第214話 ヒントあるかな?

「おめでとう。これからは一緒に活動できそうだね」


3人と合流し、1年。5級ハンターにランクアップしたユキ達3人を瑶さんが祝福している。1級差程度なら、あたし達と一緒に行動しても問題は無い。


「1年で5級なんてってパオラさんも驚いていたわよ」

「1年で4級まで上がった朝未に言われてもね」

「あたし達は、対ヴァンパイア戦があったからね。ボーナス付きみたいなものよ。ユキ達はそれが無かったでしょ」


そう、あれからヴァンパイアはパタリと姿を見せなくなったのよね。伯爵級が最上位とは思えないから、より上位のヴァンパイアは、どこかで何かを企んでいるんだろうけど。


「あ、それとパオラさんがトランルーノ聖王国でまた勇者召還をやろうとしたらしいって話を聞いたわよ」


ナミが爆弾を投げ込んできた


「また被害者?それにしても前回の召喚でトラン周辺の聖なる力が減少してアンデッドが暴れたっていうのに学習しないのね」


召喚者は同郷なら助けるのもやぶさかでないけど、4級ハンターだとまだ正面切ってはいけないのよね。


「いえ、今回は召喚に失敗したというのがもっぱらの噂らしいわね」

「ふーん、じゃあ今回は周辺への悪影響は無さそうなのかしら?」


あら?ナミだけじゃなくユキもダイさんも微妙な顔をしてるわね。


「前回より酷いらしくてね。周辺国に食料の援助を依頼してきているらしいわ」

「トランルーノ聖王国の依頼、ね。それって断ったら軍が狩に行くっていうのがくっついているんじゃないの?」

「朝未、よくわかったわね。似たような脅しがあっているみたいよ」


たかが深山ウサギの毛皮だけでも商業ギルドが慌てるような国の依頼だものね、予想はつくわ。いえ、今考えればあれって国の役人くらいはかかわっていたんじゃないかしらね。そんな国が正式に兵力を前面に出して依頼ってねえ、もう脅しよね。

まあ、あたし達には関係ないでしょうけど。関係ないわよね。100歩譲って食肉の納品依頼くらいなら受けるけど、それ以上の関わり合いはごめんだわ。


「まあ、国同士のやり取りはともかく、これからは3人を含めた6人で活動するということでいいね」

「はい、お願いします」


あたしと瑶さん、マルティナさんの3人は、この1年クリフ周辺での狩りと至らずの洞窟の探索をしてきた。その成果として、以前勇者と聖女が探索したとされる範囲の探索は終わらせている。その先はどうにも手数が足りなくて進めていない。


「ねえ瑶さん。至らずの洞窟の奥なんですけど、昔の勇者と聖女の探索があそこまでだったのはひょっとしたら……」

「記録によると、勇者と聖女の2人だけで探索したらしいから、あれが原因の可能性が高いね」

「強くは無いけど、ちょっと硬くてものすごい勢いで出てくるんですもんね。あの部屋から出てこないから撤退するだけで済んでますけど、あれが外まで出てくるようだと探索自体も辛いですよねきっと」


そんな話をしているとナミが首を傾げて聞いてきた。


「あの、3人が斃せない相手ってどんなのなんです?」


あたし達は顔を見合わせてどう説明したものかと考え、瑶さんとマルティナさんの視線があたしに向いた。


「はあ。あのね、1体1体は大して強くない、いえ、攻撃力は低いというべきね。その代わり少しだけ硬いの。あたし達が1撃で斃せない程度にね。それが大量にいるの」

「大量にって言っても、斃していけば減るでしょ?」


ああなるほど、そういう風に思うわね


「バンバン出てくるのよ。そう、ゲームで言えば無限リポップって感じで、わらわらと、ね」

「うーん、でも朝未の強力な範囲魔法ならなんとかなるんじゃないの?」

「まあ、かなり良いところまで行けたのは認めるけど、奥に入るとさらにリポップが早まるみたいなのよ。たぶんリポップ地点で何かをすれば止まるか、そこを押し切って奥に行けば良いんだと思うから、無理やり突っ込めばそこで何かを出来るかもしれないけど、そこでもし死んだらリザレクション使う余裕も無いだろうしってことで足踏みしてる感じね」


ユキだけはなんとか納得してくれているみたいね。ならあとの説明はユキに任せていいわね。


「まあ、そんなわけでユキ達3人が一緒に行動できるようになったのはあたし達としても渡りに船なの」

「ということは、わたし達も、その至らずの洞窟の探索に加わるってこと?」

「うん。勇者、聖女関係でヒントがあるのは現状、あそこだけだからね。元の世界に帰るヒントのヒントくらいあったらいいなって感じだからね」


あたしが、元の世界に帰るってことを口にしたとたん、ユキもナミも、ダイさんも口を閉ざして目つきが変わったわね。


「わかった、一緒に頑張ろう」

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