第11話

栗毛くりげの馬が居た。

 

「おい・・・、友達ともだちってまさか・・・この馬・・・」


っとフェーデとエピが,吃驚びっくりした次の瞬間!!!

 

 なぞ飛翔物ひしょうぶつが、四方八方しほうはっぽうからアイバァを目掛めがけて飛んできたのである。


 しかし、彼女かのじょはまるで、その未来を予知していたかの様な、石火せっかごと軽捷けいしょうさで、


「伏せて!!!!!」


と言うと同時にエピとフェーデの躰におおかぶさったのだ。

殺気の充満した何かは、空気以外の抵抗を受けず直進していった。

 

「え?!?!?、な?!なにが起こったんだ?!?!?!」フェーデが絶叫ぜっきょうした!!


 「今のは一体?!?!?」 


エピも仰天ぎょうてんしている!

 

 (平根ひらねが3本に腸繰わたくりが2本・・・。)独り言の様にアイバァは心の中で、呟いている。この若輩じゃくはいの女騎士は一瞬で、超高速の飛来物が征矢そやで有りオマケにやじりの種類まで、特定したらしい。

 

 文字通りの青天の霹靂へきれきで、5匹の馬は猛烈にいななき始めた。原初的げんしょてきな本能に従順じゅうじゅんな動物なのだ。人間と違い、恐怖にふるえる個体、たけり狂う個体、凄絶せいぜつ困惑振こんわくぶりである。

 

 アイバァは腰の二本の差料さしりょう咄嗟とっさ透波抜すっぱぬいた。見事な身体操作しんたいそうさである。槍術はもとより、剣術も余程のものなのだろう。身をかがめながら、敵の動静どうせい探索たんさくする。


「おい、どうしたんだ!!???あんた、何が一体・・・!!!??」我に返ったフェーデがアイバァに尋問じんもんする。となりでエピも目を白黒させている。


「・・・静かに・・・また、私は君(達)の命の恩人にならなきゃいけないかも知れないって事よ・・・」


 白金の騎士は、衷心ちゅうしん披瀝ひれきした。いつも冗言を語る明朗快活めいろうかいかつの少女の姿はもう胡散霧消うさんむしょうし、そこにはこの大陸を彷徨した、万夫不当ばんぷふとうの戦士の雄姿ゆうしがあるだけだ。



12



 アイバァの持つ剣は長剣と呼ぶには長過ぎるし、短剣と呼ぶには短すぎる。その中間位ちゅうかんくらいの長さとの表現が丁度良い。

 

 しかし、誰であろう???賞金稼ぎなどという、鉄火てっかな職業で飯を食っている以上、命は幾つ有っても足らない覚悟はしているものの、この町に逗留とうりゅうしてからは、ブライアンとのいさかいぐらいだろう。

 

 だが、その時も白金の鎧兜よろいかぶとで、身を固めていた以上、顔は見られていない。しかも、重装騎兵じゅうそうきへいの様な出で立ちの時と、くさり着込きこみだけの軽装けいそうの時は同一人物に見られ無いように人格まで、真逆まぎゃくに変装しているのだ。

 

 まず、露見ろけんする筈が無い・・・と言う自負心じふしんが去来している。


 第2射はまだ来ない・・・。

 

 この虎口ここうを、どうやって切り抜けるか・・・。アイバァのひたいから汗がにじむ。自分一人なら、それ程でも無い。しかし・・・。


  今回はエピとフェーデ、2人の生命も担当しなければならない。

白金の騎士しての自尊心じそんしんが己の保身ほしんのみを許可しないのは、侠勇きょうゆうとしての資質ししつも彼女が持ち合わせているからだろう。

 

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