どうする? ▶︎たたかう
このゲームは――
「もうっ、運営全然仕事しないし……! 『仕様です』としか返信こないんだけど……!!」
「諦めろリュンネ。多分、運営は動かない」
街中に
街の破壊は不可逆だし、NPCの命も同様。戦闘メインのゲームならともかく、『石油王ゲー』は平和にまったり街中で過ごしたいプレイヤーも多い。こんな事件は下手しなくても大量引退のキッカケになり得るし、収益的に見たってコラボコンテンツの売り上げに影響が出るだろう。たしかに運営が対処してもおかしくない案件だが……『石油王ゲー』の運営は絶対に動かないだろうな。
大体、このゲームの収益構造を考えれば、企業コラボコンテンツ以外の部分をこんなに作り込む必要はないんだ。それなりに暇つぶしになるようなゲームにさえなってれば良い。それこそ普通のゲームみたいに、サクサク戦闘システムとレベルアップの快感を味合わせれば事は足りる。ましてや、世界丸ごと分子レベルのシミュレートなんて絶対にする必要はない。っていうか、そんな事してたらいくら企業コラボの売り上げが良かろうが、絶対に黒字になるはずがない。かかるコストが桁違いすぎる。全然合理的じゃ無い。
じゃあ、なんでそんな無駄な事してるかって言えば――『石油王ゲー』運営は異常者の集まりだからだ。そうとしか思えない。合理的な理由で説明できないのであれば、合理的
まあ、ゲーム自体は面白いからやるんだけどさ。オンゲーじゃ運営が敵なんて日常茶飯事だしね。とりあえず詫び石よこせ〜、ってなもんだ。
ま、そんなわけで。
運営は動かないし、実力のあるNPCも今は運悪くこの街にいない。
やっぱり、俺達でなんとかするしか無い。わけだけど……いや、難易度ナイトメアだろこれ。
プレイヤー達は、必死でゴーレムに攻撃を仕掛けている。
しかし。
「ABURACARAMEDAKARA!」
「
「カキコミカキコミ藻ノスープ、働イタマエ、着替エタマエ!」
各々の詠唱と共に放たれた魔法が、どれだけ着弾しようとも――。
「おらあああああ吹き飛べえええええええ!!!!」
「ぶっっっっった斬れろおおおおおおおお!!!!」
棍棒でどれだけ殴りつけようとも、大剣でどれだけ斬り付けようとも――。
『GRRRRRRRRROOOOOOOO!!!』
奴の身体には――
うん、やっぱり攻撃が効いている感じは全くないな。時々、鬱陶しそうに振り払う動作をするくらいか。
……ま、そうだろうな。単純に、オリハルコンが硬すぎるんだ。最硬の金属――敵に回した時にこれほど恐ろしい素材も他に無い。ソレイユの剣なら傷くらいは付けられるかもしれないが……それだけだな。致命傷は到底見込めない。
こんなもん、闇雲に正攻法で突っ込んだって絶対に倒せない。何か無いのか、弱点は――?
「
「残念ながら、無理じゃな。作ったのはアイツじゃ、そんなわかりやすい弱点を残しとくわけが無いのう」
チッ、これもダメか。他に、他に何か、もっとよく
内心の焦りも虚しく、プレイヤー達は1人、また1人と潰されていく。時間はあまりない。
もちろん、プレイヤーだから死んでも
『GRRRRRRRRROOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!!!!!!!』
不快な咆哮と共に、ゴーレムが
「えっぐいニャー……リスキル祭りニャー……」
トラウマになるだろあんなん。諦めてログアウトするまで執拗に叩き潰し続けられるなんて、最悪だな。
というか、
……よし、悪態ついたら少し冷静になった。
「ゴーレムの体内に魔力の流れが見える。なんだかわかる?」
目の奥にも手足にも、網の目状に魔力の流れが見える。一体なんだ?
「なるほど、魔力メガネで見たのじゃな。……それは、ミスリル線の魔力伝達網じゃ。魔力を流して、各部に信号を伝える仕組みじゃの」
なるほどね。人間は神経網で電気信号を伝えるけど、電気の代わりに魔力を、神経網の代わりにミスリル線を巡らせているわけか。面白い仕組みだな。
神経……電気……スタン……うん、いけるかもしれない。
「オールディさん、何か見つけたんですか?」
「……弱点と言えるかはわかりませんけど」
ようはオリハルコンじゃ無い部分を狙えば良いんだ。
奴の身体でオリハルコンじゃない部分は2つ。水晶質の目と、関節部。
「ソレイユ、奴の四肢の関節を斬れるか?」
さすがに四肢をぶった斬れば、奴を止められる。っていうか、他の止め方がわからない。
奴の身体はでかいけど、ソレイユの『飛ぶ斬撃』ならリーチは足りる。
「正直……難しいね。見かけによらず、動きが速い」
まあ、そうだろうな。ただでさえ関節をピンポイントで斬るって時点で難易度が高い。しかも、奴の重い攻撃をソレイユは受け切れないだろう……どころか、掠っただけで死ねるな。『飛ぶ斬撃』があっても、難しいか。
……ならば。
「奴の動きを
俺の問いに、ソレイユは一瞬目を丸くし――すぐに薄い笑いを浮かべる。
「――――斬れる」
よし。
ならば僅かでも……可能性はある。
「作戦を考えた」
推測に推測を重ねて、即興で考えた作戦。しかも、作戦の肝になる俺が戦闘経験皆無のぶっつけ本番と来ている。だから――。
「上手くいく保障はない。でも……俺の予想が正しければ、奴を倒せるはずだ」
これが現状考えられる、あの無敵の
そのためには。
「皆の力が必要だ。俺を――信じてくれないか?」
俺が、皆の力を信じているように。
「もちろんさ。オールディの予想が外れたことがあったかい?」
ソレイユ。
「しょうがないわね。どうしてもって言うなら、信じてあげるわ」
リュンネ。
「ニャニャニャー! 先輩は、いざと言う時にはやる先輩だニャー!」
スクスク。
「私はいつだって……誰よりも、オールディさんを信じていますから!」
ココネルさん。
「――ありがとう、みんな」
こんな時に言う事じゃないかもしれないけど……こうやって皆に信頼してもらえるの、すっごい嬉しいな。うん、なんか元気湧いてきた。正直さ、さっきまで足震えてたんだけど。今はもう、ゴーレムなんか全然怖くない。きっとこの作戦も上手くいく、そう思える。むしろ、はやく自分の予想を確かめたくてウズウズしてきたくらいだ!
待たせたなぁっ、
さあ――検証を始めようか!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます