第2話 あなたの本当に必要な求める物を知る方法
「やぁ!久しぶりだね!」
「僕を忘れていたのかい?」
「君が僕を必要とした時から、かれこれもう2ヶ月も経とうとしている。」
【人生が変わった魔法の記述書】を開いた途端。白紙のページに、止めどなく文字が走りだした。
浮き上がる文字の早さに、少し心が痛んだ。
私は、この本を開いて読んでから、随分時間が空いていたらしい。
「ごめんね。。。」
魔法の記述書は、何故か不思議と文字がにじんだ。そして、文字が走るのを止め、一瞬普通の動かぬ本となった。
私は、この本に文字が浮き上がり、動き出す姿は、何かの勘違いだったのかと、ぽかんと本を眺めていた。
動かぬ本を5分程眺めていたら、本の紙に文字がゆっくりと浮かび上がった。
さ
み
し
か
っ
た
ひ
つ
よ
う
と
さ
れ
て
い
な
い
ん
じ
ゃ
な
い
か
と
お
も
っ
て
文字は一文字ずつゆっくり現れ、
私が認識したかどうかの早さで、こぼれおちる様に現れた言葉は一瞬にして消えた。
思わずまた私は、謝りの言葉を口にした。
「ごめんね。。。」
「本にも。。。」
「あなたにも感情があったなんて。。。」
「思いもしなかった。」
また魔法の記述書の紙はうっすらと湿り、文字はにじんだ。
感情を表す本に出くわしたのは、これが初めてだった。
少しの間が空いた後、本は以前の雰囲気を取り戻していた。
今までの、いや、魔法記述書以外の本のあるべき姿を思い出し、そして今、目の前にある魔法記述書の姿を思い出しては、何とも言えぬ思いを抱いていた。
思わずぽつりと、
「君にも魂は宿っているんだね。。。」
呟いてしまった。
そして、不覚にも本を撫でていた。
かわいい女の子をあやすかのように。
本に文字が浮かび始めた。
「君が何故、僕を必要としなかったのか?」
「僕には分かるよ。」
「君には分かる?」
私には分からなかった。
「君は僕を必要としなかった間、他に答えを求めていなかった?」
「例えば、インターネット上の情報。」
「例えば、テレビ」
「例えば、動画、講演会、人の話、ラジオ」
「ありとあらゆる外に答えがあると思って貪りつくしていなかったかい?」
「中毒者の様に、、。」
「分からないと言いながら、インターネットで検索し続けて」
「ウゥォォエェっつって、気持悪くなって疼く程に。」
「君の幸せの答えは、君の中にあるのに!!」
本はまた、少し湿ってはにじんだ。
そして、文字はまた、浮かび上がった。
「僕を必要としてくれない。」
「僕は君の答えを引き出せるのに。。。」
今日の魔法の記述書は、なんだか湿っぽい。
浮かび上がる文字を見ていれば、男の様だが湿っぽい。
前回の強気な女は何処行ったのか?
不思議なりながら、本を見つめていると、
彼は、本来の仕事をし始めた。
「僕は本だ。情報を与える本である。」
「僕は僕を今から否定する。」
「君は、君自身の声を聞いた方がいい。」
「今からでいい。」
「たった一日だけ。今日だけ。これから。」
「明日、僕と再会するまでの間だけ。。。」
「TV、インターネット、新聞、雑誌、ラジオ、本。」
「情報の種となるものを全て、遮断してくれ。」
「そして、僕と話をしよう。」
「外から与えられる全ての情報を、出来るだけ阻害して、そして僕と話をしよう。」
「今日の僕からの課題だ。」
「つづきは、また次回。」
「僕と会うまでは、情報は摂取するな!」
本はずらずらと一文字ずつ後退しながら消えていく。
言葉は男なのに、、、。
動きは、大胆、豪快では、ないな。。。
消えていく文字を見つめながら、浮かび上がっていた文字を推し量っていた。
どんな相手なのかと。。。
情報を遮断するように言われ、本を読むなと言われ。
返却日を越えていた、慌てて読んでいる本を思い出した。
中断せざるを得ない指示に頭を掻いた。
「明日、出来るだけ早い時間に魔法の記述書を開こう。」
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