天空と花言葉

長い階段を僕達は登り続けた。

水色とオレンジ色が混ざり合う空は雲がピンク色で階段の周りにはガラスの薔薇が咲いている。

幻想的な世界だ。

「いつまで続くんだよ…。」

闇が汗を拭きながら青藍に尋ねた。

「まだ大分あるぞー。若いんだから頑張れー。」

青藍は闇を軽く遇らう。

「ッチ。」

闇が舌打ちをする。

「この階段を登る事にもちゃんと意味があるんだよ。」

青藍が真っ直ぐ前を見て呟いた。

「意味?」

僕は青藍に尋ねた。

「登れば分かるさ。」

僕は口を閉じて階段を登り始めた。

頭の中に今まで過ごして来た記憶が流れ込んできた。

幼稚園の頃に初めて星に会った日や一緒にサッカークラブに入り沢山試合をした事。

喧嘩をした日や夜更かしして話し合った日。

星と過ごして来た沢山の思い出が流れた。

こうやって普通の生活を送れるって事はきっと幸せな事なんだ。

当たり前だと思っている事もいつか無くなってしまうんだ。

いつ大切な人が居なくなるか分からない。

人は大切なモノを失って初めて気付くんだ。

自分の事ばかりじゃなくて相手を思いやる心が大切なんだ。

ガイの思いとお姫様の思いは同じなはずなのに交わらなかった。

それは言葉を交わしていなかったから。

自分の気持ちを押し付けて相手の気持ちを考えていなかったから。

ガイとお姫様は僕達に大切な事を教えてくれたんだと思う。

悲哀の物語の結末。

それはきっと思いやる心だ。

「着いたぞ。」

青藍は僕達の方を振り返った。

青藍を見上げるとそこにはガラスで出来た大きな扉があった。

「真珠、翡翠。扉を開けてくれ。」

2人の男の子はガラスの扉を開けた。

「「ようこそ天空の王室へ。」」

キィィィ…

扉の先は辺り一面がガラス張りの空間になっていた。

床や壁から空が透けていて、ガラスで出来た王座にガラスの薔薇が一面に咲き誇っていた。

「綺麗…。」

空蛾がうっとりしていた。

青藍はガラスの王座に向かって行った。

その後を真珠と翡翠と白玉が付いて行った。

青藍が王座に腰掛け、王座の周りに白玉達が集まった。

「4人共前へ。」

青藍に言われ僕達は一歩前に出た。

「俺の前に跪け。」

僕達はそう言われ青藍の前に行き跪いた。

それを見た翡翠と真珠が口を開いた。

「「哀れな欠片を集めし人間よ。薔薇を王に捧げよ。」」

薔薇?

もしかしてこのガラスの薔薇の事か?

「ガラスの薔薇を俺に渡せば良い。」

「分かった。」

百合はそう言ってポケットからガラスの薔薇を取り出した。

すると無色だった薔薇が黄色に色付き始めた。

「!?色が…。」

「それは欠片になった者の魂の色だ。」

「魂?」

百合が青藍に尋ねた。

「バラバラにされた魂は色が無い。何故なら感情が失われてしまったから。欠片が色を取り戻す方法は欠片にされた者の大切な人が欠片を集める事。」

「だから白玉は俺達の事を呼んだのか?」

闇が白玉に問いかけた。

「大切な人の為に自分を犠牲に出来るか?普通なら迷う事だろう。だけど百合達は迷わずにこの世界に飛び込んで来た。それは意志の強い物だけが武器を得て欠片を集める事、そして色を取り戻す事が出来る。」

白玉は闇の質問に答えた。

青藍は百合の黄薔薇を受け取った。

「花言葉は友情。そして1本の意味は貴方だけ。裕二らしいじゃないか?」

「そうだな…アイツらしいよ。」

百合は切なそうに黄薔薇を見つめた。

闇の手に持っていたガラスの薔薇は鮮やかなピンク色になっていた。

青藍は闇の薔薇を手に取った。

「花言葉は感情。妹はお前に感謝していたんだな。薔薇の色を見れば分かる。こんなに鮮やかに色付いてるんだからな。」

「俺は感謝される事なんてしてないよ。」

青藍は1人ずつに話し掛けていた。

僕のガラスの薔薇はオレンジ色になっていた。

隣に居る空蛾をチラッと見つめた。

真っ赤な薔薇になっていた。

「空蛾のは赤薔薇か。花言葉はあなたを愛しています。お前達の愛は真実の愛なんだろうな。ガイにもっと相手の事を考える事を教えていれば良かったな。」

青藍の顔が曇った。

「青藍。ガイは夜空の言葉で気付いたのよ。人は失ってからじゃないと気付かない事もあるわ。あたしだってそうだから。」

「そうだな…。雫とガイには幸せになって欲しいよ。」

そう言って青藍は僕の前に立った。

「最後は夜空だな。」

白玉と目が合った。

やっと星を助ける事が出来るんだ。

白玉と僕の2人の願い。

「オレンジ色か…花言葉は信頼。アイツはお前だけしか心を開いていないんだな。」

「星の心の傷は僕が一緒に背負って行く。あっちの世界に戻ってね。」

「フッ。」

青藍は4本の薔薇を持ち王座に戻った。

「ではお前達の願いを。」

「「「「大切な人を生き返らせて欲しい。」」」」

僕達は青藍の問いに声を揃えて答えた。

「その願い聞き届けた。」

青藍はそう言って杖を床に軽く叩き付けた。

僕達4人の後ろに大きな白い扉が現れた。

その扉がゆっくりと開いた。

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