第189話 ゴーレム
「瑶さん、あの石像って」
「まあ、こんなところに単なる飾りで石像が置いてあるとは思えないよね」
「どういう意味でしょうか?」
あたしと瑶さんの会話にマルティナさんが不思議そうな顔をしている。
あたしや瑶さんだとものと世界でのゲームやラノベ知識がこういう発想のもとなのでマルティナさんと感覚が共有しにくいのよね。
「あの石像が魔物の可能性があるかなと思ってね」
それでも一応瑶さんが説明してくれた。
「あの石像がですか?だとすると、わたし達の武器とは、少々相性が悪いですね」
「まあ、そうだね。シルバーメタル製になっているし、エンチャントも行うから丈夫にはなるし、威力もあるけど私達の武器はどれも刃物だからね」
「それでどうするんですか?」
「朝未、この穴から魔法を撃てないかな?」
瑶さんの問いかけに、あたしは穴を確認する。このくらいならいけるかしら?でも……。
「もう少し大きくした方がやりやすそうですね。少し離れてください。……ストーンミサイル」
魔法で広げた穴の様子を確認して、うん、このくらいなら良さそう。
「これなら十分に撃てます。ホーリーレイあたりにします?」
「今の朝未のホーリーレイだとオーバーキルな気がするけど……」
「ホーリーレイは聖属性魔法ですから過剰でも魔物や魔獣以外への被害がありませんから、いいかなって思うんですけど」
「ああ、そうだったね。うん、ならホーリーレイで」
瑶さんと軽く打ち合わせをして撃つ魔法を決め、今度は壁の穴を通して石像を狙う。
「ホーリーレイ」
しばらく観察をしていても何も起こらない。
「何も起きませんね」
「変化なしだね」
「単なる石像なんでしょうか?」
そんな話をして、どうしたものかと考えていると、瑶さんが口を開いた。
「朝未、こういう時は物理だよ」
「え?壁を壊して攻撃に行くんですか?」
「いやいや、ストーンミサイルなら魔法だけど攻撃としては物理だよね」
ああ、なるほど。お話の中でも魔法とは言いながら癖のない物理的な攻撃手段になっていることが多いわね。属性攻撃が効かないなら物理が基本なのは確かでもあるし、ストーンミサイルなら遠距離で打ち込めるから安全性も高いものね。
あたしは、頷いて、石像に狙いを定める。
「ストーンミサイル」
魔力を込めた石の矢が高速で石像に向かって飛ぶ。狙いは胸元。
当たると見えた瞬間、石像が動いた。さすがに避けることは出来なかったけれど、両腕を交差させて身体への直撃を防いだ。
「やっぱりゴーレム系の魔物だったみたいだね」
胸部を守った代償に両腕の肘から先を失ったゴーレムが、ようやく立ち上がってきたのを見ながら瑶さんが頷いている。
「胸部を守ったってことは、あのゴーレムとしては、あそこを壊されるのはまずいって事ですよね」
「まあ、そうだろうね」
「そして、今となっては胸部を守るための腕はもうありません。ですから、もう一度ストーンミサイルを打ち込めば……」
「そう、だね。幸い、ゴーレムは動きがそれほど速くない。ここに辿り着くまでには何度か魔法を撃つことが出来そうでもあるし……。朝未、やってみてくれるかい」
「はい。ストーンミサイル。……え?」
カキンという甲高い音に、ストーンミサイルが弾かれた。
「瑶さん。全然弱点じゃないですよ」
「いや、むしろ私はあれであそこが弱点だと確信したよ」
「え?」
「弱点だからこそ、防御を堅くしているんだと思う。でも、短時間であの装甲を抜くのは難しそうだから、朝未、足を狙って」
「え?あ、はい。ストーンミサイル」
脚部を狙って撃ったストーンミサイルは、ゴーレムがわずかに避けようとしたため、芯をはずしたものの人で言うところの右足太腿を大きく抉り取ることに成功した。
止める事こそできていないけれど、ゴーレムの動きがぎこちなくなり、速度がおちたのがはっきりとわかる。
「朝未、もう一度」
「はい、ストーンミサイル」
もう一度同じ場所を狙ってストーンミサイルを撃つと、動きの鈍っているゴーレムは今度はまったく避けることが出来ず、右足を吹き飛ばすことが出来た。
片足を失ったゴーレムは、完全にバランスを崩しガツンガツンと重たい音を響かせながら倒れる。
「これなら壁を壊して中に入って止めをさせますね」
「待った。壁を壊すのは止めをさしてからにしよう」
壁を壊そうとするあたしを瑶さんが止めた。
「え?もう安全じゃないですか?」
「一見安全にも見えるけど、ゴーレムだからね。止めを刺した瞬間に爆発とかされると面倒だよ」
あ、そうね。この世界のゴーレムがどういったものかはわからないけど、最悪自爆装置とかついている可能性もあるのよね。
そのとき、間に壁が在るか無いかは被害の大きさに大きく影響するわね。
「わかりました。ストーンミサイル」
やっぱり胴体は堅いわね。
結局、そのあと十数発のストーンミサイルを撃ち込みゴーレムに止めをさした。
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