第208話 基準は?
「はい、ユキ様、ナミ様、ダイ様の3人を新規にハンター登録と同時に暁影のそらのメンバーへの登録確認いたしました。暁影のそらは4級ハンターパーティーですが、新規登録となりますので、ユキ様、ナミ様、ダイ様は級無しからのスタートとなります。ハンター登録についての説明は必要ですか?」
「いえ、大丈夫です」
あの話し合いから1カ月。3人は瑶さんの言う条件を満たしハンター登録をし、正式に暁影のそらのメンバーとして登録をした。
その条件は、この世界の言葉、正確にはベルカツベ王国の言葉を覚えること、最低限の読み書きができるようになること、それと名前を変えること。
そうして魔法道具の力を借りることなく最低限の活動が出来るようになったと瑶さんが判断したところでハンターギルドでハンター登録と、あたし達暁影のそらへの加入登録をした。
「さて、これで3人もハンターなわけだけれど、まだ問題はあるからね」
「問題ですか?」
「問題って、言葉も通じるようになったし、必要な読み書きも出来るようになった。俺たちの戦力も影井さん達には及ばないにしても、弱くは無いだろう。どんな問題があるっていうんだ」
真奈美あらためナミが小首を傾げ、大地さんあらためダイがは分かりやすく反発しているわね。小雪あらためユキだけは理解しているようでため息をついている。これはきっとファンタジー小説の読み込み具合の違いね。
「ハンターランク、ですね」
「そう、私達は、この1年実績を積み重ねて4級ハンターになった。そして君たちは戦闘力は並みのハンターには負けないだろうけれども、残念ながら実績が無いため級無しからスタートだ。これが意味するところは知っているかな?」
「ファンタジー小説定番なら受けられる依頼のランク、ですか?」
「そう、現時点では君たちが受けられる依頼は簡単な採取依頼程度。私達と合同で上級の依頼を受けるというのも難しい」
「となると、わたし達がランクを上げるしかないですね」
「でも、低いランクの依頼しか受けられないんだろ?そのハンターランクって言うのは簡単に上がるのか?」
「聞いたところ、真面目にやれば普通は9級までは大体1、2か月、1年で8級、そこから2年くらいで7級。大半のハンターは7級で足踏みするそうだ。そして、そこから抜け出す1部のハンターが3、4年で6級、この辺りでもうほとんどのハンター達が上れなくなる。そしてさらに一握りの抜け出したハンターがそこから数年かけて5級、4級になるらしい」
「そんなこと言ったら4級ハンターになるのなんて10年かかっちまうじゃないか」
「……、あら、でも朝未と影井さんは1年で4級まで上げたんですよね。と、いうことは何か方法はあるって事ですよね?」
「今からその話をしようと思っていたところだよ、最上さん。いやナミさん」
瑶さんの言葉に、3人は頷いて瑶さんに注目している。
「まず、言っておく。これは普通の新人ハンターがやるような事じゃない。最低でもこのクリフで適切に活動できるだけの力があることを前提にしているからね」
「えと、クリフで活動できる力って言われても具体的にはどのくらいですか?」
「最低でもハンターランク5級パーティーとしての力が必要です」
ナミの疑問にマルティナさんがさらりと答えた。
「5級……。って言われても、実感が無いんだけど」
「そうよね。3人はこの世界の人とまともに付き合ったことないんだものね……」
しばらくいい手が無いかと考え、ふっと気づいた。
「そうだ、レアルさん達に頼もう。うん、それがいい」
「レアルって、あの朝未の子分のレアル?」
「子分なんかじゃありませんよ。瑶さんだって知ってるでしょう。じゃなくて、レアルさん達のパーティー辺境の英雄たちは5級ハンターパーティーです。ひとつの基準になってもらうには丁度いいんじゃないかと思うんです」
「基準になってもらうって狩の様子でも見せる?それとも模擬戦でもさせるの?」
「模擬戦が良いと思うんです」
「模擬戦ねえ。でも朝未、辺境の英雄たちって物理だけのパーティーだよね。3人とは戦い方がかみ合わないんじゃないかな?それじゃあ、強さの基準を掴むのは難しいんじゃないか?」
「わかってます。普通の模擬戦での手合わせじゃあ実感しにくいってことは」
「それじゃあ……」
「だからガチでやってもらいます。双方本気で、矢も魔法もありの実戦形式で」
「いや、朝未、それはさすがに無茶だよね。それだとケガで済めば良いけど、下手をしたら死人が出るよ」
「大丈夫です。あたしがいますから。さすがに死ぬまでってのは言いませんけど、もしもの時にはあたしが全回復します」
「えと、朝未ちょっと不穏な雰囲気の会話だったんだけど、説明してもらっていい?」
「もちろん、説明するよ」
ユキが不安そうに聞いて来たので説明を……
「ダンダンダン」
説明をしようとしたところで玄関を激しくノックする音が聞こえた。
みんなの視線があたしに集まる。
「いや、探知魔法は展開してますよ。実際、人が近くに来たのは知ってましたし。でも、悪意が感じられなかったので言わなかっただけです」
「朝未様が、そういうのなら危険は無いでしょうね。わたしが出ます」
そう言ってマルティナさんが玄関に向かった。
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