第211話 模擬戦。朝未 V.S. レアル

休憩をはさみながら数回の模擬戦をこなした、ユキ達3人と辺境の英雄たち。

お互いに勝ち負けを繰り返しながら徐々に動きが最適化されてきたわね。きちんとフォローし合っているし、後衛のユキをきちんと守っている。


「ま、今日はこんなところかしら。ね、瑶さん」

「そうだね、5級ハンターパーティーとの模擬戦でこれだけできれば十分かな」


「はーい、みんな。今日はこのくらいでおしまいにしよう。お互いに良い経験になったでしょ?」

「うん、朝未、ありがとう。自分たちの立ち位置がなんとなくわかったわ」


模擬戦のあとは、あたしとユキの治癒魔法で全員の治療を済ませた。

そしてナミはちょっと安心したような表所をみせているわね。そこにレアルさんが近寄ってきた。


「姐御、最後に姐御と手合わせお願いできませんか?」

「模擬戦?」

「ええ、彼らとの模擬戦のお駄賃にお願いします」


まあ、こちらの都合に辺境の英雄たちを付き合わせた形だものね、模擬戦くらいでお礼になるなら良いかしらね。


「良いですよ。1対1?」

「はい、それで、後でパーティーも相手にお願いできますか?」


対パーティー戦かあ。レアルさん達相手で複数相手の経験を積めるならあたしとしても意味あるかしらね。

簡単に準備をして、あたしとレアルさんは武器を構え向き合う。


「じゃあ、瑶さん、合図をお願いします」

「双方構えて、はじめ!!」


レアルさんは手数重視の双剣使い、一気に距離を詰めてくる。以前より速いわね。

あたしも、短剣サイズの木剣を右手に前に出る。以前なら模擬戦でも身体能力頼りのごり押しだったけど、今回みたいなきちんとした模擬戦なら得るものがないと意味がないと思うのよね。まあ、思いっきり振ると木剣なんて1撃で折れちゃうっていう事情もあるのだけど。


というわけで速さも力も抑えめで……。

まずは、レアルさんの剣戟をはじいていく。でも弾くだけだと速さや力を抑えると手数の関係で押し込まれそうね。

なら、ちょっとかえてみよう。レアルさんの剣筋をよく見て、正面から受けるのではなくて、少しずらしてレアルさんの右手に持った剣を側面から滑らせるように、そっと外側に押す。

レアルさんの正面が空いた。


レアルさんの剣を押した反動を利用してそのまま切り込む。

っと、左手の剣がフォローしてきたので、いったん後ろに飛んだ。


「うーん、難しいわね」

「あ、姐御、いったい何したんですか。剣が弾かれるんじゃなくてほとんど空振りみたいに外に流れましたよ。左手の剣が間に合わなかったらアウトでしたよ」

「レアルさんの剣をあたしの剣の外側を滑らせながら外側に押しただけですよ」

「押しただけって、それ出来るのってかなり高レベルの剣士くらいですよ。相変わらず姐御って規格外ですね」


「そんなお世辞はいりませんよ。あたしは目で見て対処しているだけですから。未だに剣の技術ではレアルさんの方が上だというのが、今のでわかりました」

「いや、姐御は俺よりずっと強いじゃないですか」


レアルさんの言葉にあたしは軽く首を傾げる。


「レアルさん。強さと技術は別の物です。同じ人であれば技術が上なら強さも上でしょうけど。でも、別人同士なら技術の優劣だけでは強さをはかりきれないですよ。あたしの強さはある意味身体能力での力押しですから」

「今のが力押しだっていうのなら、それはそれでとんでも無いですけどねっと」


話ながらも、レアルさんの両手が2本の剣を別々の生き物のように繰り出してくる。

さっきは、片方の剣を流して入り込もうとしたところをもう一本の剣に迎え撃たれた。となれば、両方の剣を同じように受け流して等と考えたのだけど、レアルさんもそう簡単に流させてはくれない。

片方だけを受け流すのはそれほど難しくないのよね。でも僅かな時間さで追撃してくる2刀目を受け流すのが中々間に合わない。


もちろん、身体能力だよりのゴリ押しでスピードを上げればどうにでもなるけど、それじゃあ技術じゃないもの。


徐々に小さな動きで受け流せるようになってきている。もう、何回受け流したかわからなくなった頃、僅かに剣をブレさせ身体の動きも最小にして潜り込むことに成功する。追撃の2刀目を更にそっと側面から押すと、レアルさんの身体がわずかに泳いだ。


そのスキを逃すことなく、右手にもった木剣をレアルさんの首筋に添えることに成功した。


「う、参りました」


動きを止めたレアルさんの言葉にあたしも剣を引く。


「ふう、いい練習になりました。レアルさん、ありがとうございます」


あたしとレアルさんは、構えを解き木剣を降ろした。

そんなあたし達に瑶さんが歩み寄ってくる。


「2人ともお疲れ様。いい模擬戦だったね。で、パーティーでの模擬戦はどうする?少々消耗しているように見えるけど」


あたしとレアルさんは顔を見合わせた。レアルさんが少し残念そうな顔をしたけれど、そんな残念がらなくても良いと思うのよね。あたしは軽く魔力を練り上げる。


「レスト、リフレッシュ」


レアルさんをうっすらと光が包む。


「な、疲れが消えた?」


「リフレッシュ」


次いであたし自身にも魔法をかけた。あたし自身は、それほど体力を消耗してはいないけど、いつもより神経を使った模擬戦だったので精神疲労をやわらげるリフレッシュだけ。


「これで、模擬戦くらいはできるようになったと思います」


あ、瑶さん、呆れたような顔をしなくてもいいじゃないの。

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