第168話 アンデッド討伐作戦開始
「ミーガンさん、ハンターギルドからのお話……」
「ああ、聞いてます。なんでも、クリフ周辺の安全のために朝未様たちの力を借りたいとのことですよね。ハンターギルドからお話が来てました」
本当に話は通っていたみたいね。
「それじゃあ、ミーガンさんがクリフに滞在している期間をめどに、周辺のアンデッドの駆除をするということでいいでしょうか」
あたし達は、ミーガンさんの許可を確認して、北門にむかった。そこで”辺境の英雄たち”と合流することになっている。
「あ、姐御ー!!」
いきなりレアルさんが走ってきた。適当にいなしながら挨拶をはじめる。
「おはようございます。しばらくよろしくお願いいたします。でも、あたし達と知り合いってだけでみなさん貧乏くじですね」
苦笑しつつ言うと、メンバー5人全員がとんでもないと首を振った。
「姐御。オレ達、姐御達と一緒にギルドからの依頼を受けられるのは嬉しいんですよ。姐御達の役にたてるように頑張ります」
「そうなんですか?今回なんか、少し危険度の高い依頼ですけど」
「わかってます。でも、この程度姐御たちと組めるなら安い物です」
ちょっとレアルさん冷静さが足りない気がするのだけど大丈夫かしら。
「頑張ってくれるのは良いですが、無理はしないでくださいね」
「大丈夫です。オレ達も5級ハンターパーティーです。確認されている実体系のアンデッドなら十分に対応できます。姐御たちは非実体系のアンデッドに集中してください」
そうだったわね。こう見えて彼らも上級ハンターなのよね。
「わかりました。お願いしますね」
そしてあたしは瑶さんとアイコンタクトで相手を代わってもらう。
「じゃあ作戦を説明する。アンデッドが森から出てくるという話なので、まずはアンデッドを森からおびき出す。そして少し引いた位置で間引きをする。陣形は私達暁影のそらの3人を先頭に、辺境の英雄たちは少し引いた位置で左右に分かれ、後方からアンデッドが周り込んで来ないようにサポートを頼む」
「あの、質問良いですか?」
瑶さんの説明に手を上げて質問をしてきたのは、たしかケヴィンって言ったかしら。辺境の英雄たちのスカウトね。
「うん、疑問点は今のうちに確認した方がいいから自由に聞いてくれていいよ」
「では、失礼します。まず、アンデッドをおびき出すと言われましたが、どのような方法でおびき出すのですか?普通の攻撃が届くような場所まで近づいてしまってはとんでもない数のアンデッドが寄ってきてしまいます」
「……、うーん。君たちは朝未の力について秘密を守ってくれているから信用してきてもらっている。だから話すし、実際に見せるわけだけど、他言無用だよ」
瑶さんが見回すと辺境の英雄たちのメンバーは真剣な顔で頷いているわね。
「私も朝未も、離れていても魔物の位置を把握できる。能力的には朝未の方が上ではあるけどね。その能力を使って最適な位置から朝未が攻撃魔法を撃って挑発する。そうして、釣りだしたアンデッドを順次斃す。言ってしまえばこれだけの事だよ」
「それだけって、魔物の知覚範囲外から有効な威力の魔法が撃てるんですか?」
「できますよ。あたしの魔法はちょっと特別みたいなので。まあ、疑うのも分かります。エルリックでニコレッタさんの魔法を見せてもらいましたけど、あれが当たり前の上級魔法使いの魔法と聞きましたので一般の人には想像も出来ないと思います。まあ、百聞は一見に如かずです。行ってみましょう」
ま、この世界の魔法の常識からしたら、あたしの魔法は常識の外にあるものね。
「この辺りで良いかな、朝未?」
「そうですね、もう少し北の方がスムーズに釣れると思います」
あたしと瑶さんで場所を決め、いよいよ久しぶりにクリフでの纏め狩りね。
「では、陣形を整えて……。いきます。あ、先に補助魔法を」
全員に補助魔法を、そして瑶さん以外の全員の武器防具にエンチャントをする。
「え、凄い。力がみなぎる。視界がクリアに……。しかも、この武器防具」
「聖属性をエンチャントしました。効果継続中はアンデッドへのダメージが大幅に上がりますし、アンデッドからの攻撃を大幅に軽減します。ただし、効果が切れると普通の武器防具ですからね、切れる前にあたしのところに来てくださいエンチャントしなおします。じゃあ、こんどこそ行きます。ホーリーアロー」
あたしの放った聖属性の矢が森の中に吸い込まれて行く。そして数瞬後、最初のアンデッドの群れが森から現れた。
「ほ、本当に釣りだした」
辺境の英雄たちの驚く声を聞きながら、あたしはショートソードを構えた。総数が不明だから魔力は多少温存したいし、一応クリフから視線が通っている状況で派手な魔法は控えたいものね。
「さあ、ここからが本番ですよ」
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