中級&上級ポーションを作ろう!(上級編)
上級ポーションの作り方は簡単だ。
中級ポーションに魔力を注ぎ込めば良い。
簡単……な、はず……。
「ぬぅぅぅうううううおおおおおおおっっっっっっ!!!」
「がんっばれっ! がんっばれっ!」
ココネルさんが応援してくれてる!
頑張らないと!
「おおおおおおおおおお!!!」
「ふぁいっと! ふぁいっと!」
いや、キツイキツイキツイ!
なかなか入らないんだけど!
「うーん、やっぱり難しいなあ」
「そうですね。一度休憩にして、紅茶でも飲みませんか?」
「はい……面目ない……」
うん、初めてって難しいよね。
ポーション作りの話です。
やってみて分かったんだが、ポーションに魔力を注ぎ込むのはかなり難しい。ポーションの上に手をかざして魔力を送り込もうとしてるんだが、中々上手く入って行ってくれない。
いや、効率を考えなければ無理矢理に注ぎ込むことは出来そうなんだけどさ。なんかこう、ポーションに辿り着く前に、大部分の魔力が分散しちゃうんだよな。魔力メガネで漏れていく魔力が見えてしまう分、無駄が多いのがハッキリと分かってしまう。
そもそもアレだよなあ、空気中で魔力を思った通りに動かすのが難しいんだよなあ。なんか、抵抗をすごく感じるし。例えるなら、暴風雨の中を真っ直ぐ歩こうとすると大変、みたいな感じか。魔法を使う時も、手元で魔法に変換して発射する方式が一般的なのは、こういう理由だ。
俺も一応、魔力操作の練習自体はしてたし、手元で動かすくらいなら問題ないんだけどなあ。まだまだ練習が足りない、って事かね……。
「はい、淹れたてです。熱いので気をつけてくださいね」
「おおっ、良い匂い。ありがとございます」
「砂糖はいつも通り3つで良いですよね? はい、スプーンです」
「これはこれは、ご丁寧にどうも」
カップとスプーンを受け取り、砂糖を溶かすようにかき混ぜる。
紅茶の香りがフワリと漂い、スプーンはほんのりと温かい。
待てよ、温かい……?
「どうかしましたか、オールディさん?」
スプーンが温かいのは、紅茶の熱を伝えているからだ。とりわけ金属は熱をよく伝える性質がある。
つまり、
「伝導率……そうか、無理に空気を通して魔力を送り込む必要も、別に無いのか」
「うんっ? 何か分かったんですか?」
「ええ、ココネルさんのおかげで1つ思いつきました」
ひらめきってものは意外と、ちょっとしたリラックスタイムに訪れやすいものらしい。
美味しいお茶を淹れてくれたココネルさんのおかげだな。
「次は、このスプーンを使ってみます」
まずは紅茶をしっかり味わってから、だけどね。
□ □ □
「おおっ! スルスル入る!」
「うわっ、さっきまでと全然違いますね!」
思いついてしまえば簡単な話だった。
スプーンでポーションをかき混ぜながら魔力を注ぎ込む。ただし、魔力は
おそらく、空気と金属では魔力の通しやすさが大きく違うんだろうな。物質毎の魔力の通しやすさ、『魔力伝導率』、みたいなものがあるのだろう。
いやー、さっきまで感じていた抵抗が嘘みたいだ。抵抗が完全に無くなった訳ではないけど、段違いに楽になった。
「どんどん魔力が入っていきますね〜、順調です!」
余計な部分に漏れ出ないように、しっかりと制御しながら魔力をポーションに注ぎ込む。
抵抗さえなければ、この程度の魔力操作はそれほど難しく無い。いや、一般的には難しいのかもしれないが……魔力メガネのおかげで視覚的に魔力の流れが見えるからな。精密な制御や細かい操作も、比較的簡単にできる。
例えば、リュンネは動画内で5つの炎弾を同時に操っていた。魔力メガネがあるからあっさりと成功させていたが、あれも魔力操作的にかなりの高等テクニックだ。魔法に長けたNPCでも、そんなに多くの魔法を同時に操るところは見たことがない。どうも2、3個でも同時に操れるなら、かなりの腕前、って感じらしい。
まあ……魔力メガネが無かったら、俺も魔力制御なんてロクにできる気がしないけどな。感覚的には、目隠ししながら絵を描いているようなもんだ。目隠しなんてしなくても、中々上手く描けないっての。
などと考えてる間に、十分に魔力を注入できたようだ。
「よしっ、これだけ魔力の色がついていれば十分でしょう」
「と、いうことは……?」
ふっふっふっ、よくぞ聞いてくれました。
「上級ポーション、無事完成です!」
「わーい! おめでとうございます、オールディさん!」
「ありがとうございます!」
まあ、まだ色々と課題はあるけどな。
今回は手近な銀のスプーンを使ったけど、これが最適解かはわからない。もっと『魔力伝導率』の高い材料を使えば、より効率良く魔力を注げるはずだ。色々と材料を試してみないとな。
特に気になるのは、『ミスリル』だ。ファンタジーではおなじみの、伝説の金属。この『石油王ゲー』世界内にも存在する事は確認済み。他の作品では魔法との相性が良い事が多いし、魔力伝導率が高い可能性は大いにある。
ちなみに、指を直接ポーションに入れて魔力を注入しようとすると、ポーションの有効成分が肌と反応を起こしてしまい、魔力と共に瞬く間に消費されてしまった。まあ、ポーションを使う時と同じことが起きるわけで、当然と言えば当然か。
あとは、量産性も問題だな。自分の魔力を注いでる以上、魔力が尽きてしまえば、それ以上の上級ポーションは作れなくなってしまう。効率をいくら上げていったところで限界はあるし、自分の魔力量が少なければ、作る事の出来る量は限られてしまう。
とは言っても、すぐに魔力量を増やせる気はしないんだよなあ。自分の魔力を注ぐ以外の作製方法か、魔力回復薬なんかがあれば良いんだろうけど……そう言えば、魔力回復薬ってこのゲームで見た事ないな。
「あっ、リュンネちゃん達からメッセージ来てますよ。『認定試験受かりました』……って!」
おお、良かったじゃん。うんうん、向こうも順調みたいだ。
こういう時は――まずはお祝いだな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます