第22話

22


 (どう見ても異常事態よね・・・。この感じ・・・。)


アイバァは灌木かんぼくの、下に身をひそめ、色々と熟考している。


スクワイア監獄の大手門の前に、番兵ばんぺいが立っていると言えば、立っている。

しかし、その、二人の衛兵の足元には、赤黒い水たまりがあり、風下かざしものここまで、鉄の匂いが染み渡ってくる。

 

 間違いなく、あのクリムゾンレッドの水たまりの正体は血液であろう。

鬼哭啾々きこくしゅうしゅうとした、どす黒い殺気も、辺りに拡充かくじゅうされている。


(たしかに、若い軍人さんから警告を受けたけど、これは余程、殺伐さつばつとした状況ね・・・。流石にやばいかも・・・。)


 この、豪宕ごうとうな娘も珍しく、危機感を抱いているのだ。

深紅の鉢巻きが汗でにじんでいくのが、自分でも知覚出来るくらいだ。


(あの門番達はおそらく、門を守ってるワケではなく、近づく奴等を要殺ようさつするために、配置っされてるって事よね・・・。今日の獲物は狩れたワケだし、このまま静かにトンズラした方が賢明みたいね・・・。)


 あの、二人の警備兵に喧嘩けんかを売れば、まず間違いなく、監獄内から戦士たちが、大量に流出してきて、捕殺ほさつしようとするだろう。

 

そういう情景が、ありありと想像される、雰囲気が監獄を周匝しゅうそうしているのである。

誰にも気づかれない内に、きびすを返してサッと立ち上がり、エピとフェーデの元に急いだ。

 

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