあ、当たり前だが、みんな殺気立ってたなあ、やっぱ調練とはえらい違いだよ。
人間が生死の
「俺たちは今回が初陣だからな・・。」
ジェームスは厳しい顔に変わった。
「そうそう、もう少しで予定通りいけば、釁端(きんたん・戦争の端緒)が開かれるぞ。」
「最前線はどこになるんだ?」
「灰猫傭兵団だな・・。」
「ああ、やっぱりあそこか・・・。元、
「そうらしいな、一応、トップのマンソン将軍に奏上したが、なんとも不気味な人柄だったな・・。」
洗面所の窓の外は
「いててて!腹が・・・!」トムが
「どうした?」
「用を足してえのに雰囲気で抜けづらくなっちまって・・。」
「あ、もういいよ、行け。」
「わりい。わりい。」
「お前は良いのか?ジェームス?」
「ああ、大丈夫だ。トムが便所に行きたいって言ったから、雑談しながらこまできた
だけだから。」
「なるほど・・。俺はこれからも前線で、伝令をやらなければならない。お前らどうすんだ?」
「エリオス中佐次第だな。指揮官がここで命令を下すならここにいるし、前線に出るなら当然俺たちも、行かなければならない。・・・とにかく、今3人の中で一番危険なのはお前だ。死ぬなよ。」
「ああ、お前らもな。生きてまた酒場で上官の文句でも言い合おうな!」
ビルの後ろ姿には先ほどのトムの「一段と男前になった」と言う言葉がけっしていい加減なものとは思えないと、ジェームスの瞳には映っていた。
この三名の青年軍人たちの
決戦は近い。
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