第4話 シリウスとの訓練
シリウスとの訓練の日々はもうあと半日と迫っていた…………
今もユウリはアキラと共に訓練をしている最中だった。
シリウスの指導もあったおかげで1ヶ月前よりお互いの動きにはだいぶ変化が生じていた。
ユウリに至ってはオルタナティブソードを扱える程度には成長していたがいざ剣を交えようにも重心の移動の際にどうしても隙が生まれてどうしても防御へとまわってしまう。
アキラの方は訓練2日目から盾を使ってみてほしいということで盾を交えた訓練をするとすぐさま盾での戦い方を身に付けていった。
実際にアキラと交えてみると確実に前より戦いにくくなっていたのを感じていた。
俺にもまさかアキラに盾術の才能があったとは思わなかった。
アカデミーで使用する武器としては片手剣を使うのが主流であったため盾について触れる機会がなかったっていうのもあるけれども、その隠れた才能をたった2日で見定め、物にさせたシリウスの目は世界最強と呼ばれるだけのものではあった。
二人のここまでの成長を見れば明日のトーナメントも難なく望めるものだろうと思うものだが……
二人の意見は一致してそれとは真逆の意見がでた。
「「このままじゃだめだ!!」」
三人が訓練を終え木陰で休憩しているときにユウリとアキラが地面に座りながら天に向かって叫びだした。
「二人とも一か月前より格段と成長しているよ。後はその自信をもってトーナメントに臨むばいいさ」
シリウスは俺たちの横でオルタナティブソードを片手に上から落ちてきた落ち葉を二つに切る作業をやっていた。
あれをシリウスがやっているのを見て試しにやってみた時はなかなか二つに切るのはそもそも触れることすらできなかった。
片手で軽そうに振るっている姿を見ていると何故かオルタナティブソードはシリウスにこそ似合っていると思ってしまう。
「まだアキラと剣を交えるときに上手くいかないときがいくつかあったからどうしても不安になる……」
「おれも崩してからの踏み込みがまだ入りきれないままなんだよな~……」
アキラの方もやはり不安があったらしい。
「確かに明日が本番であればいろいろ思うことはあるだろうけれども今日はもう遅いしこれ以上やれば明日に影響が出てしまう……だから今日帰った後は明日のトーナメントで自分がどのように動くべきかをイメージしろ!前もって頭に思い描いていると無いとでは大きく差が出る」
冷静になってみればシリウスの言う通りでこれ以上練習を続ければ確実にオーバーワークになり明日に支障が出るだろう。
「わかったよシリウス……今日はこのまま帰って明日に備えるとするよ」
「ああそれがいい……じゃあ俺はこのあとやることがあるからかえってちゃんと休めよ。」
ユウリとアキラの二人は訓練を終えて近くの食事場で夜ご飯を食べていた。
「はぁ~とうとう明日か~まだ実感わかないな~」
アキラがため息をつきながら魚の切り身を口に持っていき口にいれる
「一ヶ月の間だけだからな……むしろその期間でよくここまでできたと思うよ」
「指導者が優秀だとこんなに違うもんなんだな」
まだ食卓には食べかけの食事が半分以上残っている。
会話をしながら食べているので食事が進まないように思えるがなかなか口が食べ物をうけつけてもらえず食事が進まない。
「明日のトーナメントうまくできるか心配だよ……」
未だにユウリの中には一ヶ月の訓練の中でまだ満足にいかない点が多くあり自信がつかずにいた。
一ヶ月の間は最初は長く感じるものだが何かに没頭して一日を過ごしているとあっという間に時間というのは過ぎていき気がつくともう一ヶ月というのは経ってしまう。
「確かに俺も明日の試合のイメージをしてもいいイメージは湧いてこない……けれども俺たち確かに一か月前より格段と強くなってると思うぜ!!結果ってのはやってみないとわからないから自信もって試合に挑めるようにしようぜ」
アキラは揚々とユウリに自信をつけてもらうよう前向きな考えを言ってくれた。
確かに今ここで自信を無くしてしまえば実戦の時に何もできずに負けてしまうかもしれない、アキラとシリウスと共に訓練した一ヶ月を無駄にすることは何があってもしたくない。
「そうだな……後悔しないように最善を尽くすよ…………ありがとうアキラ少し自信がついた」
アキラは親友の顔に笑顔が戻ったことに喜ぶ
「どういたしまして……俺なんてトーナメントに参加できるかどうかも分からないんだぞ、もし参加できなかったらお前には二回戦突破でもしてもらわないと俺も報われないよ」
「俺とこのオルタナティブソードなら絶対いってみるさ!」
「よ~しそれじゃあ明日は二回戦突破を目指すぞー!」
「「おー!」」
二人は水の入ったグラスを互いに乾杯を交わすと残りの食事を勢いよく食べだす。
少しだけ自分の中にあった重い荷がいつの間にか消えてしまい、さっきまで食事を通さなかった口がパクパクと喉を通すようになった。
ユウリとアキラは食事を終えるとそれぞれの宿に帰っていった。
ユウリは寝る前にオルタナティブソードの手入れをしているところだった。
オルタナティブソードを鞘に入れても鞘越しに人の気みたいなものを感じる。
この剣の生き物に触れているような感覚はまだ慣れないが、1ヶ月前の初めて触れた時に比べ、この剣をだいぶ扱えるようになってきていると思う。
「明日も朝早くから城の舞台上に行かないといけないから早く寝るか!」
ユウリはオルタナティブソードを壁にかけてベッドの布団に入り込む。
最近は妙に夜に眠れなくなりそれとは逆に朝は早く起きれるようになっていた。
なので布団に入ってもなかなか眠りに付けない。
それでも朝は早く起きれてしまうので全然問題はないのだが……
そういえば最近は妙な夢を見るようになったっけ……
ユウリが見る夢は変なもので行ったことも無いような未知の世界でもまるでその世界のことを知っているかのように自分は生活していて夢だとわかっていたとしてもなかなか夢から覚めることはない。
そのような夢をユウリは見ていた………………
その一方……夜の静まり返ったこの町にとある木の上でシリウスはきれいな星が輝く夜空を眺めていた。
「……この時をいつまで待ったことやら…………」
シリウスは夜空を堪能し終わるとすぐさま木の上からすいすいと降りていき綺麗に地面に着地をし、城の方へと向かっていく。
「さてと……後はあの二人を信じて、俺は俺の……為すべきことを為すだけだ」
翌日、このシリウスの町の人々に希望や楽しみを与えてくれる朝日が昇る。
そしてとうとうこの日、シリウスで予選トーナメントが行われる。
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