第159話 MPK(対盗賊)
結局ミーガンさんは、あたし達のマジックバッグも活用して高値で売れそうな消耗品を大量に仕入れたうえで、クリフに向かうことに。当然あたし達が護衛。
まずはグライナーに向かう。
「前回は、たしかこの辺りで盗賊に襲われたんですよね」
「まあ、朝未の探知魔法で先に見つけたから被害はなかったけどね」
「そうですか。では、気を付けていきましょう」
「え?盗賊は殲滅したんですよ」
「ええ、別に朝未様や瑶様の言葉を疑っているわけではありません。盗賊団というものは、1ついなくなれば、空いたなわばりに別の盗賊団が入ってくるものです。もともと盗賊団が居たということは、そこに居やすい理由があったはずなんです。ですからそこが空けば、もっと居心地の悪い場所にいた盗賊団が移ってくるんです」
「うわあ、つまり盗賊を退治しても無駄ってことですか?」
「いえ、さすがに無駄ということはありません。まず、他から盗賊が移動してくるまでの間は安全です。そして、頻繁に盗賊を討伐していると、盗賊側からすると危険地帯という認識になるようで盗賊が居つかなくなりますので。例えば王都への主街道などは王国騎士団が頻繁に掃除をすることで安全性が非常に高いですね。ま、そういうのは国や領主様の領分です私達がどうこうするものではありません。逆に言うと危険な街道の先では商品価格も高くなるので、そこで商売ができれば大きな利益も見込めるんですけどね」
ミーガンさんがいたずらっぽくウィンクした。
まあ、そうよね。街道の警備なんて個人がどうこうするものではないわね。
で、やっぱり探知魔法に反応がある。マナサーチとマインドサーチに距離重視で魔力をつぎ込んでいるので距離はまだ2キロ以上ある。それでも瑶さんとマルティナさんには話しておかないとね。
「瑶さん、マルティナさん。2キロくらい先に盗賊と思われる反応があります」
「人数は?」
「14人です。本人たちは藪の陰に隠れ街道に障害物を設置して、馬車を止め、左右から陽動として5人ずつで襲い掛かって、本命の4人が後ろから挟み撃ちにするつもりのようです」
「多いな」
「あら?」
「朝未なにかあった?」
「え、ええ。魔物の群れが探知範囲に入ってきました」
「種類と数はわかるかな?」
「数は、16、いえ18体。多分ゾンビとスケルトンだと思います」
「アンデッドがこんなところまで?位置は?」
「このままだと、盗賊と接触する少し前に接敵します」
「両方を一度に相手にするのは避けたいな」
「そう、ですね。負けることはないでしょうが、万が一護衛対象のミーガン様や馬車に被害があるといけません」
瑶さんもマルティナさんも考え込んでいるわね。
「あ、あの。どちらもあたし達が相手をする必要はないんじゃないでしょうか?」
「うん?朝未どういうことかな?」
「あの、幸いにしてというか、あたしの探知魔法で魔物の位置も盗賊の位置も分かります。なので、こんなふうに魔物の周囲に魔法を打ち込んで、盗賊が潜んでいる場所に魔物を追い込めば、あたし達は生き残った方とだけ戦えば済みますよね。いえ、場合によっては両方が逃げ出して戦う必要もなくなるかもしれません」
あたしの提案に、マルティナさんは目を見張り、瑶さんは苦笑している。そしてボソリと瑶さんが一言こぼした。
「MPKか……」
「瑶さん、やっぱりゲーマーね」
「あ、まあいいじゃないか」
「以前から気にしないって言ってるじゃないですか。それより、この案はどうでしょう?」
「そうだね。打ち込む魔法と、その打ち込む場所、タイミグ。どれも普通なら簡単じゃないとは思うけど、朝未の探知魔法があればどれも良い感じに出来そうだね」
「それじゃあ……」
「うん、その案でいこう。それで、さっきの朝未の案だけど、ここじゃなくて、こっちとこっちから爆発系の魔法で追い立てる感じにしてくれるかな。で、そうすると多分隠れている盗賊も魔法の爆発に驚いてこっちに移動すると思うので、追加でこのあたりに……」
「瑶様。盗賊に身を持ち崩した者たちは、瑶様や朝未様のような的確な判断は出来るものではありません。慌てて右往左往するのがせいぜいかと……」
「じゃあ、一応予定ではここで、もし盗賊が動いたら、こっちで……」
あたしの簡単な案を瑶さんとマルティナさんが細かく修正してくれる。そしてミーガンさんに頼んで馬車の移動する速さも調整。
「朝未、ここから予定の場所に魔法は届くかな?」
「ええ、余裕です」
「いいね。ミーガンさん、ここでいったん馬車を止めてください。ここから魔物に魔法を打ち込んで盗賊に押し付けます」
瑶さんが指示した場所に、威力より音や爆風の派手さを重視したファイヤーボールを打ち込む。破壊力を必要としないので派手な割に魔力は使わないし、ポンポンと連発が出来る。予想通り魔物は低位のアンデッドの群れね。
「おお、いいね。良い感じに魔物が盗賊のいる方向に逃げ込んでいくね。盗賊の方は、まだ動かないか。マルティナさんが言うように判断が遅いな」
そんな瑶さんの感想を聞きながらも魔物の動きに合わせて魔法を打ち込む。
「そろそろ、魔物の群れと盗賊が接触しますね」
「うん、朝未。魔法はそこまでで。あとは様子をみるよ」
瑶さんの合図で、あたしも魔法を撃つのをやめて様子をうかがう。
ほどなくして、盗賊は魔物たちに包囲され、その数をどんどん減らしていく。そしてさすがに魔物も無傷というわけにはいかず、盗賊が全滅した時には18体いたアンデッドの群れが13体まで減っていて、残ったアンデッドも大なり小なりダメージを受けていた。
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