第4話
『イマヒマ?ハナソ。』
カナだ。カナは最初のアカウントからの友達。よくアカウントを変える私にずっと着いてきてくれる。もう3年の付き合いだろうか?部屋に籠るようになった頃には既にカナは横にいてくれた。
『暇だよ。どうしたの?』
カタカタと共に表れる文字。
『ウーン。ナンカスイガヨンデルキガシタカラ』
す、鋭い。
『凄いね。ちょうどカナと話したいなって思ってたとこだった笑』
カナにはほんと驚かされる。えっ、見てるのって思うくらいタイミングがいいのだ。私はカナのことを全然知らないのに。知っているのは同い年の女の子ってことだけ。家族構成もどこに住んでるのかも知らない。
『ヤッパリ笑 デ、ドウシタノ?』
カナってどんな子なのかな。3年も一緒にいるけど顔さえ知らないこの子のことが気になる。でも、聞かないのがルール。最初に決めたことだ。言いたくないことは無理には聞かない。言いたくないこと、それはカナにとっては現実での姿。私にとっては自分の考えだ。
『私さぁ引っ越すんだって。あのおばさんの実家に。』
『ヘー。ナンカイツモヨリクチワルイケド、スイハイヤナノ?』
口が悪かったか。意識していなかったが、まあカナが言うならそうなのだろう。別に今の街や家族に未練などないし、
『嫌じゃないと思う。』
引っ越すこと自体は嫌ではない。これは本心だ。ただ...
『ジャア、スイニキカズニカッテニキメタコトガカナシカッタンダ』
そう。いくら引きこもっているとはいえ、親のことが嫌いだといえ、なんだかんだ親は親だ。それが例え飲んだくれと世間体しか気にしないクズでもだ。期待していないって言っているくせに期待してしまうのは我儘なのだろうか。
『そうなのかもね』
またこんな素っ気ない態度をとってしまう。天ノ弱もここまでくればなかなかのものではないか。
『ベツニスイハモンクイッテイイトオモウヨ。ヒキコモリニダッテケンリハアル』
なんて真面目に言うカナ。さっきまでのシリアスな雰囲気とは一変思わず笑ってしまう。
『そうだよね。引きこもりにだって権利はある笑』
笑いながら言う私に骸は
『モォー。ボクハシンケンナノニ。』
と、拗ねてしまった。
『ごめん笑ごめん笑 』
ほんとカナは空気を変える天才だ。落ち込んでいる私にいつも言って欲しい言葉を言ってくれる。励ましって訳じゃなくてほんとに骸が言う一言が救いになるのだ。
『ありがとう』
あの日見た君の瞳 百鬼 @sakuramothi
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