上級の納品、情報収集、そして新アイテム

 お腹いっぱいになるまで食事を取ってから生産ギルドに赴くと、いつも通り元気いっぱいのカリナさんが迎えてくれた。


「オールディさん、待ってました! ポーション納品ですか? ポーション納品ですよね!?」

「はい、それもあります」


 やっぱ足りて無いのかなあ、ポーション。生産ギルドも無料講習やったり、頑張って生産者を増やそうとしているんだが、あまり人気は無いようである。面倒な生産システムが悪いよ生産システムが。


「いつもありがとうございます! オールディさんのおかげで、初級ポーションは数が確保できて助かってますよ。あとは、中級と上級のポーションがもっとあれば、言う事無いんですけどね……」

「中級と上級のポーションなら、作ってきましたよ。ほら」


 そう言いながら、インベントリからポーション類を取り出し、並べていく。


「ええっ!? どうやって作製方法を……ま、待ってください! すぐに品質査定しますから!」

「いえ、そんなに慌てなくても……」


 なんか目の色変わってて怖いですよ?


「成分濃度十分、魔力反応あり……うわっ、本当に中級と上級です! いつの間に、錬金術師の方に弟子入りしていたんですか?」


 ああ、中級以上の作り方は錬金術師しか知らないんだっけ。でもまあ、蒸留の知識があるプレイヤーなら、割と簡単に作れると思うよ。


「いえ、特にそう言うわけでは無いんですが。品質は問題無さそうですかね?」

「全く問題無いですよ! しかもこんなに数が、ふへ、ふへへへへ、夢みたい……!」


 ところがどっこい現実です。いや、仮想現実か。

 しかし喜びすぎでしょ、カリナさん。涎垂れてますよ。


「中級以上は元々供給が少ないですし……最近は【プレイヤー】の方達が、熱心に魔法を習ってますからね。魔法使いの人口はグッと増えそうですし、それに伴って上級ポーションの需要はますます増えそうなんです」

「なるほど、そう言う事ですか」


 リュンネ達の動画の影響だろうな。あれ以来、プレイヤー達のコミュニティでも熱心に魔法習得について情報交換がなされている。そう遠く無いうちに、魔法使いはかなり増えるだろう。まあ、その辺は狙い通りだな。


「魔術ギルドの友人に聞いたんですけど、魔法を使おうとする時、【プレイヤー】の方達はなぜかブツブツと謎の呪文を呟くらしいんですよ。なんででしょうね?」

「さ、さあ…ナンデデショウ、フシギデスネ」


 動画の影響でしょうね……。

 リュンネェ! お前のせいでプレイヤー達が、痛々しい集団みたいになってるじゃん! 

 違うんです。彼らは純粋に、呪文を唱えれば魔法を使えると思ってるだけなんです。そう言う趣味なわけでは無いんです、多分。


「ところでカリナさん。魔力回復薬的な物って無いんでしょうか? 作り方とか分かれば、そんな物も作りたいんですけど」

「うーん、魔力回復薬ですか……ほとんど効果のある物は無いですね」


 一応、魔術ギルド秘伝の物はあるらしいのだが、それほど魔力濃度は高く無いらしい。

 秘伝というだけあって作り方も材料も不明だし。分かっているのは、何らかの薬草を使うらしいって事くらい。

 上級ポーションは魔力を多く含んでいる。だから最悪、上級ポーションを飲むって手はある。ただ、この世界のポーションは傷口にかける物であって、飲むと普通に有害だからな。あくまで最後の手段である。それに、作る側からすると自分の魔力量分しか作れないからな、あれ。


「あまりお役に立てず申し訳ないです」

「いえいえ、ありがとうございます。参考になりました」


 秘伝の薬草ねえ。植物図鑑とかで見つかるかなあ?

 

「あとは、錬金術師の方なら何か知っているかもしれませんが……あの方々は神出鬼没で、今はアポが取れないんですよね……」

「へえ、そうなんですか。機会があれば、是非お会いしてみたいですね」


 また錬金術師か。色々と有益な情報を握ってそうなんだよなあ、彼ら。

 気になるけど、アポが取れないんじゃしょうがない。まあ、そのうち会えることもあるだろう、多分。


「あっ、そうだ。ガヴナン師匠の分の納品を忘れてました」

「あっ、そうだ。ガヴナンさんに頼まれてた物、入手出来ましたよ」


 んん? 師匠は何を頼んでいたんだろう?


「じゃじゃーん、ミスリルインゴットです!」


 おおっ、ファンタジー金属きたー!!!

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