第207話 今後の方針
多少の行き違いはあったものの、3人用の家具は7日で揃った。
「さて、これで3人もこの家に住めるようになったわね」
あたしが見回すと、みんな頷いている。今は家のダイニングで全員揃って今後の事を話し合おうと思っている。
「でも、いいの?お金、全部朝未達が出してくれたけど」
真奈美は、まじめだものね。気になるかあ。
「そこは、必要経費よね。そんなに高いものを選んだわけでは無いし。もっと高級なものが欲しくなったらその時には自分で買ってもらうことになるけど。それでどうする?」
「どうって?」
「これからの方針ね。あたしと瑶さんは、マルティナさんに協力してもらって、今まで通りハンターとして活動しつつ日本に帰る方法が無いか探るつもりだけど」
「これからの方針かあ」
真奈美は、そう言うと小雪と大地さんに視線を向ける。
「そう言われても、あまりに目まぐるしく変わったからわたしとしてもどうしたら良いのか……。ところで朝未達は日本に帰る方法について何か手掛かりあったりするの?」
「今のところは何も良い情報はないわ。むしろ、その……」
あたしは言い難くなってそれまで黙っていてくれた瑶さんに視線で助けを求めた。
「今のところの情報としては、過去に召喚された勇者は誰も元の世界に戻れていないらしいということだね」
「え、1人もですか?」
「そう、1人も。そもそも帰還の術式の存在も見えて来ていないんだよ」
「そ、それって帰ることが出来ないって事ですか?」
瑶さんの言葉に3人とも青くなっているわね。あたしにも覚えがある。この事実は絶望を感じさせるもの。
「帰ることが出来ないと決まったわけでは無いよ。ただ、過去に実績が無いから可能性を探すところから始めているのが実情だね。朝未は、召喚術を解析したいって言ってたこともあるけど、それは国家機密みたいで簡単に見ることは出来ないみたいなんだ」
「召喚術を解析?そんなこと出来るんですか?」
「わからない。私は基本的に物理アタッカーだからね。魔法の事はよくわからないんだ。朝未、どうなんだい?」
「えと、何もないところから考えるよりずっと可能性はあると思います。召喚するってことは向こうの世界と繋いでいるはずなので、それを逆に動かせば良いんじゃないかって思ってるんですけど、それにしても召喚術自体を確認できないと想像でしかないので……」
「と、言うわけなんだよ。ただ、さっきも言ったように召喚術自体が簡単に見られるものじゃなくて、それこそ国相手に国家機密を開示させるようなものってところが現状ではネックだね」
「国家機密って。それじゃあやっぱり無理なんじゃ?」
「……。ねえ安原さん。ハンターランクって知ってる?」
「え、ええ。ハンターの強さの証明みたいなものですよね」
「そうだね、そうとも言えるか。まあ、正確に言えば、それまでの活動実績による格付けなんだけどね」
「はあ、国家機密からいきなりハンターランクに話が繋がる理由がわからないんですけど」
「このハンターランクが上がると国や神殿に対抗できるんだよ」
「え?それじゃ国に召喚術を開示させることができるんですか?たしか影井さんも朝未も4級ハンターでしたよね」
あ、瑶さんが苦笑しているわね。
「真奈美、4級じゃ無理よ。なんであたし達が色々と隠してハンター活動をしていると思う?まだ国家レベルの権力には対抗できないからよ。4級ハンターは一般のハンターとしてはほぼ最上位だけど権力としては、せいぜい地方領主相手がせいぜいね。上位の貴族と対等に話すなら3級。国と交渉するならせめて3級上位か、できれば2級以上はほしいところよ」
「えと、3級とか2級って簡単になれる……、わけないわよね」
「聞いた話だと、3級がこの世界で12人、2級は1人だけ、1級は今はいないそうね」
真奈美の問いかけに、肩をすくめてこたえる。
「もう、ほとんど不可能なレベルじゃないの」
「でも、可能性はゼロじゃないわ」
「時間はかかりそうね」
「それでも、やるだけやらないで諦めるのは嫌よ」
それに、異世界を繋ぐのなら、時間だって超えられるかもしれない。あたしはそっと心の中でつぶやいた。
「わたしは、朝未達の仲間に入れて欲しい。身体能力は一般人よりちょっと良い程度だけど、魔法は大分上手になったつもり。きっと役に立って見せるから」
そこに小雪が参加表明をしてきた。
「私も可能性があるのなら協力したい、いえ、仲間に入れて欲しい。大地はどうするの?」
「俺は、難しい事はわからない。わからないけど、元の世界と比べて強くなったこの身体があれば役に立てることもあると思う。なので仲間に入れて欲しい」
「あたしは、このベルカツベ王国でなら3人を仲間に入れてハンターランクを上げていくのは悪くないと思います。瑶さんとマルティナさんはどう思いますか?」
「わたしは、朝未様のご意向に従います」
マルティナさんはいつも通りね。
「うん……。私は条件付きの賛成かな」
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