第55話 確認
あたしと瑶さんは、アレッシアさんに宿に戻ってもう少し検討すると言ってハンターギルドを出た。実際のところはあたしの探知魔法での消耗度合いを測るのに夜まで探知魔法を発動させっぱなしでどうなのかを確認したいというのが目的なのだけれどね。
街を歩いていると最近ちょっと視線を集めることが多くなっているのよね。この2カ月の間、狩りや山歩き、ハンターギルドでの訓練であたしも瑶さんも容姿が少し変わってきているのも原因かと思っているの。
あたしは背が少し高くなり、プロポーションも少し女性らしい感じが出て来ている。ただ、いくら成長期と言っても普通はこんなに急に変わるものじゃない気がするので、これも異世界に転移した影響かしらね。
瑶さんは、さすがに大人なのでそういった変化は無さそうだけれど、顔つきが少し精悍になったのと元々太っていたわけでは無いけれど更に身体が締まった感じね。一言で言うとカッコ良くなってきているのよね。
「じゃ、街の外に行ってみようか」
「え?宿に戻るんじゃなかったの?」
「あれは、口実だよ」
「なんでわざわざ?」
「うーん、朝未の魔法ってちょっと特別な感じがあるよね」
それは自覚あるから頷いたのだけど。
「街中をはじめ、人の目のあるところで本格的に魔法を使うと目立ちすぎるかなって思ってね。その点街の外で少し離れれば人目を気にしないで魔法を使って見られるかなってね」
「つまり?」
「うん、恐らくだけど、朝未には魔法でかなり負担を掛けると思うんだ。それが朝未にとって余裕があるのなら良いけど、そうでなければ色々と考えないといけないからね」
「探知魔法のこと?」
「それもだけど、補助魔法もあるよね。基本的に私が前で抑えるけど、群れが相手だと抜かれることも頭に入れておかないといけないしね」
うーん、瑶さんの攻撃範囲を抜けるって結構大変だと思うんだけどな。あたしの魔法が普通の範囲でないのと同じように瑶さんの近接戦闘能力も普通じゃないみたいだし。あ、そうか大きく迂回されたらさすがに瑶さんも対応しきれないわね。
「そのあたりはあたしの弓もあるし、よほど大きな群れじゃなければ大丈夫じゃないですか?」
「そうかもしれないけど、どこまで出来るかをいきなり実戦でというのは避けたいからね」
「わかりました」
確かに感覚で出来るつもりでも、実戦で出来なかったら危ないわね。事前に安全な場所で確認しておくのは大事だわ。
「この辺りならいいかな」
街を出て2時間ほど歩いたところで周囲を見回した瑶さんが呟いた。
「そうですね。ここならエルリックの城壁の上からでも普通は見えないでしょうね」
夜に光る魔法でも使わない限り気づかれないと思うわ。
「探知魔法は発動してるんだよね」
「ええ、切らしてません」
「魔力の消耗はどう?」
「感じとしては回復量の方が多そうです。探知魔法だけなら使い続けても魔力に心配はないと思います」
「じゃあ、次は補助魔法を頼む。今使える補助魔法全部重ね掛けしてみてくれるかな」
「はい、じゃあいきます。プロテクション、シェル、マッシブ、アクセル、ハイアジ、アキュラシー、リフレク」
物理防御力アップのプロテクション、魔法防御力アップのシェル、力を強くするマッシブ、速度を上げるアクセル、敏捷性アップのハイアジ、命中率アップのアキュラシー、1回だけ物理でも魔法でも反射するリフレク、いまのあたしが使える補助魔法を次々と掛ける。
瑶さんに補助魔法をかけたうえで自分にも同じように補助魔法を掛けてみたのだけど。
「どうかな?魔力は?」
「そう、ですね。これだけまとめて掛けると魔力を3分の1?いえ4分の1くらい消費する感じですね。でも、このまま戦闘に入っても弓を使いつつ攻撃魔法を撃つスタイルであれば、ある程度は行けると思います」
「じゃあ、今回は確認作業だから弓は良いとして、攻撃魔法を適当に撃ってみてくれるか」
「はーい、火属性魔法は火事が怖いし、水属性魔法はべしょべしょになりそうだし、土属性魔法は土埃が気になるわね。ということでウィンドカッターでいいですか」
「あはは、まあ色々あるけど、最初にウォーターボールで周囲を湿らせて、そこにストーンミサイルやファイヤアロー、ファイアーボールあたりを投げ込めば大丈夫じゃないかな。もちろんウィンドカッターも使ってみて欲しいけど。あと、念のためホーリーあたりも使ってみて欲しいな。色々な属性魔法で消耗や効果を確認しておいて欲しいから」
「ん、わかりました」
瑶さんの言うことも分かるので、あたしは水属性魔法から順にどんどんと使っていくことにした。
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