第67話 魔法の威力・効果

「はあ?同じ魔法で威力を変える方法だあ?そんなもの見たことも聞いたこともないな」

「そうですか。もしできれば初級魔法でも効果を上げられるかと思ったんですが」

「だいたい、威力が変えられないからより上級魔法があるのですよ。だれよそんな与太話をあんたみたいな女の子に吹き込んだバカは」

「いえ、聖属性魔法が使う人のレベルによってその効果が変わると聞いたので、それをヒントにあたしが思いついただけです」

「ああ、聖属性魔法か、あれは特別だね。だが普通はそんなに変わらんらしいけどな。ただ聖女だけは特別で聖女が使うとその経験によって大きく効果が変わるという話ではあるが。他の魔法はほぼ変わらんよ。まあ、思いついた事を他人に聞いてみるってのは悪くは無いけどね、あまりに突拍子もなさすぎるね」


「そうですか。つまり同じ魔法なら誰が使ってもおおよそ同じ威力になると」

「ま、多少の誤差はあるようだが概ねそうだね。極端に威力の高い初級魔法とか逆に威力の弱い上級魔法とかは聞いたこと無いね」

「あ、あの、先ほど聖女が使うと聖属性魔法の効果がその経験によって大きく変わるって言われましたけど、聖女が他の属性魔法を使った場合はどうなんでしょう?」

「はあ、聖女が聖属性魔法以外の魔法を使う?ないない。聖女は聖属性魔法に特化してるそうだからな、聖属性魔法以外の魔法を使うなんて例は聞いたことも無いよ」


これはいよいよまずそうね。あたしの魔法は秘密にしないと。あ、それとも聖属性魔法以外の魔法も使えるってことで聖女じゃないと……。きっと無理ね、下手なことをしたらそれこそ大聖女とか変な肩書がつきそうだわ。やはりよほどの事がない限り瑶さん以外のまえでは使わないようしよう。


「そうですか。あと、魔法を使いすぎて倒れることとかあったりしますか?魔力を一気に使いすぎてとか魔力枯渇とかで」

「それも聞いたこと無いかな。そもそも、魔力に余裕が無きゃ魔法は発動しないしね」


先日ホーリーの発動で倒れたのをきっかけに魔法をきちんと習おうということになったの。それで今あたしはエルリックで1番と言われる魔法使いニコレッタさんに、この世界の魔法について教えてもらっているのだけど、色々とおかしいわね。


あたしの使う魔法はどれも魔力の込める量をあたしが決められるし、込めた魔力によって強さもかわる。そして限度を超えて魔力を込めればあたし自身が倒れる。これはあたし自身が経験したことだもの間違いは無いわ。なのにこの世界の魔法使いの常識ではそれはあり得ないことになっているのね。


その上呪文の詠唱。一応ギルドの資料室で読んだ魔法書には呪文も一緒に書いてあったけど、あたしも瑶さんもイメージと込める魔力を意識するだけで魔法を発動出来たから必ずしもいらないと思っていたのだけど……。


「じゃあ、初級の火属性魔法、そうねファイヤーアローを使って見せるからよく見てなさい。……

至高なる力、万能なる力の根源よ。我が祈りに応えたまえ。我が魔力を対価に炎の矢となり我が敵を打ち倒せ、ファイヤーアロー」


ニコレッタさんのそばに現れたファイヤーアローが10メートルほど先の的に向かって飛んでいったわ。


でも、

な、長いわ。こんな長い呪文を悠長に唱えていたら発動までに敵から攻撃を受けちゃうわよ。

しかも、なに?あのファイヤーアローの速度の遅さ、気付いていたら避けるのも難しくないのじゃないかしら。威力は、うん的の強度が分からないから何も言いたくないけれど……。


いえ、さっきの説明からすればより上級魔法ならもっと威力もあるのよね、きっと。


「あ、あの、ニコレッタさん。中級魔法だとどんな感じですか?」

「中級ね。ならファイヤーランスを撃ってみましょう。

至高なる力、万能なる力の根源よ。我が祈りに応えたまえ。我が魔力を対価とし火の力を顕現させ強大な炎の槍をもって我が敵を貫き斃したまえ。ファイヤーランス」


ニコレッタさんの頭上に現れたファイヤーランスが、先のファイヤーアローと同じように的に当たって四散した。

おかしいわね。いくらなんでも中級魔法の威力と速さがあの程度なんて思わないじゃない。


「あのニコレッタさん、上級魔法って……」

「ふふ、アサミ。さすがに無茶を言いすぎよ。上級魔法なんて王宮魔導師達とか神殿の聖堂騎士団の魔導部隊員クラスじゃないと使えないわ」

「そう、なんですね。もの知らずなもので。申し訳ありません」

「良いのよ、知らない事は恥では無いわ。知ろうとしないことが恥なのよ」


「ニコレッタさん、的を見させていただいて良いですか?」

「もちろんよ。耐魔法処理をした特製の的だからね。普通の的じゃ中級魔法になんて耐えられないよ」


耐魔法処理、これが?確かに単なる鉄板じゃないのは分かるわ。何か表面に魔法的なものを感じるもの。でも、これが?


「あ、あのニコレッタさん。この的っていくつか分けていただくことは出来ませんか?」


あたしはこの魔法用の的で自分の聖属性魔法以外の魔法の威力を多少なりとはかれないかと思ってニコレッタさんにお願いしてみた。

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