第27話

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堵列とれつしているとはとても表現できない一団であった。


 隊伍たいごもままならなく、雲霞うんかの如く、個々の主張が激しい。本来ならば、スクワイア監獄に進発しんぱつしていく・・・筈だったが、どちらかと言うと監獄に吸収させられていく、と言ったニュアンスが的を射ていた。


 先頭の馬車の中の首班しゅはんの男が将領しょうりょうの様だが、着ている甲冑が、寄せ集めの物で、いい加減に虎の皮を、外套がいとうの様に、羽織っているのは保温の為というか、伊達を気取っているのだろうか。


 風雨はかなり強くなってきている。一人の将兵が意見具申いけんぐしんしにきた。

 

「マンソン将軍!配下の兵卒へいそつが、「不平不満を口にし始めましたが・・・。」


「俺はいつから将軍になったんだろうな・・・。」


「あの・・・。」


「とにかく、まだ戦闘が始まっても居ないんだ、適当な事を言って、黙らせろ!」


「は!」


 マンソンと呼ばれた男は機嫌が悪かった。昨日の夜に趣味の博打で大敗をきっした後に、今朝早く、伝令が転がり込んできて、急先鋒にてスクワイア監獄に進発せよと、伝えてきたからである。

所謂いわゆる、公国の正規兵でなく、灰猫傭兵団は金が無いと戦う気は皆無である。


 流石さすがにオーヴィル公の直属の廷臣ていしんから、相応の金銭は支払われたが、最前線に立たなくてはならない。正直、不満である。


 「・・・これは徴発ちょうはつだな・・・!」


  馬車の中にひしめき、環囲かんいしている、彼の幕僚ばくりょうたちは背筋を凍らせた。


 「・・・お言葉を返すようですが、マンソン将軍、我が軍は十分、まぐさ、武器、糧食りょうしょく、手配されていますが・・・。」側近の一人が、れ物に触るように、語った。


 「・・・幼児が良いな・・・。童僕どうぼくの需要はいつの世でも腐るほどある・・・!」


 「・・・おそれながら、マンソン将軍・・・徴発で幼児となると、それは拉致らちと、ほぼ同義で・・」

 注進の途中で話頭に首班・・・いや、首領(?)が割って入ってきた.


「おい!貴様!何様のつもりだ!我々は前衛で命を張り続けるのだ!死に兵と同じだ!この扱いは何だ!?オーヴィル公とその幕閣たちめ!」


  正直、皆、元、山賊や囚人のすねに傷を持つ連中である。その場の幕僚たちは皆(ならば、オーヴィル公を誅殺ちゅうさつする為に進軍すればよいのに・・・)と展望てんぼうした。


さらに、どうせ博打に負けて、ふところが寒くなったので、元手が欲しいのが実情だろう、と邪推じゃすいもし、救いようの無い、議論であった。


 この、軍団なのか盗賊団なのか良く分からない集団は、首班だけ無駄に勢いづき、街道を驀進ばくしんし始めた。不毛な行軍であった。


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