第213話 評価

「お疲れ様。目まぐるしくてよくわからなかったけど、凄いって事だけはわかったわ。あれが朝未達の本気なのね」


え、本気って?いえ、まあ本気と言えば本気なのかしら?

あたしが、ナミへの対応に困っていると横から助け船を出してくれる人がいた。


「ナミ、ちゃんとみていたの?朝未は魔法を使ってないわよ。それに見たところ、辺境の英雄たちには補助魔法を掛けていたけど、自分たちには掛けてなかったみたいだし。本当の意味で言ったら戦力を倍にした辺境の英雄たちに自分たちは実力の半分以下で戦っていたんじゃない?」


自分自身も魔法を使えるユキは、気付いていたみたいね。そんなユキの言葉にナミは目を丸くしてあたしと辺境の英雄たちを交互に見ている。


「ね、ねえ。朝未。今の模擬戦って本当にユキの言った通りなの?」

「そうね。おおむねユキの言った通りね」

「なぜ、そんなことを?」

「……そうね。模擬戦はあくまでも訓練だというのはわかるわよね」

「え、ええ、もちろん」

「極論として、相手が目に見えないほど速かったり、逆に子供のように弱かったりしたらどちらも訓練にならないのはわかる?」

「そ、それはまあ……」

「日本でのスポーツの試合でも実力差のある相手との試合ではハンディキャップをつけていたりしたのも覚えがあるでしょ。今回は特に補助魔法で底上げをすることで模擬戦が成り立つ程度にして、辺境の英雄たちだけでなく、あたし達にとっても訓練になるような模擬戦にしたのよ」


あたしがそういうと、ナミはハッとしたように辺境の英雄たちに申し訳なさそうな視線をむけた。

まあ、それだけ実力差があるって言ってるのを真正面から言わせたようなものだものね。


「ああ、ナミさんだったか?気にしなくていいぞ。姐御達が規格外なのは知ってるからな。あれくらいのハンデをもらってやっと鍛錬になるのはわかっている」


レアルさんが手を振りのなんでもないという言葉にナミもホッとした顔になった。


「さてと、途中でも話があったけど、ナミさん、ユキさん、ダイ君の3人は、ハンターランクこそ初心者だけど、あまり森の奥まで入り込まなければ十分にここクリフで活動できそうだね。レアルさん、どう思う?」

「そう、ですね。力はあると思います。模擬戦どおりの力は発揮できれば2層までは3人で行けるんじゃないでしょうか」

「お世辞はいらないよ。命にかかわるからね」

「う、そうですね。単純な戦力としては言った通りです。ただ、経験不足が見え隠れしてましたので1層のそれも浅いエリアでしばらくは経験を積むのが良いんじゃないでしょうか」


強い魔物との戦闘経験自体はあっても、騎士団のバックアップあってこその経験だものね。レアルさんからしたら、そういう評価になるのね。それでもクリフで活動できるって言われるだけの力はあるってことだからこちらに来て1年としては普通なら十分以上に強いのでしょうね。


「さて、ナミさん、ユキさん、ダイ君。聞いたようにレアルさんの評価を基準にしてバランスとしても前衛2人に回復も出来る後衛1人で悪くは無いから、当面は暁影のそらのサブパーティーとして別で活動してハンターランクを上げようか」


レアルさんの評価を聞いた瑶さんがユキ達3人に行動方針を話した。


「あの、ちょっといいですか?」


そこにナミが疑問に思ったようで聞いて来た。


「ナミさん、何かな?」

「あ、あの別で活動する理由を聞いても?どのみち私達って暁影のそらに合流するんですよね」


なるほど、そういうことね。うしろではダイさんも頷いている。ユキだけは頭に手を当てて上を向いているわね。


「ナミ、それは寄生対策よ。そうですよね瑶さん」


瑶さんが答える前にユキが割って入った。うん、このあたりあたしとゲームやラノベで認識が近いユキならでわね。


「寄生対策というか、寄生を疑われないようにかな。どんなに実力があっても私達と一緒に行動していたら、私達の成果を譲っているように思われる可能性があるからね。その対策だよ。なんといっても3人はハンター登録をしたばかりの新人だからね。普通の新人ハンターはクリフで活動なんかできないから」


瑶さんの説明に納得してくれたので、今日はこれまでかしらね。


「あ、そういえば。瑶さん。あの盾ですけど、ダイさんに貸しても良いんじゃないですか?」

「なるほど、私達3人は盾を使わないから、ちょうどいいかもしれないね」


瑶さんの了解がとれたので、あたしはマジックバッグからゴーレムを斃して手に入れた盾をとりだし、ダイさんに手渡した。


「はい、これ使って。多分結構いい盾よ。ダイさんは、あの時に盾も壊しちゃったでしょ」

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