ヒマワリとハナ

三枝 優

ヒマワリちゃんの日記

○がつ10にち にちようび

きょうは、ハナちゃんがいっしょにおひるねしてくれました。

ハナちゃんは、あったかかったです



○がつ11にち げつようび

あめだまをゆかにおとしました。

ひろってたべようとしたら、ハナちゃんにおこられました。



○がつ12にち かようび

きょうは、おえかきをしました

ハナちゃんをかいたら、ほめてくれました。



○がつ13にち すいようび

けしごむをさがしていたら、ハナちゃんにおしえてもらいました

ハナちゃんはものしりです。


ーーーー


 いつも、山崎向日葵ひまわりちゃんの日記には、ハナちゃんが登場する。

 とても二人は仲良しのようだ。

 幼稚園の高田先生は、向日葵ちゃんの日記をいつも楽しみにしていた。


 向日葵ちゃんはハナちゃんに、いろいろ教えてもらっているみたい。

 多分、お姉ちゃんなんでしょう。




 今日は向日葵ちゃんの家に家庭訪問。

「あの、玄関先でいいんですよ?」

「いえいえ、せっかくだからあがっていってくださいな。お茶もお持ちしますから」

 お母さんに、りっぱな和室に案内された。


 お茶をいただきながら、お母様と面談を始めた。

「いつも先生にはお世話になっています」

「いえいえ、家庭訪問の目的にはいくつかあるんですがご家庭の状況を把握目的もあります。大変失礼ですがお母様は専業主婦ですか?」

「いえいえ、来年までは育児休暇中なんですの。その後は、主人が育児休暇をとってくれることになっていますわ」

「それは素晴らしいですわね」

 男性が育児休暇を取る例は、うちの幼稚園でも殆ど見たことがない。

「向日葵は幼稚園でどうですか?ご迷惑をおかけしていませんか?」

「いえいえ、とてもお利口さんにしていますよ。お姉さんにいろいろ教えてもらっているようですね」

「おねえさん?」

 お母様は首を傾げた。


 あれ?ではハナちゃんは近所の子だったのかしら?


「いつも向日葵ちゃんの日記にハナちゃんという子の話が出てくるんですよ。とっても仲が良いようですね」

「あぁ・・ハナちゃんですか」

 お母さんはニコニコしながら話す。

「ハナは、うちで飼っている猫なんですの」

「え?猫さんでしたか」

 それにしては・・・猫にしつけを教えられるかしら?

 そう思ったときに、声がした。



「ニャ!」


 見ると、和室の入口に白い猫がいた。

「この子が、ハナちゃんなんですよ」

 奥さんが言った。

「そうなんですか、てっきり人間かと思っていました。いろいろ教えてもらっているって書いていましたから」


「ニャ」

”私、子育てがんばってる!”


 気のせいかもしれないが、ハナちゃんが誇らしげに胸を張ったように見えた。


(了)

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