第222話 伝説?
次は魔法陣も気になるけど、やっぱり壁の絵よね。
「こっちの左半分は地図ですね。地球でも過去にこういった絵地図は使われていたと思います」
む、さすが成績優秀者のナミね。
「そうすると、地形的にこの青い星が至らずの洞窟の場所かしら?」
「他にもいくつか星が散らばっているね」
え?ということは、これって同じようなダンジョンの配置図?
「でも、色がついているのは、至らずの洞窟と思われるこれと、もうふたつだけだね」
「そして、こっちの絵は、物語みたいです」
たしか地球のどこかの遺跡にも似たようなものがあった。ただ、地球の場合は宗教の影響で神話的なものだった気がする。でも、この世界には魔法がある。
「ひょっとして……」
どうやらユキも同じ結論にたどり着いたみたいね。
「朝未とユキさんは何かに気付いたみたいだね。説明してもらっていいかな?」
瑶さんの問いかけにあたしとユキは視線を絡め合わせ頷いた。
「予想されているとは思いますけど、これは2枚で1セットの絵なんだと思います……」
そこからあたしとユキは予想される内容を説明していった。右半分に描かれているストーリー。男女のペアが何かを拾い、戦い、そしてまた何かを拾う。それを繰り返しその途中で何か強そうなものを率いるようになり、巨大な何かを打ち倒し光の中に入っていく。これをあたしなりのユキなりの解釈で説明していく。
「つまり、この絵は勇者と聖女がいくつものダンジョンを制覇していくことを表している?」
「はい、その過程で何らかのアイテムか力か分かりませんが、何かを手に入れていって、これは従者かしら?それとも従魔?それとも仲間?とにかく数を増やしていって、何か強大なものを斃し、光の中に入っていく」
「ふむ、とにかくダンジョンを制覇して仲間を増やし、魔王か人間の国か分からないけど打ち倒すとどこかに行ける?」
「そうですね。ひょっとしたら、その”どこか”は日本かもしれません」
あたしは口にしながら、その可能性は低いだろうなと思っている。そんな単純なものではないと思えるから。
そう、あたしは少しずつだけど、日本に帰ることが出来ない可能性を受け入れてきている。もちろん、帰る事が出来るのなら帰りたい。でも、帰る事が出来ると希望を持って、そして不可能だって思い知らされたなら、あたしはきっと耐えられない。
だから今のうちから覚悟を決めている。きっとあたし達は帰る事が出来ない。
そして、それなら、なおさらこの世界で立ち位置を確保する必要がある。
国に保護された勇者としてではなく、あたし達自身の力で足で立つ。
そんな考えが頭をよぎる。
「とりあえず、指針が出来たね。この地図にあるダンジョンの攻略。そして、この至らずの洞窟の例を引けば何か戦力を底上げするものが手に入る可能性も高い」
あたしの考えをきっと察している瑶さんが、笑顔で口にしてくれた。
「この地図のマーク。色がついているのとついていないのって意味がありそうですよね」
「この濃く色のついている場所はひょっとして」
あたしが首を傾げていると、横からマルティナさんが何か知っているように声を掛けてきた。
「マルティナさん。何か知っているんですか?」
「知っていると言いますか、この世界における言い伝えがあります。この色の濃い場所は聖なる祠と呼ばれている場所に見えます」
「その聖なる祠ってどういう場所なんですか?」
「遠い過去に召喚された勇者が、苦難のすえに聖剣を手に入れたとされる場所。勇者と聖剣伝説の発祥の地です」
マルティナさんの言葉にみんな固まり声を失ってしまった。
え、ひょっとして勇者装備のある場所?ゲームでの定番ならパーティー用の伝説装備が手に入ったりする?
そういえば、ダイさんに渡した盾はここで手に入れたのよね。
それなら、さっき宝箱で見つけたタリスマンは……。
あたしは、タリスマンをマジックバッグから取り出し魔法を使ってみようと魔力を軽く練り上げる。
「朝未、ストップ。考えていることは想像がつくけど、鑑定をしてもらってからのほうがいい」
瑶さんに制止され、魔法の発動を止めた。
「そう、ですね。今リスクを負ってまで実験する必要はないですね」
「そういうこと。とりあえず今は、この地図の写しを作ろう。あとは魔法陣か……」
「多分、これも転移の魔法陣ですよね。さっきの転移の魔法陣とよく似ていますし」
地図のコピーは絵を描くのが得意だということでナミにまかせる。
「はい、完成」
ナミが書き上げた地図は元の絵と寸分違わない見事な出来栄えだった。
「凄いわね」
「ナミは絵画コンクールに何度か入選しているくらいだものね」
ユキが当然と微笑んでいる。
「じゃあ、ここでやるべきことは終わったし、みんなで魔法陣に乗ろうか」
この部屋に来た時と同じように手をつなぎみんなで起動している魔法陣に乗ると、やはり魔法陣が輝き目がくらんだ。
魔法陣の輝きを感じなくなり目を開けると、周囲を見回しあたしは思わず呟いた。
「ここに来るのね」
そこは、至らずの洞窟の結界のすぐ外だった。
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