裏ボスを倒そう!
「……本当に行くんじゃな?」
「あのゴーレムを作ったのは……アイツじゃ。アイツを止められなかった
「ダ・メ・だ!」
まったく、んな事させられるかよ。
それを言うなら、やらかしたのはプレイヤーだ。俺達プレイヤーの方が責任がある。
それ抜きにしたって、
「なぜじゃ! 無限の命を持つ【ぷれいやあ】と言えども、『死』の恐怖は避けられない……お主だって、さっきまで震えておったではないか!」
「だとしても、だ」
幼女に戦わせて、自分はすみっこでガタガタ震えてる。そんなカッコ悪いおじさんがどこにいる?
俺の見てきたおじさん達は。俺の知ってるおじさん達は。
弱くても、臆病だとしても。決してそんな、卑怯者ではなかった。
俺だって、そんなカッコ悪いおじさんになる気はさらさらない。
だって、このゲームは
クソ運営がどんなジャンルを自称しようと関係ない。俺が、そう決めたんだ。
だから――最後まで、理想の
それに、さ。
今はもう……不思議と怖くないんだよね。
「だから……俺達の勝利を祈っていてくれよ、お嬢ちゃん」
もちろん、
それでも――俺にとってはかけがえのない、守りたい対象だ。
「……わかったのじゃ。でも絶対に……絶対に無事で戻って来るんじゃぞ!」
「ああ、約束だ」
じゃあ――行ってきます、幼女先輩。
□ □ □
「どうやら、そろそろだよ」
たしかに、もうすぐ限界みたいだな。
今や他のプレイヤーはゴーレムに全員潰され、
「みんな、作戦は頭に入ってるな?」
力強く頷く仲間達に、思わず笑顔が漏れる。
『GGGRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!』
オリハルコンゴーレムが最後の仕上げとばかりに
でも……彼らの犠牲で、時間は稼げた。おかげで、俺たちの準備は済んでいる。
「――作戦を開始する。リュンネ!」
俺の合図に頷いたリュンネは、朗々と
「出でよ、応えよ、地に満ちよ。恐れに、支配に、叛逆を。天の全ての光を堕とせ。汝は終末――尽きる事無き無限の煉獄!」
呪文に呼応するように、リュンネの周囲には抱える程の大きな火球が次々と現れる。その数は20、30……いや、魔力が尽きるまで増え続ける!
ゴクゴクと魔力回復薬を飲みながら、リュンネの魔法は完成に近づく。
『GRRRROOO…』
そしてゴーレムが最後のプレイヤーを潰し終わり、こちらに向き直る……その瞬間。
「薙ぎ払い、
リュンネの魔法――無数の火炎弾が
『GRRRROOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!』
火炎弾は次々とゴーレムに着弾するが、やはりダメージを負っている様子は無い。
だが、それで良い。これだけの数があれば
「ここっっだぁっ!」
雄叫びとともに、地を蹴る。
狙うは奴の目。
一度の跳躍で足りない高さは、
「
空中で、思い切り火炎弾を踏みつける。
システムプロテクトによって俺はダメージを負わない……どころか、弾かれてさらに上空に跳ね上げられる!
『G…RROOO!?』
腕を振り払いきった所でようやく、奴が俺の存在に気がつく。
……が、もうおせーよ。高さばっちりだ。
左手には即席のミスリルの杭。右手には使い慣れた槌。
精々、歯ぁ食いしばれよっ!
「水・滴・石・穿っっっだぁあああ!!!」
俺がこの世界で最も、誰よりも慣れ親しんだ動作。最高の熟練度を活かした攻撃。
思いっ切り
『GGGGGRRROOOOOO!?!?』
とは言え、これだけでは致命傷には程遠い。
奴は混乱しながらも、無茶苦茶に腕を振り回し俺を潰そうと――。
「させませんっっ!!!」
「いっっくニャー!!!」
ココネルさんとスクスクが、手に持ったミスリル線に思いっきり魔力を注ぐ。
ミスリル線は、奴の目に突き刺したミスリル杭に繋がっている。注がれた過剰な程の魔力は、杭を通ってゴーレムに注がれ――。
『G…GR…GGRR…????』
奴は、バグったように動きを
スタンガンと同じ事だ。過剰に注がれた魔力が奴の魔力伝達網をメチャクチャに乱し、動きを麻痺させている。
これも効果は一瞬だろうが――それで十分だ。
「四連――」
ソレイユが構える、赤く発光する刃。
それが、一瞬で四閃。
「――飛斬・“花水木“」
目にも止まらぬ速さで、花が咲くように放たれた『飛ぶ斬撃』は。
ゴーレムの四肢を、根元から正確にぶった斬った。
『G……R……!』
轟音とともに、手足を失ったゴーレムが崩れ落ちる。
……それで、全ては終わりだった。
四肢を失ったゴーレムは、もはや動きようがなかった。
俺たちは、無事にオリハルコンゴーレムを倒せたんだ。
はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
良かった〜、なんとかなった。
流石にどうなることかと思ったよ、今回は。ハードだったねえ。
「お疲れ様、オールディ」
へたり込む俺に、声がかかる。
おう、ソレイユもな。最後の斬撃、バッチリだったぜ。
「どうだった? 初めての戦闘は」
まあ、意外とあっさり勝てたけどな。強敵だった割に。
でもなあ……今回はテンションハイだったけど、毎回これはしんどいね。ドキドキしすぎる。いや〜、やっぱしばらくは遠慮しとこうかなあ。
「そうかい? 結構、良い動きしてたけどね」
アバターの能力自体は成長してるしな。うん、出来なくは無い気はするけどさあ。
「くぅ〜、撮れ高来たわこれー!」
「んニャニャ〜、勝った勝ったニャー! す〜ごかったニャー!」
「オールディさん、ソレイユさん、大丈夫ですかっ!?」
「おっと、お迎えが来たね。じゃあまずは……」
だな。
ま、何はともあれ、だ。
――帰ろうか、俺たちの日常に。
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