第2話 師との出会い
ユウリはベテルギウスさんと演習場で稽古をしてもらった後、ユウリは騎士見習いの仕事として領内の警備のため疲れ切ったこの体を何とか動かし街を回り歩いた。
ベテルギウスさんはあの後シリウスの領主さんと話があるらしく城に戻っていった。
そして今ユウリは城内にある書物庫で本を読んでいた。
この時間の図書館は人が少なくとても静かであり、この後アキラと食事をする約束をしているのだが時間を忘れて本を読むのに没頭して約束の時間に遅れてしまわないようにしなければいけない。
アキラとは仕事が終わってからユウリ達がたまに稽古をしている草原の場所の近くにあるお店で食事をする約束をしている。
壁に掛けてある時計を見るとそろそろ移動する時間になっていることを確認してユウリは読んでいた本を切りのいいところで読み終えて係の人に返却した。
図書館から出ても外はまだ日が落ちておらず明るかった。
この時期になると日が登っている時間が長くなってくるので夕の4刻ぐらいにならないと暗くはならない。
ユウリは一人、ベテルギウス領に続く道を辿って歩き出していく、アキラと約束しているお店はシリウスからベテルギウス領に続くこの道をずっと行きシリウス領を囲っている壁の門の近くにありその反対側に草原が広がっている。
今向かっているお店の料理は料理の種類がとても豊富でそのどれもが絶品でありどれを食べようか毎回行くたびに悩まされてしまいがちだ。
ユウリは食事のことだけを考えながら歩いているとすぐに門の近くまで来ていて
その門の前で今朝に見たベテルギウスさんが誰かと話をしているところが見えてこえをかけた。
「ベテルギウスさん!」
ベテルギウスさんはすぐにこちらに気がつき手を振る。
「おや、またユウリ君にお会いすることになるとはおもいませんでしたよ」
ベテルギウスさんは近くに馬車を置いていて付き添いの人が荷物を馬車に運び込んでいたところだった。
「ベテルギウスさんはこれから自分の領にお戻りに?」
「えぇ……荷物を入れてもらっている間に少しこちらの方とお話ししていまして」
ベテルギウスさんと話をしていたその人はフードを被っていて素顔が隠れるようになっていた。
しかし足まで伸びているマントの隙間から鎧のような金属質のある服を着ているのが見えて騎士の人だとユウリは思った。
騎士のだれなのかを推測しているとあちらから話をかけてきた。
「やぁ、今日ベテルギウスが話していたユウリくんかな?
「はいそうですけど……えぇ~とあなたは一体……」
ユウリが名前を聞き出そうとしたがフードを被った人が途中で遮る。
「まぁそれよりこんなところじゃベテルギウスもいて周りから目につきやすいし少し場所を変えようか」
フードの人がそういうとユウリの手を引き草原の方へと連れていかれる。
ベテルギウスさんも後から追う様についてきているのが見えていたがそのベテルギウスさんの顔があまりよろしくない沈んだ顔を浮かべていて大きなため息をついているのも見えて、もしかしてめんどくさいことに話が進んだかな?と思った。
ユウリはフードの人の後を追いながら草原の人気のないところに着いた。
「さてと、この辺だったら他の人の目につきにくいかな」
そういってからその男性の人は自分が被っていたフードを脱いだ。
そのフードの下から現れた素顔はユウリとさほど変わらない青年の顔をした人だった。
ユウリはその顔を見た瞬間に驚きを隠せなかった。
それは昨年のこの時期、まさにシリウス領のトーナメントの舞台で何度も目にしていた顔だったからだ
決勝戦、光速の剣士と呼ばれている「レイ」と対決し勝利を収めていまだ領土間のトーナメントでも無敗の記録を保持している世界最強の剣士の称号を持つ「シリウス」その者の顔と一致した為であったからだ。
「シリウス領の領主……シリウスさん!!」
ユウリは世界最強の剣士を目の前にして緊張のせいでか声が裏返り震えていた。
シリウスはユウリが自分に対して緊張と恐れを抱いているのを咄嗟に判断しシリウスは優しく話してくれた。
「そんなかしこまらなくても肩の力抜いて気楽に話してくれればいいよ、そっちの方がこちらも話しやすいからね」
「ねっ」というとシリウスは目線だけベテルギウスを見て言うとベテルギウスさんもシリウスに合わせ優しい口調で話した。
「シリウスの言う通りあまり緊張なさらずに話してもらった方が私たちもうれしいですからね、私といつも話しているときの感じで良いですから」
ベテルギウスさんのおかげもあり少しは声も震えずまともに話せるようになった。
「えぇと………それじゃあまずどういった理由でぼくをここへ連れてきたのか聞いてもいいですか?」
シリウスさんはここ最近ここシリウス領に戻ってきておらず帰ってきたことを知られたくないように見える。
多分そのことを口外したくないんだろうと思ってみれば
「結論からいうと君と稽古をしてみたいと思ってね」
一瞬だがその言葉の理解ができなかった。
世界最強の剣士がどうして最弱にも近い僕と稽古なんて、と考えていたらシリウスがその訳を説明した。
「ベテルギウスが君のことをずいぶん評価していてね、ベテルギウスが言うからには間違いないだろうしましてやその人物が『センス0』ときたもんだ。とても興味が湧いてね」
訳を聞かせてもらったがどうやらこの人は僕のことを勘違いしているしベテルギウスさんも僕のことを過大評価しすぎていると思って否定しようとしたがまさかのベテルギウスさんが途中で遮ってきた。
「それもいいですね!トーナメントも近くていい機会ですしぜひやってみたらいかがですか?」
とさっきのあの嫌そうだった顔はどこへ?という感じでベテルギウスさんが急に推してきた。
「いや……今僕の剣、宿にあるんですけれどもどうするんですか……?」
「あぁそれなら俺のもう一本の剣を貸してあげるよ」
そういうとフードの中に入っていて見えなかった黒い鞘に入った漆黒の剣を背中から抜き出しユウリに差し出した。
いや二本あるんかい!と突っ込まずにはいられなかったが、そんなことよりも差し出された黒い剣のその色に見とれた。その剣の黒は剣先から柄までまんべんなく黒く塗りこまれていて取り込まれそうなほどの漆黒でできた少し不思議な剣だった。
「すごい……」
思ったことがつい声に出てしまいユウリがその漆黒の剣をシリウスの手から渡されシリウスの手から離れた瞬間なんと!!
漆黒の剣からなにか人間の手に近い生温かな感触が手に伝わった瞬間、その剣の重量がいきなり増しユウリの手から転げ落ちるようにしてその場の地面に勢いよく落ちた。
「………………」
その場にいた全員が声を発さずに静止状態になっていた。
ユウリは数秒たってもまるで時が止まったかのように動けず、立ち尽くしていた。
それは触れたユウリ以外の二人も何かを感じ取っていてその場で立ち尽くしていた。
シリウスがようやく動き恐る恐るその黒い剣に近づき手に取った。
シリウスが手に取ったその剣は先ほどシリウスが持っていた時より明らかにに重量感が増して持っているように見える
シリウスは漆黒の剣を眺めた後、少しその場で笑った後ユウリに近づいてきて笑顔でこう言った。
「よかったら明日からトーナメントの日まで君がその剣を使えるようになるまで稽古をつけさせてくれないか?」
その時のシリウスの顔はなぜかとても嬉しそうな顔をしていた。
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