第209話 模擬戦の舞台は……
「姐御!!」
マルティナさんに迎え入れられ、てやってきたのはレアルさん達辺境の英雄たちだった。
「あら、レアルさん達じゃない。久しぶりですね。それと姐御はやめてくださいって前から言ってますよね」
「久しぶり、じゃないですよ。帰ってきたのなら声を掛けてくださいよ。それに姐御は姐御です」
「ごめんなさいね、ちょっと忙しかったものだから。でも姐御呼びは……、はあ」
そんな話をしていると、ユキの視線がレアルさんの耳と尻尾を行ったり来たりしていることに気付いた。クププ、獣耳男子が気になるのね。レアルさんって見た目はユキのタイプだものね。
「あ、あの朝未、この人たちは?」
「く、くくっ。……、こ、このユキの好きそうな獣耳はレアルさん。で、うしろから来てるのが辺境の英雄たちね。さっき言ってた5級ハンターパーティーよ」
ユキは何かうろたえたように聞いて来たので、思わず吹き出しそうになりながら簡単に紹介をした。
「では、こちらの5人がさっき朝未の言っていた人たちなのね?」
「って、姐御、俺達のことを話していたんですか?」
「ちょっとね。こちらの3人と模擬戦をしてもらえないかなってね」
「はあ、姐御の頼みとあれば、模擬戦程度なんでもないですが。で、そちらの3人のランクは何級なんですか?」
一瞬の沈黙のあと、あたしはそっと呟くように伝えた。
「そ、その今日登録したところ……です」
「は?はぁあ?。姐御、いくら姐御の頼みでも級無しと模擬戦はまずいです。いくら手加減したとしてもしきれるようなものじゃないですよ」
あ、まずいのはそっちなのね。なら
「大丈夫。彼女たちの強さは保証するし、あたしがいるからケガの心配もいらない」
「とはいっても、姐御の治癒魔法はあまり大っぴらに使えるものじゃないですよね」
「そこも考えてありますよ。良い場所があります」
「まあ、そこまで言われるのなら。なあ、みんな模擬戦の協力くらい構わないよな」
あたしとレアルさんの話を聞いていた辺境の英雄たちのメンバーはしっかりと頷いてくれた。
「じゃあ早速ですけど、明日とか予定空いていますか?」
「大丈夫です。ちょうど今日依頼を終わらせたところで、次の予定はまだ入れていませんから」
「なら、明日の朝、街の門で待ち合わせでいいですか?」
「で、姐御、模擬戦は森の中でって事ですか?そりゃギルドの訓練場よりは目立ちませんけど、それでもハンターは来ますよ」
「あはは、レアルさん、ちょっと早とちりですよ。目的地はまだ奥です。レアルさん達も知っている場所です」
そこからしばらく魔物を狩りながら歩き、目的地にたどり着いた。
「って、ここは至らずの洞窟じゃないですか」
「そう、ここの中にちょうどいい広さの部屋があるんです。そこでなら魔法も剣も矢だって使い放題で誰にも見つかりませんよ」
「そりゃ、ここは普通には誰も入れませんからね。でも、そっちの3人は入れるんですか?」
「うーん、多分ね。そのまま入れなくてもあたしがエンチャントすれば入れると思うんですよね」
「思うって、まあここまで来たんです。試すだけなら大した時間も掛かりませんしいいでしょう。中に入れたら、その姐御が見つけたって言う部屋で模擬戦でもなんでもやりますとも」
「うん、じゃあ、ユキ、ナミ、ダイさん、ここについて簡単に説明しますね」
そしてあたしは、この至らずの洞窟について辺境の英雄たちの前で説明して良い部分を抜き出して話した。
「じゃあ、この中には聖女の魔力が無いと入れないって事?」
「ダイさん……」
「こらダイ、NGワードだよ」
「何がだよ、ユキ?」
「魔力の事は口にしたらダメだって」
「ああん?だけど、ここにいるのは朝未が聖女だって知ってる人間ばかりだろう?」
ユキは探知魔法を覚えたことで口に出すことの危険さに気付いてくれたみたいね。
「あのね、この世界には探知魔法があるのは知ってるわよね」
「ああ、魔物に先制出来て楽だよな」
あ、ユキが頭を抱えた。しかたないわね、あたしが教えてあげよう。
「探知魔法には色々とあるって言ったでしょ。その中に風属性のウィンドイヤーって言う探知魔法があるんだけど、これは遠くから音や声を拾えるのよ。あたしなら3キロ先の話でも立ち聞きできるわね。いや、今のあたしならもっと遠くまで届くかも?まあ、そこはいいか。つまり何が言いたいかと言うと、口に出したら離れたところからでも聞かれる可能性があるってこと。特にこういうオープンスペースでは気をつけて」
「う、わ、わかったよ。これからは気を付ける」
まあ、あたしみたいに遠くから探知できる人はそういないけど、それは言わない方がいいわよね。
「まずは、実験からよ。ユキ、ナミ、ダイ、そのまま洞窟に入れるか試して」
あたしの指示に3人は恐る恐る洞窟に近づいていく。でも、あと少しと言うところで進めなくなった。
「ダメかあ」
つまり洞窟に入れる基準は異世界人ではないってことね。
「なんだよ、ここ。なんかぶにょんとした障害物で進めないぞ」
「それがこの洞窟の名前の由来よ。入れないから至らずの洞窟って言うの」
ダイに説明した後、あたしは深呼吸をして、魔力を練り上げる。
「さ、みんなあたしの近くに来て」
そしてあたしが魔力をエンチャントし、みんな一緒に洞窟の中に入ることが出来た。
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