第157話 クリフへの護衛依頼
「それで、ミーガンさんは、これからどうするんですか?」
「それなんですよね。皆さんの予想ではトランルーノ聖王国近辺は危ないんですよね」
「そう、ですね。今は私達がヴァンパイアを討伐しましたから一時的にアンデッドの勢力が衰えていますけど、あの時戦ったヴァンパイアの言葉からして、より上位の個体がいるのは間違いないでしょうから」
「皆さんでも手に負えませんか?」
「それは……」
ミーガンさんと話をしていた瑶さんの視線があたしに向く。
「あたしは、相性がいいですから、まだ余裕ありました。それに色々制限なしでやっていいなら……。わかりますよね」
聖属性魔法を制限なく使っていいならあたしはかなり相性がいい。あの時は範囲魔法のホーリーを使ったけど、対単体アンデッドならホーリーレイの方が効果が高いはず。それで足りなければ、まだ使ったことはないけれど、より上位にジャッジメントや、ジャッジメントアローもある。
「わたしは、アンデッド相手だと相性があまり良くないのですが、それでもまだもう少し大丈夫だと思います」
あたしは、アンデッド相手なら相性最強だもの。マルティナさんもまだ余裕があったのは見ててもわかったしね。
「私自身も、まだ余裕がありましたから、あのレベルなら、いえ、あれより多少は上でもまだ対応出来ると思います。ですが、どこまで対応できるかは……。そもそも、男爵級とより上位のヴァンパイアの強さの違いもよくわかりません。ですから必要でなければ避ける方向ですね」
あたしとマルティナさんの言葉に瑶さんは瑶さん自身のことも加えて話した。
「あたしも、勝てるから戦うというのはちょっと違う気がするんですよね。あたし達はあくまでハンターです。ヴァンパイアを狩って欲しいという依頼があるわけでもない。ヴァンパイアを狩っても手に入るのはヴァンパイアを斃した事実とちょっと高品質な魔石だけですから」
「多分上位のヴァンパイアを斃した場合は、報告すれば報酬が出るとは思うけどね」
「え?瑶さんなんで?」
「男爵級ヴァンパイア討伐報告で報酬もらったよね。と、なればあれより上位なら出ると思うよ」
あたしは思わず手をポンと打ち合わせる。
「なるほど。そういえばそうでしたね」
「でも、探してまで討伐に向かうほどじゃないかな」
瑶さんがハハハと笑った。
「あの、随分と軽く話されますけど、ヴァンパイアってかなり上位のアンデッド、ですよね?」
ミーガンさんが不思議そうに聞いてきた。
「まあ、なんと言いますか。あたし達はアンデッドと相性がいいんです」
「相性ですか?」
どうしようかしら、ミーガンさんになら話してもいい?瑶さんを見ると苦笑しながら頷いてくれた。
「ミーガンさんは、気付いているかもしれませんが、あたしは聖属性魔法が使えるんです」
「あ、やっぱりそうなんですね。じゃあ、初めてお会いしたあの時エルリを治療していただいたのも……」
「あー、その。あの時のも多分聖属性魔法のヒールだと思うんですけど、あの頃は意識して使っていたわけではないんです」
「じゃあ、朝未様は1年たたずに、聖属性魔法でのアンデッドへの攻撃が出来るほどになったんですか」
あ、ミーガンさんが驚きの表情になったわね。そんな驚くほどのことなのかしら?
「そんなに驚くほどのことですか?」
「それは驚きます。わたし自身は生活魔法以外は魔法を使えませんが、聞いた話では才能のある魔法使いが属性魔法を使えるようになるのに最低でも数年の修行が必要で、しかも攻撃魔法としてはっきりと効果のあるレベルまでなるにはさらに数年。魔法使いとして戦いに足るようになるには早くて5年は掛かると聞いています。それからすれば1年未満で魔法使いとして戦える朝未様は特例といえるでしょう」
あ、これはエルリックにいた頃から使えたなんて言わない方が良さそうね。
「まあ、そんなわけもあって、あたし達はアンデッドには比較的強いんです」
「それで、ミーガンさんは私達の戦力を気にされたというのは?」
「その、少々言い難いのですが、できればまたしばらく護衛をお願いしたいと思いまして」
「いや、正式な依頼であればミーガンさんからの依頼を受けるのはやぶさかでないですよ」
うん、あたしもそう思う。知らない中じゃないし、初めてエルリックに来た時にもお世話になったし。ある程度は信用している。信用しているからこそ聖属性魔法についても話したんだし。
「それでどちらに向かうんですか?やはりトランですか?」
「それも考えたんですが、とりあえずベルカツベ王国内で、クリフに向かおうかと思います」
「クリフ、ですか?たしかにクリフは色々なものが割高でしたし、高級品を好んで使う上位ハンターも多かったので売り上げは上がるでしょうけど……」
瑶さん、やっぱり気になるわよね。
「先日、雑談の中でクリフでにもアンデッドが出没していて、領軍が派遣されそうだったと言われてましたよね」
「え、ええ。確かに私達がクリフを離れるときにはそんな状況でしたね」
「クリフで様子を見て、その上でトランへ向かうかどうか判断しようかと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます