第66話 ホーリーの効果確認②
「数は?」
瑶さんが足を止めて確認を求めてきたわ。これ頼られてる感じで嬉しいのよね。
あたしはいつものようにウィンドイヤーに多めの魔力をつぎ込んで拡大する。
「多分ゴブリン、数は8体。探知範囲外との連携の気配はありません」
「わかった。打ち合わせ通り、朝未は補助魔法を掛けた後は、ホーリーのテストに専念。つぎ込む魔力、収束度の違いで与えるダメージの違いを確認すること。私は近づいてくる敵を排除する。朝未には近寄らせないから安心してテストを」
う、瑶さんって時々ナチュラルに特別感のある言葉を混ぜてくるのよね。あたしは自分に言い聞かせる”これはバディとして、瑶さんにとってあたしはバディ。女の子として見るには年齢の差が大きい。勘違いしちゃダメ”
あたしは深呼吸をして気持ちを落ち着ける。そして両手の平で頬をパチンと叩いて気合を入れなおす。
「はい、瑶さん、あたしを守ってね」
あ、瑶さんちょっとだけ目を見開いたわね。でもたまには良いわよね。
「あと約20メートル。そろそろ見えると思います。ウィンドイヤー以外の探知魔法でも全体を把握できてます。ゴブリン8体。間違いありません。初手、ホーリーに多めに魔力を込めて全体に攻撃、様子次第で、2手目に込められるだけの魔力を込めて単体に収束してみます。そこからは臨機応変に」
瑶さんは頷いて、更に近づいていく。一番近いゴブリンまでの距離が10メートルを切ったところで、あたしは瑶さんの肩を軽く叩いて合図をする。今回はあたしの魔力をあまり使いたくないので瑶さんが補助魔法を掛けてくれたわ。そこから魔力を練り上げて探知魔法の反応も参考にゴブリンの群れ全体を覆うようにイメージを作り。
「ホーリー」
う、あたしの中からゴッソリ何かが抜ける感じがして、軽い眩暈と脱力感があたしを包んだわ。ひとつの魔法ににこれだけの魔力を使ったのは初めてだけど、これは結構辛いわね。
「効果は?」
「うん、これは結構凄いな。ゴブリン全部から何か白い煙?いや、黒いのも混ざっているか?が立ち昇って苦しんでるな。かなりの行動阻害効果もあるみたいだ。動きがかなり鈍いね」
「でも、これだと斃し切れるものではなさそうですね。結構魔力は込めてみたんですけど。……あ、こちらに気付いたようですね」
あたし達に気付いたゴブリンは、今まで見たゴブリンと比べて大幅に動きが悪いけれど、のそのそと近づいてくるわね。あ、ホーリーの光から出た途端に動きが普通になったわ。マナセンスの反応だとかなりダメージはあったみたい。ゲームならHP半分って感じかしら。
「先頭のゴブリンに収束させたホーリーをぶつけてみますね」
再度あたしは魔力を練り上げて、今込められる最大の魔力で……
「ホーリー」
う、気持ち悪い。あたしは思わず膝をついてしまったわ。多分魔力はまだ3割は残っているのに。
「うお、凄いな。瞬殺じゃないか」
そんな瑶さんの声は聞こえてくるけど。今のあたしはそれどころではないの。
「な、朝未。大丈夫か」
「ま、魔力を急激に使うとキツイみたいです」
瑶さんの問いかけに、どうにか返事をしたけど。かすれ声しか出なかったわ。聞こえたかしら。
それにしてもこれはきついわ。ちょっと動けない。
あたしが意識も朦朧とする中、耐えていると身体がフッと浮遊感に包まれたの。
あら?何が起きたのかしら。
「朝未、聞こえているか分からないけど、今はとりあえず逃げるよ」
気付いた時、あたしは瑶さんに膝枕されていた。
慌てて起きようとすると、瑶さんにそっと肩を押されて、また寝かされてしまったわ。ちょっと恥ずかしいのだけど。
「朝未、気が付いたようだね。気分はどうだい?」
「え、ええ。多分もう大丈夫です。魔力を一気に消耗し過ぎるとなるみたいです。今回消費の大きな魔法を間を開けずに連続で使ってしまったのが原因だと思います」
「そうか、ホーリーの効果は凄かったけど、使いどころに気をつけないといけないね。というかできれば現状では使わずに済ませたいね」
「うーん、それは込める魔力を調整すれば1回の戦闘で1回くらいなら大丈夫だと思いますよ。今回は加減せずに最大出力みたいな感じでしかも連続で使ったので倒れちゃいましたけど。あ、そういえばその効果は?あたし1回目の全体へのホーリーの効果は見たんですけど、2回目のホーリーは効果を見る前に倒れちゃったので見れてないんです」
「あー、あれね。凄かったよ」
あら?瑶さんが視線を外したわね。
「瑶さん?」
「う、うん、凄かったよ。光に包まれた瞬間にゴブリンがその場で崩れ落ちて……」
ん?なんか瑶さんの言い方が微妙ね。きちんと最後まで言い切る人なのに。
「はあ、降参。最後まで見てない。それでも私が見ている間にゴブリンが半分くらい蒸発するように消えていたよ」
最後まで見なかったのは、あたしが倒れたせいよね。そしてやっかいな情報が追加されてて、あたしは空を仰いじゃったわ。
「あの、瑶さん。最後まで見られなかったのは、あたしをここまで運ぶためよね。言っちゃえばあたしのミスをカバーするためだったのだもの、あたしが文句を言うのは違うと思うの。むしろ、あたしはお礼を言う立場よね。瑶さんあたしを守ってくれてありがとう」
やっかいな情報はそれとして、あたしを守ってくれた瑶さんには軽くハグをして笑顔でお礼を言ったの。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます